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HEAVEN AND HELL  作者: despair
三日目、正式に誘拐
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3日目、ポジティブな誘拐


 教科書を読んでいるジゴクちゃんを横目に、ぼくは朝ごはんについて考え始める。

 冷蔵庫にはトマトが大量にあるから、トマトには困ってない。

 だけど、トマトだけじゃお腹が膨れる気がしない。

 って、あれ!?

 ジゴクちゃんが普通に教科書を読んでる!

 さっきまで何も分からないと暗い顔をしていたはずなのにね!

 「このような小魚が広大な海に一匹で放り出されるとは…」

 うん、ぼくも黒い魚の話は好きだけどさ。

 「えっと、ジゴクちゃんはお腹減ってない?」

 「なんと、昨日の夜に食事をしたばかりでまた減るのですか!?」

 うん、そう言えばお腹減るのも昨日が初めてだったんだよね。

 「一日三食が基本だよ」

 これ大事。

 そう言えば、ジゴクちゃんがどこに居たのかって話が中途半端だったっけ…

 うーん、考え出すと他にも「そう言えば」がいっぱい出てきそう…

 まずはご飯のことからだよね。

 ジゴクちゃんも「言われてみると、お腹の辺りが少し苦しいような…」って言ってるし、朝ごはんは大事だよね。

 

 とりあえず、トマトを切って二人で食べた。

 うん、冷えたトマトは美味しいんだけど、それだけじゃちょっと物足りない…

 でも、お昼までは我慢するべきかな…

 「お金があったら朝ごはんもちゃんと買えるんだけどね」

 って、ジゴクちゃんに言ってもしょうがないというか、ぼくって一応はジゴクちゃんを誘拐してるってなってるわけだよね。

 もし、ジゴクちゃんからお金を貰ったりしたら、なんか身代金を請求したみたいで、もう後には引けなくなる気がして嫌だよね。

 うん、ここまで考えて気付いたよ。

 気付いちゃったよ!

 ジゴクちゃんも「あ…」って何か思い出したみたいだし、間違いなさそうだ…

 ぼくが嫌だと思うものを用意しない父さんは、ぼくには居ないってこと…

 「えっと、ひょっとして、父さんから身代金とか預かってる?」

 こくこくと頷くジゴクちゃん。

 やっぱりか…

 「いくらでも出す!だから私の無事を保証してくれ!」って言いながらリボン型のポシェットからお金を取りだし、ぼくに渡してくるジゴクちゃん。

 「こう言いながら渡すように申し付けられておりました」

 もう!

 お金は嬉しいんだけど、それで嫌がらせをしてくるって、どうしてこうもひねくれてるんだろうね!

 お金を受けとる瞬間に「これで本当に誘拐が成立するのですね!」ってジゴクちゃんがダメ押ししてくる。

 あれっ?

 ジゴクちゃんが良い笑顔になってるし、これは演技じゃなさそうだよ!?

 いや、そう言えば閉じ込められて過ごしてたとか言ってたし、帰るのは嫌なのかもって感じがずっとしてるんだけど…

 でも、誘拐をそんなに喜ぶのって何かおかしいような…

 「ねぇ、ジゴクちゃんは誘拐ってどういう意味か知ってるの?」

 ぼくにはネガティブなイメージしかない言葉だけど…

 「きざし様から聞いております!」

 父さんの名前が出たら嫌な予感しかしない。

 この会話すら、父さんに仕組まれてる気がしてしょうがない!

 父さんから聞いたらしい誘拐の意味を、ジゴクちゃんは心の底から嬉しそうに言った。

 「特別な絆が二人に芽生え、テンゴクがこちを大切に扱い、何者からも守ってくださると、そう教えて頂きました」

 あれあれあれ!?

 間違ってはない!?

 確かに誘拐犯した側とされた側には特別な絆があるって言えなくもないし、誘拐した相手を守らないと誘拐が成り立たない気もするけど…

 いや、一般的には身代金を貰ったらもう守る理由ないんじゃないかって思うけど、そう考えるような本物の誘拐犯ではぼくは無いし…

 うう、さっきジゴクちゃんに渡した辞書で「誘拐」を調べてみる。

 騙して拐うことって書いていた。

 うん、確かに騙されて拐われてるから、これは誘拐で間違いないかも…

 ジゴクちゃんにも見せるべきだよね…

 ショックを受けるかな…

 でも、こんな辞書にも載ってる内容を隠し続けるなんて出来そうにないもんね

 

 ぼくはジゴクちゃんに、辞書の誘拐の部分を見せて読んであげる。

 「騙して拐う… こちにとって、もっとも最良の手段を取っていただけたこと、テンゴクに巡り会えたこと。こちはなんと幸せ者なのでしょう!」

 あぁ!

 ポジティブな解釈で良かった!

 ショック受けなくて良かった!

 よね!?

 うん!

 何だか、何かが引き返せない所に来ているって感じがする以外は、何も問題ない!

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