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HEAVEN AND HELL  作者: despair
三日目、異世界の街
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3日目、宿屋のお部屋でヤマブキトーク


 ぼく達は、シュラちゃんに宿の部屋へと案内してもらった。

 外から見るよりも部屋の中は広く感じる。

 ベッドが二つと、壁際にテーブルが一つ、他には何もないからかな。

 もちろん、テレビもなかった。

 まぁ、異世界だしね。

 うん、しょうがないよ。

 「入浴場が一階にあります。トイレは各階の通路の突き当たりに一ヶ所ずつ完備。地球人の方には一階のラウンジにて、軽い食事も提供させて頂いておりますよ」

 一通り、生活に必要なものはあるみたいだけど…

 「エルピテ様には別室を用意しております。案内いたしましょうか?」

 あっ、エルピーもここに泊まるんだね。

 「ふむ、我は後で良い。デウリリュが帰って来てからにしよう。相談したいこともあるのでな」

 当たり前だけど、エルピーって昔はこっちの世界の住人だったんだよね。

 「エルピーって、自分の家とかはないんですか?」

 「ふむ、我は神に仕える者であるからな。テンゴク殿とジゴク様の居る場所が我の住まいであるのだ」

 うん?

 神に仕えるからぼく達について来るって、どういうことだろね。

 もう、疑問が浮かんでくることにも頭が慣れてきて、ちょっと感覚が麻痺してるよね。

 ジゴクちゃんのこととかなら、まだしっかりしなきゃって思えるんだけどね。

 エルピーみたいな大人が相手だと、ちょっと振り回されるのが嫌で疑問に突っ込みたくなくなってきたよ 。

 「とりあえず、この宿にエルピーも泊まるんですね?」

 「勿論だ。二人の冒険のサポートをしようと思っている」

 頼もしいような、頼りないような、今日会ったばかりでエルピーにずいぶんと…何て言うか、大型犬になつかれた感じがする。

 エルピーってそう言えば何が出来るんだろう?

 そして、そろそろ異世界人の皆の名前を覚えきれなくなってきたね。

 冒険者ギルドのメルシエさん

 怪しい神父の格好のエルピテさん

 宿屋の娘のシュララバちゃん

 ファクトのウパシャニッドさん

 セクトのプシュケーさん

 うん。

 今日一日で出会った人が、みんな馴染みのない感じの名前だよ。

 名前だけ新登場のデウリリュさんがこの宿屋の主ってとこかな。

 名前だけじゃあ性別も分からないって、ちょっと困るかも。

 今日はまだまだ他にも知り合いが増えそうだよね。

 ジゴクちゃんも異世界に来てからまた少し大人しくなった感じなのは、やっぱり慣れてない場所で初めて会う人達に囲まれてるからかな。

 「あっ、これからゴブリン退治に行くのですよね?」

 シュラちゃんが聞いてきた。

 ぼくは名符みょうぶの依頼確認画面を出す。

 「んっと、石精のほこら でゴブリン10体倒すと100ルヒって依頼を受けてるよ」

 改めて見ると、現実で敵と戦うってちょっと怖いね。

 今までは、話せば分かるような良い人達しか出てこなかったけど、

 あっ、父さんは除いてだよ。

 うん、これはきっと巡り合わせが良かっただけだよね。

 「おおっ!地球人の名符ってやっぱり面白いですね。 こっちじゃみんなこれですよ」

 そう言って、シュラちゃんも名符を出した。

 んん…?

 綺麗な透明のクリスタルだね。

 サッカーボール大くらいの大きさで、中に文字が浮かぶみたい。

 こっちの世界の人はみんな同じ名符でつまらないって、メルシエさんが言ってたっけ。

 でも、宝石みたいで綺麗で良いかも。

 「こちの名符に比べて、皆の名符は綺羅びやかで透明感があり、なんとも羨ましく御座います」

 ジゴクちゃんも名符を出した。

 木の板がぶんぶん飛び回る。

 ぼくの名符も、確かにちょっぴり半透明で、向こう側がうっすらと見える。

 ぼくは、ジゴクちゃんの名符が古風で格好良い気がしてきたけど、本人にしてみれば他の人と違うってことに劣等感を感じたり、コンプレックスになったりするのかもしれないね。

