2日目、無言の来客(2)
沈黙が気まずいってことを思い知ったぼく。
髪はすらりと長い黒、見たことないくらいの色白の肌。整った顔立ち。でも、可愛いだろう顔を台無しにしている無表情。
薄い青色のワンピースを着て、腰には大きなリボンの付いたゆるいベルトを巻いていて、なんていうか女の子らしい格好なのに、雰囲気にはトゲを感じてしまう。
「親と一緒じゃないの?」と聞いた時だけは首を横に振って答えてくれたけど、その以外は沈黙が帰ってきた。
名前も、学校も、年齢も、返事は沈黙だった。
無視されてるわけじゃないようで良かったけど、そもそも、家を訪ねて来て玄関先で無視する人は居ないだろうけど、とにかく、この状況をどうしたら良いのか分からない。
ぼくが困っていると、女の子が急に何かを思い出したような、「あっ」とでも言いたそうな表情になった。
女の子は腰の大きなリボンを、ぼくの方に差し出してきた。よく見るとベルトじゃなくて、それはリボンの形のポシェットみたいだ。
「中に何か入ってるの?」と聞くと、女の子は初めて首を縦に振ってくれた。
女の子はポシェットを開けて、中から封筒を取り出した。それをそのままぼくに渡してくる。
ぼくはそれを受け取る。表書きのない茶色の封筒。中には手紙が1通。
そこに書いてるのは、
どこぞの娘を誘拐した
帰してあげたければ私の要求を聞け
別の手紙に書いてあるので家に入ってから二人で見るように
和堂 兆
このよく分からない状況、父さんの仕業でしたー!
頭を抱えてうずくまりたくなってきた。
誘拐ってごっこじゃないやつ?なんでぼくが要求されてるの?って、このままじゃぼくも誘拐犯になる?
色んな疑問が頭を駆け回っている。
「ええっと、」っと、ぼくは一息ついて、
「家に入る?」っと女の子に言った。
女の子は首を縦に振ってくれた。もちろん、無表情のままだった。
父さん関係の出来事で頭を悩ませるのが嫌になってるぼくは考えるのをやめた。
とりあえず、もう一つの手紙を見るのが先だよね!