2日目、嵐の中の以心伝心
駆け回り、飛び回る山吹さん相手に何が出来る?
「これ、けっこう楽しいね」
なんて声が聞こえてきた。
楽しんでる間に考えてみよう。
このままじゃ確実に衝突する。
吹き飛ばされて星になった風船うさぎ
一瞬にして砕け散っていった仮面の群れ
山吹さんの前に立ちはだかった者たちの、無惨な姿が思い出された。
ぼくたちに何が出来る?
『天化』は山吹さんに、『地化』は天井にかかっている
『地撃』で攻撃する?
天化した相手への誘導弾だし当たるはず、効くとは思えないけどやってみよう。
「『地撃』」
ジゴクちゃんの左手から放たれる黒い光弾が、縦横無尽に跳ね回ってる山吹さんへと向かっていく。
ぺちんっ
山吹さんの平手一発で光弾が消されたのが見えた。
まるで蚊でも叩くように…
そっか、魔法の攻撃って平手打ちで消せるんだね…
『天雷』と『雷樹』はMP切れで使えないし、これだけ動き回る相手に使うと自分達も巻き込まれかねない。
あぁ、もう覚悟を決めてぶつかった方が良いのかも…
ん?
ぶつかる?
こっちから?
さっきの攻撃みたいに平手で消されたらどうする?
いやいや、あれでも山吹さんだよ?
敵でもなければ、父さんでもない。
山吹さんだ。
だったら、暴走トラックみたいな状態でもぼくは信じられる。
-こちもテンゴクの信じる人を信じます-
だったら決まりだ。
って、今の考えはやけにはっきりとジゴクちゃんのだと分かった。
-並列思考の状態にも種類があるようです。集中力が高まっていれば同調して意識は混ざり、今のように冷静な時では自我がはっきりとしてきて会話もできるのでしょう-
うん、何だか難しいこと考えてるね。
心で会話してるから意味も何となく伝わってきて理解できたけど。
ジゴクちゃんってけっこう賢い子だったりして。
-賢いかは分かりませんが、賢明でありたいとは思います-
立派な心構えだね。
ぼくは、懸命でありたいと思う。
「自分の命を使って生きてんだ。生きるってことは嫌でも命懸かってんだ。その自覚をもっちゃったらさ、命懸かってるのが普通なんだよ」っていうアニメのキャラの台詞を思い出した。
-たくましい言葉ですね-
無事に帰れたらジゴクちゃんも一緒に見ようか。
-こちはアニメというのを見たことがないのですが、今のテンゴクのイメージが伝わってきたので興味を持ちました-
テンゴクのイメージって、ちょっと洒落にならないあの世のイメージって聞こえなくもないけど。
うん、これから本当の天国を見ることにならないように、ちょっと一生懸命やってみようかな。
-はい!-
さて、飛び回る山吹さんを可能な限り目で追いかける
うん、二人で見てたら一瞬くらいは捉えられそうな時がある。
あとは山吹さんが、ぼくたちの近くを通りすぎた瞬間に…
見逃さないように…
きたっ!
「『地化』」
ジゴクちゃんが、ぼくたちに『地化』を使った。
自分にかかる力の向きが急に変わったら、流石に山吹さんも一瞬は固まるはずだ。
天地が引き合う力のままに、ぼくたちは山吹さんへと急接近するっ!
作中に出るアニメは、近々小説として載せる予定の自分の作品です。
何かリンクをさせたくて、つい。




