2日目、異世界チュートリアル職業編
「さぁて異世界チュートリアルその三、職業編だよ」
二と三の間でとんでもない目にあったけど、ようやくチュートリアルの再開だ。
そういえば、ぼくはこの世界に何をしに来たんだろう?好奇心は少なからずあるんだけど…用事はないよね。
父さんの思惑が何か絡んでるんだよね。ちょっと不安だなぁ。
って…その三は職業…!?
魔法使いとかになれるのかな…?
「この世界では職業の魂、通称『ジョブ魂』を使って好きな職業に転職ができる」
じょぶたまっていうのを使えば、ぼくも魔法使いになれるのかな。
山吹さんは、どれが良いかなっと少し考えるそぶりを見せてから、「『ジョブ魂:ソードマスター』」と唱えた。
すると、オレンジ色の人魂のようなものが現れる。それを山吹さんは右手で掴み、自分の胸元へと押し込んだ。
「こうやってジョブ魂を自分にとりこんだ状態でジョブチェンジの魔法を唱えるんだ」
うっかりジョブ魂に触って転職しちゃったよ!てへへ!っとはならないんだね。
山吹さんは『インストール』と唱えた。
すると、山吹さんの全身が一瞬光ったかと思うと、次の瞬間には両手に刀を持っていた。
「どうだい?この刀はもちろん、それを取り扱う知識や技能もジョブ魂から選られるんだ。ただし、そういうのは自分の中のマナを再構成して生み出されるから、自分のキャパシティーを超えた効果は得られないんだ」
簡単に言うと、職業の強さも自分しだいってことらしい。
「職業は色々あるし、同じ職業でも自分の好きに変えられる部分がけっこう大きいんだ。まぁ、ものは試しに色々やってみることを勧めるよ」
「ふん、ヤマブキのようにジョブ魂の基本設定をそのまま使う奴は稀だろうね」
山吹さんの説明が、碧さんの横やりで中断された。
「その使い方が私に合ってるんですよ」という山吹さんの反論をそよ風のように流し、碧さんがぼくたちに言う。
「説明はそのぐらいで良いだろう。さっさと鏡占いをしてしまうよ」
あれ、そう言えば鏡占いってなんだろう。されちゃうの?
「『ジョブ魂:占い師』『憑依』」
碧さんがジョブ魂を使ったみたいだ。そう言えば、山吹さんとは呪文が違うんだよね。
『占い師』になった碧さんの横に、四角く大きな鏡が現れる。飾りも何もない、空中に浮かぶ大きな鏡。いや、鏡というわりには鏡面が白く曇っている。
「これは、この世界の頂きにある『深淵を写す鏡』を模していてね。ジョブ魂の宿る器を、身体の中に作り出す為のものなのさ」
そう言って、碧さんはぼくと女の子を鏡の前に呼び寄せた。
近付いても、鏡には何も写っておらず、白く曇っているだけに見えた。




