3日目、世界の秘密その2
「えっと、あの子は異世界でジゴクって名前になって、天職は地術使いでした。最初は無口だったけど、今朝から好奇心旺盛になってきて色々と気になるみたい。あとお蕎麦は麺の方が好きみたいです。それと、ぼくは天術使いです。ジゴクちゃんからは、テンゴクって呼ばれてますよ」
またもや、エルピテさんの目がくわっと見開かれ、ぼくを凝視してくる。
ちょっと怖いよ!
「あぁ、神は此処に宿ったのか…」
う…?
「ソノ、ジゴク様ニ会ワセテクレナイカ?」
って父さんに確認するエルピテさん。
あれ、何だかずいぶんとい落ち着いたみたい…
最初みたいに変な発音の、文章にすると読みにくそうな喋り方に戻ったよ。
だけど嫌な予感しかしない。
「構わんよ。俺の息子に付いていけば良い。ただし、会うだけだ。連れ戻すことは許さない。一度会ったらお前はもう帰って寝てろ」
んー?
「アア、ソウサセテ貰ウトシヨウ」
ぼくが連れてくの?
「父さんはどうするの?」
自分だけ楽しようって言うなら、ぼくだって怒るからね。
「ふん、今日から異世界に行くのだろう? 荷物は俺が届けてやろう」
むむ、それは助かるかな…
ぼく一人で持っていくには、ちょっと重たくなりそうだったし。
でも、ジゴクちゃんを狙ってるのがこの人だったのなら、ぼく達には異世界に泊まる理由がもうないような…
「ソウダナ、コチラノ世界ノ方ガ今ハ危険デアロウ。我ラノ故郷ヲ旅スルト良イ」
あれー?
ジゴクちゃんってば、まだ誰かに狙われてるの!?
「さて、急いだ方が良い」
そう言って、父さんはエルピテさんの服をがしっと掴んで引っ張った。
あっ、神父服の襟の裏から、小さな何かの機械を取ったみたい。
「発信器か。ずいぶんと信用されていないのだな。いっそ、お前も異世界に行った方が良い。許可は出しておこう」
「ナント! ソレハアリガタイ!」
あぁ、父さん被害者友の会の結成が遠退いた感じだよ…
「もうすぐ、奴らが此処に来るだろう。足止めしといてやるからさっさと行くんだな」
エルピテさんが説得されても万事解決ってわけじゃないみたい。
奴らって、でもエルピテさんの関係者なら、さっきのと同じ説明で納得してくれないのかな…?
あっ、そうだ!
これだけは父さんに聞いとかないと!
「最後に一つだけ聞かせて」とぼくは言う。
父さんは「良いだろう」と頷いた。
「ぼくの母さんが異世界に居るって碧さんに聞いたんだけど、本当なの?」
母さんのことは父さんに聞くのが筋だよね。
父さんは、一瞬だけ意外そうな顔をして、その後に「ふっ」って軽く笑って、すぐに怒ったみたいな顔になって「ちっ!」って舌打ちした。
こんなに表情がすぐに変わる父さんは初めてみたかも…
ゴリゴリっと、さっきエルピテさんの服についてた機械を握り壊す父さんは、ちょっと…
焦ってる?
「これが盗聴機でなければ良いのだがな…」
あれ、何か不味いこと言った?
エルピテさんも、またまた目がくわってしてるし、ちょっと怖いよ。
「碧は何と言っていた?」
もう、どっしり構えすぎてるぐらいのいつもの父さんに戻ってた。
「私に勝てたら教えてあげよう、ってさ… でもレベル3000はないと勝負にならないって言ってたし、それに、母さんのことなら父さんから聞いた方が良いかなって思ったんだけど…」
何だろう、ぼくは悪いことをしてしまった気分になってる…
言い訳っぽく理由を並べるとか、本当に分かりやすいな、って自分で思っちゃうくらいだよ。
「ふっふっふ…」
あれ、父さんが笑ってるよ!
父さんが普通に笑うのは、自分の予想以上のことがあったときくらいなんだけど…
碧さんの発言が、父さんの予想を越えるとんでもなさだったってことかな…
「はははははっ! あぁ、実に愉快だな! そう来るとは、流石は碧だ。いや、そうだな、勝てば教えてくれるのなら、勝てば良い。俺に言えるのはそれだけだ」
うへっ、父さんがこんなに愉快そうなのって、絶対にまともな条件じゃないって証拠だよ…
エルピテさんもまだ目がくわっ状態のままだし、相当の何かがあるみたい!




