2日目、heaven&hell
「あはは、そりゃあ無くなるか。ちょっとレベル上げてから回復しようかな」
やった!ようやくレベル1から抜け出せるよ!
「あぁ、二人はまだ名符に名前がないはずだよね?」
名符を出すと「名称未設定」と書かれているままだった。
ぼくたちは「はい」と頷く。
「この世界での名前を決めとかないとパーティーが組めないんだ。早速だけど決められるかい?」
ぼくはゲームでキャラクターに名前をつける時とかもテンゴクを使ってる。
だから、ここでもテンゴクにする。
深い意味はないよ。
問題は女の子の方だよね。
「ぼくがテンゴクだから、ジゴクとかどう?」
軽い感じで聞いてみる。
って、流石に人の名前に地獄はないよね。
でも女の子は、「てんご様が付けて下さる名前に異論はございません」って言ったんだ。
「でも、どのような意味なのですか?」
って聞いてくれた。
あ、うん。
気にしてくれて良かった。
「ジゴクって、悪いことをした人が死んだ後に行くところだよ。ぼくのテンゴクってのが、死んだ後に善いことをした人が行くところだから、その正反対のところって感じかな?」
女の子は、信じられないっていう顔でぼくを見ていた。
だよねー
「ぼくたち、天術と地術で正反対だから丁度良いかなって、ちょっと思っちゃったんだよね。でもやっぱり、そんな名前じゃ…」
「こちに、そのような素敵な名前を頂けるなんて!」
あれ、女の子の目がキラキラしてるよ!?
ここ、洞窟みたいでちょっと暗いのにキラキラ輝いてるよ!?
さっきのは、信じられない良い名前だ!って顔だったの!?
「これより、こちはジゴクで御座います。てんご様と二人でテンゴクとジゴクで御座います!」
とっても嬉しそうだよ!?
今日初めての、つまり今までに初めて見るテンションの高さになってるよ!?
「良い名前になって良かったね」
「はい!」
って山吹さんと話してるよ!?
山吹さんは相手が笑顔なら問答無用で良いことだと思う人だからね。いつも通りの反応かもしれないけどさ!?
地獄で良いのかなぁ…
「他にも名前を考えてみない?」
そんな提案をしてみたら、
「ジゴクより良い名前があるのですか!?」
って凄い期待されちゃったよ!?
こんな期待に応られる名前なんて思い付かないよ!?
「うーん、やっぱりジゴクちゃんが良いかもしれない…」
とか、ぼくも大きすぎる期待から逃げるように言ってしまったよ!?
「こちも、ジゴクが気に入りました!」
うんうん…
「テンゴクとジゴクにございます!」
うんうん…
段々と似合ってる気がしてきたね…?
「ははっ、テンゴクも諦めるんだね。もちろん、わたしは問答無用で笑顔の味方をするからね? とくに可愛い笑顔のね」
ですよねー
うんうん…
ぼくも何だか悪くない気がしてきたし…
「じゃあ、ジゴクちゃん。改めてよろしくね!」
「はい!」
ぼくの言葉に間髪入れずに返ってくるのは、輝くような笑顔だった。
これが曇るのはぼくも嫌だよ…
山吹さんも賛成してるとくれば…
ぼくには反対する理由が全くないんだよね。
「こちもテンゴク様とお呼びした方が良いのでしょうか?」
キラキラした瞳が、ぼくを真っ直ぐに見つめている。
ぼくは、いつもの自分を装って、冷静な振りをして、精一杯のいつも通りで答えた。
「テンゴクで良いよ」
うん、これが精一杯だよ!
心からの笑顔が、幸せそうに、真っ直ぐにこっちを見てるんだよ!?
ぼくの中には、それに見会うような想いはなくて…
眩しすぎて、照れくさくて、いつも通りに振る舞うのが精一杯だよ!




