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HEAVEN AND HELL  作者: despair
三日目、異世界の街
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3日目、手紙は落ちる、アロハはめり込む


 「まずは距離をとるよ!」

 「はい!」

 ぼくたちは、アロハシャツの二人とは反対方向に跳ぶ。

 「あらあら、元気な子ども達ね」

 あの二人、基本はこっちの出方をうかがってくれるみたいっぽいね。

 大人の余裕ってやつかな。

 余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)って感じのセクトさんの手には手紙がある。

 強く握ってるわけではなく、軽く指で挟んでるだけだ。

 あれならいけそうだね。

 本当なら手を繋いでから必殺モードで作戦練りたいけど…

 敵っぽい人を相手に自分達の手札を何でも出しちゃうのは趣味じゃないんだよね。

 アドリブで、行かせてもらうよ。

 「手紙を『天化てんか』」

 さて、ジゴクちゃんはどうするか…

 「お姉様を『地化ちか』」

 ナイスだね。

 ジゴクちゃん、怒ってても芯はクールに冷えているって感じかな。

 セクトさんに盗られた手紙が山吹さんの方に飛んでいく。

 いや、落ちていくって言うべきなのかな。

 天が地に落ちる力で、軽い手紙が山吹さんに向かって落ちていく。

 「あら、どんなトリックかしら?」

 セクトさんが不思議そうに手紙を目で追いかける。

 「一部の空間に力場の変化が見られる。子どもだからと油断はするなよ、セクト」

 ファクトさんに何やら分析されちゃったね。

 うんうん。

 ぼく達の狙いは時間稼ぎだから問題ないかな。

 でも、アロハシャツの狙いは手紙だったのか…

 ちょっと意外だな…

 いやいや、ぼくが狙いを悟られないようにしてるんだし、相手だって同じようにする可能性くらい考えなきゃね。

 相手の言葉を借りるなら、油断はするなよ、テンゴク、だよ 。

 見下すな、見くびるな、思い上がるな、卑下ひげするな、って父さんが言ってたことだけど、戦いの時には良い心がけかもね。

 父さんみたいに双六すごろくで大差がついた時に言われると興醒めだったけど。

 「ふうん、まぁ私達がでしゃばらなきゃいけない案件に、雑魚が関わってるわけもないか。ちょっと面白くなってきたわね」

 「おや、ハプニングを楽しむのはナンセンスなのではなかったかな?」

 「あら、ナンセンスって誉め言葉でしょ?」

 「スマートに行くべきだと言ってたのはどの口だ?」

 「もう、過去のことを持ち出す人って嫌われるわよ?」

 「まったく、つい先ほどの出来事を過去と呼ぶのはやめて欲しいものだよ」

 むむ…

 何だか仲良く話してる間に荷物の確認しとこう。

 「ジゴクちゃん、ポシェットの中身で他に盗られた物はない?」

 「はい、身代金も、その間のぱらぱら漫画も無事でございます。」

 むむ…

 んー、まぁ気にしすぎだったかな…

 「勇ましいお嬢さんと、可愛い坊や、次は何を見せてくれるのかしら?」

 なんだか期待されてるよ。

 あの余裕、手紙を取り返すくらいじゃ奪えなかったみたい。

 でも、時間は稼げたんだよね。

 正直、MP的にもそんな期待されるほど大したことは出来そうにない。

 ぼく、レベル5だしね…

 あとは状況しだいで…

 うん、周囲の通りすがりの野次馬の人達もざわざわしてきた。

 場の空気が良い感じに暖まってきてる。

 これはもう…

 「はぁー、良いのもらっちゃったね」

 やっぱり!

 「いやぁ、私ってけっこう打たれ弱くってさ。ダメージ入ると回復するのに時間かかっちゃうんだよね」

 ぼくとジゴクちゃんの間を通って前に出る、ぼくらの頼れるお姉さん。

 「山吹さん!」

 「お姉様!」

 待ってました!

 我らの山吹さんが、満を持しての戦線復帰だよ。

 山吹さんが、セクトさんとファクトさんと向かい合ったまな、腕を上げてひらひらと手を振る。

 待たせたね。心配かけたかい?もう大丈夫だよ。って、その後ろ姿が言ってる気がした。

 周囲からも「待ってました!」とか「ヤバくね?逃げとく?」って不安と期待の入り混じったざわめきが聞こえてくる。

 山吹さん、振るまいがヒーローみたいだよ!

 「あのさぁ、次は私と、遊んでくんないかなっ!!」

 山吹さんが、駆ける。

 目にも止まらぬ疾風が、アロハシャツをなびかせたと思った瞬間…

 ばちん!!と何かが破裂する音がしてアロハシャツの二人は地面に倒れていた。

 って言うか、ちょっと地面にめり込んでるように見える。

 「うおおおぉ!!」

 って!

 周囲の歓声が凄いよ!

 「ははっ! みんな、危ないからちゃんと離れといてよ?」

 周囲から「はい!」とか「危険は承知さ!」とか、もう「ヤマブキ様ファンクラブ会員として見届ける義務がっ!」って声まで聞こえてくるよ。

 うん、山吹さんがこっちの世界で人気者みたいで良かった。

 「あぁ、痛かったわね。もう、いきなり何するのかしら」

 って、いきなり山吹さんを吹き飛ばしたセクトさんが言う。

 普通に起き上がって来たよ!

 地面にめり込んでいたのに!

 「単純に高速で駆け、背中を叩かれただけのようだな。しかし、彼女は地球人のようだがジョブ魂とやらを使っていないようだ。あの動きは今までのデータにない現象だな」

 ファクトさんは分析が好きみたいだね。

 ちょっと共感しちゃったり…

 でも、山吹さんってジョブ魂使ってないのにあの神速ってやっぱり異常な感じだったんだね!

 山吹さんに超人説が急浮上だよ!

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