3日目、今日も山吹食堂へ
お昼だから、山吹食堂へ行く。
夏休みの間はこれから毎日行くのかと思うとちょっと辛いかも。
そうそう、父さんがジゴクちゃんに渡した身代金は千円札が三枚だけで、後はパラパラ漫画だった。
身代金が漫画だった。
身代漫画だった。
身代金が三千円とパラパラ漫画だったら、本物の誘拐犯は怒るんじゃないかな?
ぼくでも夏休みの間に三千円で生活しろって言われたら怒りたくなってくる。
いや、三千円とトマトと山吹食堂だけじゃあ実際に辛いよ…
でも、この先の準備もどこかにしてあるかもしれないし、怒るのはもう少し待ってみよう。
待つだけだよ。信じたりはしないよ。裏切られるから。
山吹食堂へと行く道すがら、ジゴクちゃんが色んな疑問をぼくに聞いてくる。
「テンゴク、テンゴク、空はどうして明るくなったり、暗くなったりするのでしょう?」
立ち居振舞いに気を使いすぎて遠慮していた昨日までとは違って、今日は普通に話しかけてくれてるジゴクちゃん。
「空にはお日様がいるんだよ。それが空に居るときは明るくなって、隠れちゃうと暗くなるんだよ」って言うと、また別の質問が飛んできたりする。
まるで、初めて外に出る子どもみたいな感じだけど、本当に初めて外に出る子どもみたいなものなんだろうな。
「テンゴク、今日はこちの手足を動かすと痛むのです。これが寿命というものでしょうか?」
うーん。
寿命だったら怖いね。
「筋肉痛かなぁ。体を動かすと筋肉が疲れて、次の日に痛くなったりするんだよ。すぐに治るから大丈夫」
あれ?
ぼくも昨日はいっぱい動いてたのに、それにしては筋肉痛になってない。
もしかして、異世界で動いた分はマナがどうのこうので平気なのかもしれないね。
時々だけど、「テンゴク、碧様に勝つためにも、一度は戦っておくのが良いのではないでしょうか?」っていう具合に、たまに質問じゃなくて提案もしてくれるジゴクちゃん。
うーん。
確かに、勝ち目なくても何か得られる可能性はある。
負けてもまた月に一回は挑めるんだし、試しに勝負するべきかな。
でも、レベル3000まで上げるのにどのくらい時間かかるんだろうね。
「今日も異世界に行けたら戦ってみようかな」
っとまぁ、そんな感じで話しつつ、ぼくたちは山吹食堂へと到着した。
さて、今日はどんなふうに怒鳴られるかな?




