2日目、ぼくへの手紙
居間で向かい合って座る僕たちは、それぞれに用意されていた手紙を読んでいる。
ぼくの方の手紙には読んで嬉しい内容はなかった。ちょっと夏休みが嫌になってきた。ぼくへの手紙の内容はこうだ。
一つ、娘には名前がないので二人で考えなさい。
一つ、娘は特別な場所以外で喋ることを禁じられて育ってきた。
一つ、娘は夏休みの間は何があっても家に帰さない。
一つ、私は夏休みの間は何があっても家に帰らない。
一つ、被害者と加害者の関係を忘れて仲良くしなさい。
最後に、困った時は魔女の館を訪ねなさい。
うーん。何も分からない。
名前がないって何?喋ることを禁じられてるって何?家に帰さないって何で?家に帰らないって何で?加害者になった覚えがないよ?魔女の館って何処?
ほら、はてなマークがいっぱいだ。
ひょっとして、ぼくは夏休みの間はこの子と暮らすの?
喋ることを禁じられてる人との接し方なんて学校で習ってないよ。
最初の手紙には、家に帰してあげたければ言うことを聞けって書いてたけど、ぼくは家に帰してあげたいのに誘拐犯の一員ってことなんだろうか?
何もかもに納得できない今この瞬間に、ぼくはとりあえず、
「なんだこれー!」っと叫んでみる。泣かないだけ上出来だと思う。
静かな家の中で、ぼくの叫びはとてもよく響いた。