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HEAVEN AND HELL  作者: despair
三日目、石精の祠
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三日目、石精の祠。精霊の加護?


「テンゴクくんのけち!リプシー・マウレイと契約してるんだから、ちゃんと面倒見ないと酷いよー?」

 契約ってペットを飼うみたいな感じだったの!?

「むーっ、ぼくはゴブリンのエヌピーと契約したつもりなんだけどな」

 これは詐欺だと言えなくもないよね。

「結果を見ようよテンゴクくん。世の中って思い通りにいかないものだよ?この現実がきっと良い未来への第一歩に違いないって信じて邁進しよう!」

 だめだこの妖精!

 自分の都合しか考えてない!

 でも、契約しちゃったのは間違いないんだし…。

 って、いやいや!

「そもそも、契約したから面倒見なきゃいけないわけじゃないよね!」

 これから責任もって面倒見てあげるって契約を結ぶ術なんてないと思うよ!

「ちぇーっ、ばれちゃったかー!契約されちゃったリプシー・マウレイはテンゴクくんの命令には逆らえないんだよ!そうだよね!逆らえないんだからリプシー・マウレイがテンゴクくんに命令されたんですって碧様に報告したらきっと信じて貰えるさ!いよっ!今日から君も共犯者っ!いっそ主犯になっちゃいなー!」

 あっ、開き直った!

 もう!

 この勢いに押され気味だから、ちょっと一度落ち着こう。

 よし、勢いよく展開していくリプシー・マウレイの理屈に頭が追い付いてないのをどうにかしないとね。

「おっ、急に黙っちゃうテンゴクくん! 罪を認めて悔い改めているのかい?」

 罪はおかしてない!っとか反応してたらペースを持っていかれちゃう。

 まずは…。

「リプシー・マウレイ、良いと言うまで黙ってて!」

「イエス!マスター!」

 

 …………

 

 あっ、本当に黙った。

 命令には逆らえないっていうのは本当みたいだ。

 理屈は自分勝手だけど、口は軽そうだね。

 あっ、どっちも良いところとは言えなかった…。

 でも、何だか憎めないタイプだよね。

「えっと、現状に頭が追い付けてないんだけど…。シュラちゃんは分かる?」

「へ?」

 シュラちゃんは唖然呆然のポカーン状態だった。

「えっと、石精の祠のダンジョンマスター、石精リプシー・マウレイがゴブリンのエヌピーに変身してて、テンゴクさんと契約したら本性を現した…」

 うんうん。

 いきなり出てきたからびっくり。

「リプシー・マウレイはワドウキザシへの恨みをテンゴクさんで晴らそうとダンジョンを作り替えた。それがあのゴブリン軍団で、ダンジョンのバランスがおかしくなってしまったので碧様に怒られてしまう。それが嫌でテンゴクさんのせいにしようとしてる…。はい、最低ですね」

 うーん。

 ぼくは全く悪くないよね。

「でも、碧様に真実を明らかに出来ないと、リプシー・マウレイと契約したテンゴクさんが、リプシー・マウレイに命令したっていう嘘の罪で罰を受けるかもしれません…」

 うーん…。

 碧さん相手に嘘をつくなんて、ぼくには自殺行為だと思えるんだけどなぁ。

「碧さんって、感情を見て相手の嘘とか見破れるよね? どうやって騙すつもりなのかな?」

 ぼくはリプシー・マウレイに聞いてみた。

 けど、黙っててって言ってるから答えられないみたいだね。

「あ、質問には答えて良いよ」

 ぷはあっと息を吐くようなしぐさをするリプシー・マウレイ。

「ちょーっと待ってよテンゴクくん! つまりリプシー・マウレイの完璧な作戦も碧様には通じないってわけかい?」

 ぼくはうなずく。

「完璧じゃないから通じないよ」

 リプシー・マウレイの目がびよんっと飛び出した。

 あっ、目が綺麗な宝石で出来てるんだね。

「なんだってぇぇぇぇ!!」

 驚くと目玉が飛び出すみたい。

 面白い驚きかただね。

「こちも意見をよろしいですか?」

 ジゴクちゃんに考えが有るみたいだね。

「もちろん何でも言ってよね」

 基本的に、ジゴクちゃんの意見が一番信頼できる気がするよ。

「では、リプシー・マウレイ様の要求を簡単にまとめますと『碧様に怒られるのが怖いので助けて欲しい』ということで良いのでしょうか?」

 ここまでの長々としたやり取りを、ジゴクちゃんが簡単にまとめてくれた。

 リプシー・マウレイは飛び出した目玉を戻す。

 器用だね。

「そそそそっ! そうだよ! 碧様に怒られるとかもう怖すぎて、今日からリプシー・マウレイは恐怖に怯えて眠れない夜を過ごさざるをえないんだよ!」

 そんなに怖いんだ…。

「まっ、リプシー・マウレイは精霊だから眠らないんだけどね!」

 なんだそりゃ…。

 リプシー・マウレイは言葉の一つ一つが軽すぎるよ。

 口が軽いから当然かな…?

 あっ、妖精じゃなくて精霊なんだね。

「はて? しからば、いつもと同じ夜を過ごされるだけであり、何の問題もないということで宜しいので御座いますか?」

 おー、確かに問題ないねー。

 言葉のあやって怖い。

「ぐっはー! 恐怖に追われても夢に逃げることが出来ないリプシー・マウレイが哀れだとは思わないのかな!?」

 うーん、ジゴクちゃんの裁きに容赦って言葉は期待しない方が良いと思う。

「思いませぬ。全て、自業自得で御座いましょう。救い難く有り、哀れむ余地も御座いません」

「うぎゃー! ずばりをずばずば言われちゃったー!」

 うんうん。

 ジゴクちゃんって、最初は公然的な意見を言うんだよね。

 そんなジゴクちゃんが優しくなるのはここからだよ!

