2日目、無言の来客(1)
だけど、何して遊ぶか考えてる間にピンポーンと玄関のチャイムがなった。
こんな時に誰だよ。って思ったけど、少なくともチャイムを鳴らすのは父さんではないだろう。それだけでも一安心だ。
そんなことを考えてる間に、もう一度チャイムがなった。ずいぶん急かしてくる人だ。
ぼくの家に来るのは、たいていは怪しい宗教や習い事の勧誘か、近所の人が用事で来るだけで、子どものぼくが出てもあんまり意味ないんだけど。
それでも、父さんが家にいないことが多いせいで、ぼくは対応になれている。
しかし、玄関の扉を開けたとき、そこに立っていたのは、ぼくにとって、ある意味でもっとも苦手なタイプな人間。そう、同い年くらいの見知らぬ女の子。
あまりにも予想外の相手に、ぼくは驚きのあまり固まってしまう。そこで麻袋をかぶせてこないだけ、父さんよりはましな相手だと思いたいけど。
「人間関係は対等な関係であるべきだ」という父さんの言葉が頭をよぎる。だけど、せめて分かりやすい上下関係が今は欲しかった。年上っぽくとか、年下っぽく振る舞えるだけで見知らぬ女子への対応はずいぶん楽だと思う。
だいたい、父さんはその言葉のもとでトラブルばかり起こしてる気がするし、それを参考にするのは少しばかり勇気がいる。
そう、勇気だ。ぼくは勇気を振り絞って目の前の女の子に声をかける。いい加減、玄関先で無言の無表情で見つめあってる方が辛い。
「えっと。こんにちは。何か用事ですか?」
頑張って言えた。
だけど、女の子からは返事がなかった。
つまり、沈黙が訪れた。
そう、ぼく達はまた、無言の無表情で見つめあっている。
どうしたら良いのかさっぱり分からない。
「助けて父さん!」と、生まれて初めてぼくは思った。