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第21話、体のいい理由で誤魔化されて、この世界へ落とされた理由を知る




「失礼するわっ! テリア姉! ここにあたしの新しい弟子が……って、いたわね。しかももう戻ってるじゃないの。おかわりよっ、さぁさぁ、これを飲みなさいっ!」

「ひ、ひいっ。いいですっ。弟子じゃなくていいですって」

「むむっ」



どうやら、先程の変わりようは。

女の子大好きなサマルェの魔法薬マジックウェポンによるものらしい。


つまり、『S』がここに来たのは偶然だったのだろう。

しかし、テリアが罪を償うべき少女の一人になっていたことが偶然ではないと気づいたのはテリアだけで。

ソトミが言った通り、キショウと関わることが卒業の試練にして試験であることに、疑いようもなく確信を持っていて。




「……」


でも、それでも。

サマルェが来たことで、今度はキショウが、ソトミの背中に隠れる形となって。



「弟子は大事にたいせつに、だよ。キショウくんはサマルェひとりのものじゃない。みんなのものなんだから」

「……うぬぅ。ソトミ姉がそう言うなら我慢するけどさ。あたしが担当の時は女の子になってもらうからね」

「いいですっ。そんなっ、ご勘弁をっ!」



キショウに頼られ、ゴキゲンなソトミと。

頬を膨らませつつも、長姉の言葉には素直に従うサマルェと。

ぷるぷる震えて縮こまってかわいい? キショウのそんなやりとりに。

色々とうやむやの後回しになったことに安堵しているテリアが確かにそこにいて。




「よし、サマルェもテリアもお師匠になるのオッケーってことでいいのよね。早速予定表に反映させなくちゃ。サマンサのとこに戻るわよ、キショウくん。とりあえず師匠となるメンツとの顔合わせは一通りすんだてことでね」



いいも悪いも言えず、テリアも師匠となってキショウに悪『役』を抜け出し英雄になるためのノウハウを教えることとなってしまったわけだが。

優柔不断な自分を自身でよく分かっているテリアは、取り敢えずこの場は反論はしないのであった。


今度こそは、キショウの勘違いを正せればいいなと。

テリア自身でもあてにならぬ願望を抱えながら……。



SIDEOUT





              ※      ※      ※





SIDE:ソトミ



サマルェの暴走で、一時はどうなるコトかと思ったけれど。

それがなければサマルェ自身もテリアも、結局のところキショウくんを弟子にしてもいい(半ば強引に持ってったわけだけど)って展開にはならなかったと思うから、まぁ結果オーライってところなのかな。



その後、わたしを含めて7人いるキショウくんつきの師匠たちを、マンツーマンで週に一人ずつあてていくことになったわけだけど。


地球式に分かりやすく言えば。

月曜日担当がフォルトナ、火曜日がカイ、水曜日がおやすみ、木曜日がサマンサで、金曜日がクルベ、土曜日がサマルェで。

本来ならば日曜日は、テリアにお願いするつもりではあったのだけど。

テリア自身がまだその覚悟を持てないということで、とりあえずのところ代理としてわたしが日曜日を担当することとなった。



決め方は、なんとなくの流れだったけれど。

カイがお休みの前を指定したことと、修行が始まる明日がなんと偶然にも? 日曜日で、キショウくんの儚い希望が反映された形だ。


週休一日の修行三昧だなんてオニだネなんて続くカイのぼやきがぐさっときたけれど。

いいんだよ、わたしの時はわたし的ルールで休みにしちゃえばいいんだから。



そんなわたしから教えること。

ないこともないんだけどさ。


いきなりだとちょっとレベル高すぎるし、そもそもわたしは『役』にあぐらをかいておイタをする子をお仕置きするのがメインだからさ。


未だにぼろを出さないというか、良い子なキショウくん、今のところその必要なさそうなんだよね。

だから明日は引き続きお休みというか、この世界を案内することにしたのです。



でも、よくよく考えてみれば自分で言うのもなんだけど、どうして6人で教えようってなったんだろね。

それぞれイロイロ問題があって、同世代はいるけど後代を育成したことがない人全員って言っちゃえばそれまでだけどさ。

やっぱり何か教えがいがありそうというか、見込みみたいなものが垣間見えたからなのかもしれないわね。



そんな思いつきを後押しするってわけでもないんだろうけれど。

やっと来ました、主……創造主さまからの返事。



『役』来歴記されしの書……【デューティ・メモリアル】にも載っていない彼の出自は果たしていかに。

わたしは、久しぶりにわくわくどきどきしながら、自室にこもりがてら新しく文字の生まれた……主さまとの交換日記、そのページを開く。




「ええと……なになに? 勇者?」


これまた懐かしいというか、なんというか。

正確には、その資格ありの候補だったらしい。



この、悪役更生世界【リヴァイ・ヴァース】に来て、『役』を乗り越え洗いさらして様々な異世界を救う英雄……我らが主さまの使徒ステューデンツ達とは違い、生まれながらにしての勇者、英雄。


悪『役』だなんてとんでもない。

むしろそれらをやっつける側らしい。



いわば、わたしたちからすれば商売敵ね。

……だけどキショウくんは、勇者にはなれなかったみたい。


理由は、まぁプライベートなことなんでしょう。

誤魔化してあってよく分からなかったけど、英雄や勇者が悪『役』と表裏一体なのは確からしい。



ひょんなことから裏返る可能性があるからこそ。

一足先にこちらへ導いた、とのことで……。



    (第22話につづく)









次回は、8月16日更新予定です。


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