れど、テンゴクに召喚され、使役される存在になる契約を結んだ以上、リプシー・マウレイ様の存在に利があるならば、それに釣り合う程度の支援をテンゴクは許可してくれるやも知れません」

 うーん、そんなに優しくなかったかも…。

 最終的な判断はぼくに任せるってことだね。

「己が利を示せ…。ジゴク様はそう言われるのですね?」

 うわっ!

 リプシー・マウレイがジゴクちゃんの喋り方に引っ張られたのか、キャラが変わっちゃったよ!

「左様に御座います」

 時代劇みたい!

 大きなリボンのついたワンピースを着た女の子と、クリオネ風の見た目の精霊の会話って感じじゃないよ!

「リプシー・マウレイは石の精霊でございます。石精の加護を与えることは容易く、それ以外には何も出来ませぬ。また、飛べる者をいつでも召喚できることの利便性はあるに違いなく、ちょっとあれ取ってと言われても逆らえぬ程度に従順でございます」

 それ以外には何も出来ませぬってアピールされてもね。

「んっと、石精の加護って何なの?」

 精霊の加護って言うと何だか凄そうだよ。

「んっとね。石精の加護を受けてるとね、転送先が石の中だった場合は事前にキャンセルされるんだよ。ちょー助かっちゃうよね?」

 それは助かると思うけど、そんな場合があるのかどうか…。

 シュラちゃんも「うーん。そもそも転送トラップで即死するって話を聞いたことないですよ?」って言ってる。

「あっ、若いから知らないんだねー! 昔はランダムに転送されて石の中で閉じ込められるってトラップがあったんだよ! 今はダンジョンの規約で転送からの即全滅っていうコンボが禁止されちゃったけど、誰も行ったことの無いような天然物のダンジョンに残ってる転送トラップがもし有れば、ひょっとしたらってことも有り得るんだよ!」

 つまり、万が一にしか有り得ないんだね。

 どうしよう。

 無いよりはましだけど、もっと当たり前にある危機に対処できる加護が欲しいね。

「うーん、まぁいいや。碧さんとこ行く時に、ぼくも一緒に行ってあげるくらいならしても良いよ」

 どうせ、ぼくも碧さんの所に今度行くつもりだし、それだけなら何の苦労もないよね。

「やったぜー!テンゴクくんが付いてれば鬼に金棒!リプシー・マウレイに保護者付き添いだよ!」

 うーん。

 よく分からないけど、喜んでるみたいだし良いかな。

「それじゃあ、石精の加護をかけちゃうよー!」

 リプシー・マウレイが手をふりふりすると、ぼく達の手首の辺りがぽわっと光り、宝石の付いたブレスレットが現れた。

「テンゴクくんはラピスラズリとアクアオーラ。ジゴク様がロードクロサイトとローズオーラ。ゴスロリちゃんがアクロライトかぁ。おしゃれレベルがアップだね!さっすがリプシー・マウレイ!」

 あれ、これ普通に宝石なの?

 小学生でも大丈夫なやつ?

「こちらの宝石の方が、加護よりも価値があるので御座いませんか?」

 あっ、言っちゃた…。

「あっはっはー!石の精霊にとって宝石なんて、そこらへんに転がってる雑い石よりも構造がシンプルだから造りやすいんだよ!」

 これ、お金に目がくらむ大人には内緒にしないといけないやつだ!

「って、私だけ呼び方がおかしくないですか!? 私のヤマブキネームはシュラちゃんですよ!」

 シュラちゃん…。

 そこは本名を言った方が…。

「おっ!ヤマブキネームってあのヤマブキの!? ちょー流行ってるよね!? んじゃあリプシー・マウレイもシュラちゃんって呼ぶよ! リプシー・マウレイのこともマウプーって読んで良いよー!」

 あれ?

「それってヤマブキネーム?」

「もっちろんだよー。全精霊のトラウマ、ワドウキザシがダンジョンを襲った激震の日、ヤマブキが居なかったらどうなってたことか…」

 うっ、なんだろ。

 父さんは一体何をしたんだろ…。

 でも、ヤマブキさんって精霊にも人気なのかな。

 異世界イツ・ルヒでの人望が半端ないよね。

 父さんはとことん嫌われてるし、山吹さんはとにかく人気者。

 なんていうか、飴と鞭みたいなバランスの取り方を父さんが仕組んでる気がするね。

 山吹さんっていい人だけど、少くとも目立つのは好まないはずだし…。

「ヤマブキ様は凄いですねー!精霊にも好かれてるんですね!」

「ふっふーん!好かれてるんだよー!」

 何故かリプシー・マウレイ、いやマウプーが自慢気だよ!

「これを身に付けてると加護があるってことなの?」

「そうだよ!ってっ違うよ!なんじゃこりゃー!」

 えっ?

「やっばぃ!考えてみたら今までの加護で宝石なんて出てこなかったよ!久しぶりだから忘れてた!」

 そこを忘れないでほしいね。

「えっと、どういうことなの?」

「んっとねー、リプシー・マウレイはテンゴクくんと契約したから精霊じゃなくなったみたいだよ!」

 あれ、精霊ってそんな簡単にやめられちゃうの!?

「ふははっ!精霊リプシー・マウレイはもう居ない!私は天魔マウプー!よろしくね、だぜ!」

 残念だけど、中身は一緒みたい!

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