2日目、鏡占い、鏡の前で
「後は行けば分かるよ。鏡に触ってみなさい」
そう碧さんが言うと、鏡の表面を覆っていた光が消えた。
当然だけど、ただの鏡になったそこに映っているのは、鏡の前に立っている自分達の姿だった。
当然だけど、ぼくと女の子は呪いとやらで手を繋いままでいる。これ、自分で見てみると恥ずかしさ倍増じゃない?いや、恥ずかしいよ!
碧さんがにやにやしてる。ぼくの心情を面白がっているに違いないよね。
女の子は、会ったばかりの時と同じような無表情をしているのに、その時よりも冷たい感じが薄れて見える。
そう思うのは、鏡越しに見ているからだろうか?
長い黒髪に、色白の肌。
こうして見ると、銀髪で、日焼けもしているぼくとは対称的だ。
鏡越しの視線に気付いた女の子が、やっぱり鏡越しにこっちを見てにこりと笑った。
「鏡という物の存在は知っていましたが、このようにはっきりと姿が映るとは驚きました。姿見と呼ばれるのも頷けますね」
あぁ、鏡を見たのも初めてだったんだ。
「こうやって自分の姿を見るのも初めてなの?」
鏡を初めて見る動物みたいな可笑しなリアクションを期待するわけじゃないけど、驚いている女の子は、相変わらず落ち着いて見える。
「水行の間で水面に映っているのを見たことはあります。それでも、このようにはっきりと映るものを見るのは初めてですね」
すいぎょうのまでみなもに? 水に写ってる自分なら見たことあるってことかな。
「ふんっ、仲睦まじくて結構だけど、そろそろ鏡に触れてくれないかな?」
イライラした感じで言いながら、碧さんはにやっと笑っていた。
ぼくは「あ、はい」と言って、手を繋いでいる方とは逆の手を鏡に伸ばす。この、手が離せない呪いって、ちょっと強力過ぎない?死ぬ気で離そうと思えば何とかなるのかな?
女の子も同じように手を伸ばしながら「このまま鏡に吸い込まれてしまいそうですね」と言う。
ぼくが「流石にそれはないよ」と言い終わる時に、二人の手が鏡に触れて…
つまり、鏡の中の自分と手が触れた時、鏡の中の自分が勝手に動き出してぼくたちの手を掴んだ!
「えっ?」っと驚いている間に、そのまま鏡の中に身体が引っ張られて、ぼくたちは鏡の中に吸い込まれてしまった…




