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HEAVEN AND HELL  作者: despair
五日目
213/214

五日目、見える絆



 どうしてだろう。

 ジゴクと意識が繋がる極化の状態はとっくに解けているっていうのに、以心伝心が解けていない。

 ジゴクと心が繋がったままになってる。

 意思と意識と感覚と感情の全てが繋がるほどの強い繋がりじゃないんだけど、なんとなくジゴクの考えてることが分かっちゃうていうくらいのかすかな繋がり。

 長年連れ添った夫婦みたいに日常生活くらいなら何も言わなくても問題ないかなっていう感じ。


 だから、ぼくが軽い気持ちで言った言葉でリリアラちゃんに無理をさせてしまったこと、それにより生まれた自己嫌悪の感情がジゴクに伝わってるのが分かるんだ。

 そして、反省を糧に精進致しましょうとジゴクが前向きに考えてくれていることも伝わってきている。

 うん。

 もっともだ。

 ぼくだってジゴクが失敗したときには同じように思うだろう。


 この小さい子に、ぼく達はどんな無理でも命じれちゃうと思っておいた方が良さそうだ。

 本当に怖いことだよね。

 ロウガくんが起きたらきっとリリアラちゃんのことを任せられるんだろうけど、、、


 そう言えばロウガくん、まだ寝てるね。

 リリアラちゃんもまた倒れちゃったわけで、、、


 早くこの兄妹がちゃんと対面できたら良いなあ。


 っと、まあ今のぼく達の問題はそこじゃない。

 問題なのは、どうして今も心が繋がっているのか分からないってところだ。

 やっぱり何度も以心伝心しすぎたせいかな?

 オーラだけじゃない何かがジゴクと繋がっちゃったんだろうか?



「テンゴクさーん! ジゴクちゃーん!」


 おっと、シュラちゃんの声が降ってきた。

 つまり、上から、、

 そして、山吹さん達が目の前に現れた。

 声に気付いたぼく達が空を見上げるよりも早く、しゅたっと地面に皆が降りてきたみたい。


「ヤマブキジェット、最高でした! お二人の祝福も凄かったです!」


 山吹さんにお姫様抱っこされたシュラちゃんが、手にも似た真っ白な『翼』の能力を出してアビスちゃんと撫子ちゃんと青磁くんを掴んでいる。

 ヤマブキジェットっていうのは多分だけど山吹さんのただのジャンプで、それで飛んで来たのかな。


 うん。

 父さん以外は皆集まってきてる。

 撫子ちゃんと青磁くんもいつの間にか異世界に来てたようだ。

 ひょっとしたら、さっきの儀式もちゃっかりムービーで撮られちゃったかもしれない。


「テンゴクくん、さっきの凄かったね! ちゃんと撮れたよ!」


 やっぱりね。

 青磁くんが居たのならそりゃあ撮られてる。

 全方位から観賞できる動画を、極化してマナの流れを感知できるぼく達にも気付かれずにこっそり撮れる青磁くん。

 実は凄い能力なんだよね。


「あははっ、あんた達って夏の風物詩の才能あるかもね!」


 そして撫子ちゃん。

 遠慮のない意見なら任せとけって感じは相変わらずだ。

 それにしても一体どんな才能なんだろう?

 花火とか蛍とかかな?


「夕立みたいだったよ! あと蝉時雨 !」


 なるほど、ちょっと騒がしかったよね。

 あと雷出して光ってたからね。

 あと、蝉が鳴くのは蝉時雨っていうんだね。

 ぼくは知らなかったけどジゴクが知っていた。


「これでその子も助かったんだろ? よくやったね」


 山吹さんが素直に褒めてくれた。

 これはぼく達も素直に嬉しい。

 ジゴクと心が繋がってるから嬉しいことが二倍感じられるのはやっぱり良いね。


 そしてアビスちゃん。

 今回のお手柄は彼女のおかげだよね。

 何せ、ぼく達だけで『神名帳』を作り出すのは無理だった。

 

「うむ。上出来じゃな」


 どことなくアビスちゃんのリリアラちゃんを見る目がいつもより優しい気がする。

 実はアビスちゃんも個人的な感情でリリアラちゃんを助けたいって思ってたんじゃないかな。


「実は儀式の後もリリアラちゃんが幽体離脱しちゃってさ。心の声が幽体から丸聞こえ。なんとかならないか見てあげて欲しいんだよね」


「それは何とも規格外じゃ。流石にそこまで気軽に出てしまうものではないのじゃがな」


 そりゃあ、気軽に出ちゃったら困る。

 見えちゃってるのも困るけど、先ずは出さずに済む方を解決したいよね。


 アビスちゃんがこっちにやってきた。

 ふむうと一息、リリアラちゃんを眺めると、、、

 ちょいちょいと山吹さんを呼んでリリアラちゃんを抱えてもらうアビスちゃん。

 そして不意に不味そうな顔をして、だけどすぐに愉快そうな表情になってぼくとジゴクの手を取った。


 ん?


「お主達、これも問題ではないのかえ?」


 うん?

 ぼくの手の小指の先から糸が出てるね。

 赤い色の糸だ。

 それは真っ直ぐにジゴクの指の先へと繋がっているようだ。

 見てないけど分かる。

 なにせ、心がちょっぴりだけど繋がっているからね。


 これは、もしや、、、


「あっははははっ! テンゴクとジゴクちゃん、運命の赤い糸で繋がっちゃってるー!」


 撫子ちゃんの笑い声が木霊した。

 なるほど、運命の赤い糸。


「って、なにこれっ!?」


 赤い糸って作り話のやつだよね!?

 本当にあったの!?

 いや、確かにここにあるんだけどもさ!



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