 「こんなに動き回る名符は初めて見ました! 凄いです! 地球人って面白い!」

 ジゴクちゃんの名符に感激するシュラちゃん。

 「なんと! シュララバ様に喜ばれるなら、こちの名符もそう捨てたものではないのでしょう。嬉しく御座います!」

 うんうん。

 個性ってものがあれば優劣がつくことが当たり前なんだよね。

 優越感とか劣等感って、自分の中の勝手な思いの一つだから、他の人はそこまで気にしてないことが多いと思う。

 とにかく、名符がダサいから出したくないとか、そんな風にジゴクちゃんがならなくて良かった。

 シュラちゃん、あまりにも良い子だから、実は腹黒かったりするのかもしれないとかちょっと思ってたんだけど…

 「もう、ジゴクさん。様付けなんてやめてくださいよ! シュラちゃんで良いですよ。 何せこの呼び方、ヤマブキ様が言い出されたんですよ! 地球じゃ皆さん知らないかも知れませんが、ヤマブキ様がつける愛称ってヤマブキネームって呼ばれてて、こっちの世界じゃ一種の称号ですよ! 私もとうとうヤマブキネームを頂戴できたので、今日からはヤマブキネームの話題になっても歯痒い思いをせずにすみます!」

 うん。

 ただの山吹さんのファンだね。

 「ふむ、我のエルピーもヤマブキ殿に頂いたのだが、我もヤマブキネームの持ち主だったわけか」

 エルピー、この話題にのるんだ!

 「やっぱり、エルピテ様、いいえ、エルピーもヤマブキネームでしたか! ヤマブキセンスが漂ってくると思っていたんです!」

 ヤマブキネームにヤマブキセンス…

 この会話を山吹さんが聞いてたら恥ずかしさで発狂するかもしれないね。

 「こちはジゴクと呼ばれるゆえ、お姉様にヤマブキネームは戴けなかったのですね…」

 あぁ、ジゴクちゃんがしゅんと落ち込んじゃった…

 こんなことで落ち込むのは勿体ないよ!

 なんて、シュラちゃんの反応が怖くて言えないけどね。

 「なに言ってるんですか!? テンゴクさんとジゴクさんみたいに名前で呼ばれるのはレジェンドですよ! ヤマブキレジェンド! 殿堂入り! 良いなぁ! いつか私もヤマブキ様に名前で、シュララバって呼ばれたいですよ!はぁ~っ、シュ・ラ・ラ・バ… ふふふふ… そしてヤマブキお姉様と呼べれば… くふふふふ…」

 うーん、妄想トリップお疲れ様です。

 そしてヤマブキネームとヤマブキセンスに、ヤマブキレジェンドが仲間入りだよ。

 ぼくとジゴクちゃんはヤマブキレジェンドだったみたいだよ。

 うん。

 どうしよう。

 えっと、今ってゴブリン退治に行くんだっけ…

 そうだよ!

 「そろそろ、ゴブリン退治に行きませんか?」

 あれ、この展開って今日はもう二度目だよ。

 あれ…

 もしかして…

 えっと、今ここに居るのは、

 ジゴクちゃん

 エルピー

 シュラちゃん

 そして、ぼくの四人…

 もしかして、山吹さんが居ない今、ぼくがこの場の主導権を握ってしまっているんじゃないかな!?

 エルピーは大人だけど、後ろからついてくるって感じだし…

 エルピーに感じる頼りなさは、前に立ってくれそうな感じがしないから、かな…

 あくまでも、サポートしてくれるだけなのかもしれないね。

 うん、異世界の案内人が居ない今、ぼくがしっかりしないといけないようだよ!


はい。

テンゴクにもそろそろ、自分が主役だという自覚が欲しいものです。

そして、3日目に出てくるキャラクターで、テンゴクの味方になりそうな人達はシュラちゃんが最後です。

この話を書き初めて3ヶ月が立ちますが、そろそろ敵キャラが出せそうです。

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