2日目、真相を聞く名探偵
「碧さん!」
ぼくは大人達に、主に碧さんに、真相を問い詰めようとして、とっても意気込んでいた。
気分はすっかり名探偵!
なのに碧さんは、さらりと言い放った。
「あぁ、大筋はあっているよ。ちょっとは物事の推察も出来るんだね」
なっ!
あっさり認めたよ!
っていうか碧さん…
「やっぱり考えてることも読めるんじゃないんですか!?」
じゃないと、いつの間にぼくの考えを読んだのか説明がつかないよ。
「そっちの部屋から、お前たちの会話が全て聞こえてきただけなんだがね」
うわっ!
説明されちゃった!
恥ずかしっ!
そう言えば、さっき目覚めた時に碧さんが普通にあっちの部屋にいるぼくに話しかけてきてたよ!
うん、普通に聞こえてたよ!
「さて、もういいだろう。ヤマブキ、出てきなさい」
碧さんがそう言うと、部屋の入り口から山吹さんが入ってきた。
そして、頑なに土下座を続けていた山吹さんが霧のように消えてしまった。
「山吹さんっ!?」
やぁ、って感じで手を振る山吹さん
あれ、土下座の山吹さんは偽物だった?
「相変わらず、土下座してる自分を見るのは気味が悪いね」
そりゃあ、もう一人の自分が居るだけで気味悪そうなのに、それが土下座してるんじゃあね…
「ふん、喋れる幻影くらいなら作れるんだよ。簡単に、とはいかないがね」
それは見破れなかった!
うーん…
テレビに出てくる探偵みたいに、ぼくの推理を披露しようと思ってたのに!
なんだかさっきから種明かしをされてばかりだよ!
「ダンジョンのボスを倒したあと、私と戦うってとこに裏があってね」
ぼくも強敵編ってとこから、何かトラブルを起こすためにやってるんじゃないかって、さっき考えたんだよ。
そこをビシッと問い詰めるつもりだったのに…
「私と戦ったら、何故かいつも絶対に無事ではすまなくてさ」
ですよね…
手加減されてたって恐怖しか感じませんでしたよ。
「こっちの世界で問題が起きた時に、どんな対応するのか見せて欲しかったからね」
チュートリアルで人を試してたとか、性格悪いなぁ。
きっと碧さんの案だよね。
効率的ってやつなんだろうけどさ…
「ふんっ、折角だ。気付いたんだから教えておいてあげようかな」
山吹さんのネタばらしに加えて、黒幕が、もとい碧さんが説明してくれるようだ。
「この世界には、法律は無いけど、弱者と強者ははっきりと分かれる、暴力だって簡単にふるえるんだ」
そう言われると怖い。
碧さんの性格の悪さが、実は正義感からきてるような気がしてきたよ。
「だからこそ、人間性は試しておかないとね」
確かに、そうしておいた方が良い気がする。
「他人のせいだと言い張る者、相手の弱味に付け込む者、暴力で解決しようとする者、嘘ばかり並べ立てる者、そういうのは此所で『御断り』させていただくんだよ」
うーん、もっともかもしれないね。
凶悪なのに山吹さんみたいに強い人が居たら、もう怖くって外を出歩けない。
「まぁ、そうだね。率直に言えば、私の嫌いなタイプの人間は、記憶を書き換えて永久追放するってことさ」
って!
正義感って自分勝手だね!
いや、感情を読んだ上で人柄を判断できるんだし、碧さんが判断するのが適役だとは思うけどさ…
「ふん、まったく残念だが、お前達も合格だよ。この世界に来る権利を与えよう」
ふふん。
ぼくも嫌われている気がしてたけど、そうでもなかったみたい。
でもね…
「ぼくたち、なんでこの世界に来ないといけないんですか?」
ジョブ魂があって、魔法とかあって、レベル上がったら強くなって、ってだけなら、危険な場所に来る意味がない。
目標と報酬が欲しいよね!
あと、すっかりと、大人達を問い詰める意味がなくなったぼく、ちょっと拍子抜け!




