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HEAVEN AND HELL  作者: despair
五日目
209/214

五日目、リリアラ救済その4

大分間が空いてしまいました。

今回からテンゴク視点に戻ります。




 大きな石の台座の上に置かれ、横たわったままぴくりとも動かないリリアラちゃん。

 その身体から伸びているリリアラちゃんの幽体が楽しそうに唸っている。

 はっきりと見える本体はぴくりとも動かないのに、もやっとしか見えない生き霊の方が元気いっぱいなのが面白いね。


 そう、リリアラちゃんは幽体離脱ができる女の子だ。

 これについては道中にアビスちゃんに教えてもらったから知っている。

 そして、ぼく達はアビスちゃんによって幽体を知覚できるように意識のチャンネルとかいうのを合わせてもらっている。

 だから、幽体離脱しているリリアラちゃんが見えているんだよね。


 いや、アビスちゃんも今は幽体なんだけどさ。


 なんと、アビスちゃんは父さんによって幽体離脱させられちゃったのだ。

 父さんにぽんっと叩かれたアビスちゃんがばたりと倒れたときはびっくりしたけど、なるほど幽体離脱なのかと分かったときにはまたびっくりした。

 そのアビスちゃんが今はぼくとジゴクが以心伝心しているオーラの中に取り憑いているんだよね。


 あっ、身体の方は山吹さんが守ってくれてるから安心だよ。


〔まさか余が幽体になってテンゴクとジゴクに取り憑くことになるとはのう〕


 まさしく急展開だよね。

〔どちらかと言えば超展開じゃな。まさか余が幽体になれるとはのう〕

‐それにしてもアビス様、幽体とは魂とまた違うもののようで御座います。いったいこれは何なのでありましょう?‐


 ああ、ジョブ魂とかの魂って普通に目に見えてたもんね。

〔ふむ。単に自身の可能性を抽出し、物質領域に固着させ、それを意識の主体にしているだけなのじゃがな。可能性でしかない以上は目に見えぬというわけじゃよ〕


 うん。

 どうしてだろう。

 アビスちゃんとも今は以心伝心して心が繋がってるんだよね、一つ一つの言葉の意味はだから分かるんだけど…

 分かっても理解できないよ!?


〔もとより地球の言葉で今の余やリリアラの状態を真に説明することはできんのじゃよな。意識を量子エンタングルメント化したその片割れというのが概念的には近いかのう。しかしやはり、この状態を一言で伝えるのならば幽体離脱というのが適当じゃろうな〕


 よし、幽体離脱。

 それ以上の説明は確かに不要だ。

 何せ理解ができないからね。 


 今はリリアラちゃんの幽体をぼく達の『極化』の能力で操ってるマナで肉付けして、皆からも見えるようにしてるんだよね。

‐然り、そろそろ次の儀式と参りましょう‐

〔うむ、手筈通りに行くのじゃよ〕


 そう、ぼく達はリリアラちゃんを助けるためにここに来た。

 終末論者(カンパネラ)っていう人達に協力してもらうための交渉材料にしたいっていう事情もあるみたいだけど、とりあえず人助けには違いない。

 とはいえ、その儀式ってやつの実際の手続きみたいのはアビスちゃんがほとんどやっちゃうんだよね?

〔うむ。お主らが接客で、余が実務といったところじゃな〕


 それじゃあぼく達は頑張ってお客さんをもてなさないとね。

‐確りと役目を果たしましょう‐


 ぼく達はリリアラちゃんへとしっかりと向き合う。

 まだ何やら混乱している様子のリリアラちゃんだけど、ぼく達の視線に気付くと「えっとぉ……」と言いながらもじもじしはじめた。


 リリアラちゃんを見て卒倒したロウガくんはまだ倒れたままだ。

 ずっと意識もないと思っていた妹のリリアラちゃんが、急に現れて「みんなもっと苦しめば良いのに!」なんって言ったのだからそりゃあ吃驚したのだろう。


 そして、この里の長らしいゴルバンさん。

 とても怖い顔をしているけれど、今は彼にはエルピーが付いてくれている。

「この顛末を見届けてからでも遅くはないだろう」

 なんて言ってゴルバンさんを抑えてくれているようだ。

 さっきまでは「テンゴク様ぁぁぁぁぁ!」なんて恥ずかしいことを唸るように叫んでた人と同じとは思えない落ち着きようだ。


 何かあったら父さんが手助けしてくれるっていう点しか不安要素がないってわけだね。

〔そうじゃな。まったくもって不安しかないバックアップじゃが、それを気にしても仕方なければ仕様もないのじゃ〕

 まったく、困った父さんだよ。

 朝から必要以上に満腹になったのもきっと父さんのせいだ。

 あんなに美味しいものを朝ごはんにされたらついつい食べ過ぎてしまうよね。


 さてと、リリアラちゃんはもじもじが止まらないみたいだ。

 今までずっと一人だったわけだし、人見知りみたいになっちゃうのはしょうがないね。

‐しかしそれは、仕方がなくとも仕様がないわけでは御座いませぬ‐

〔いやいや、仕方も仕様も意味は殆ど同じなのじゃよ〕

 あれ、しょうがないと仕様がないで違う言葉な感じなのか。

〔そうじゃな。しょうがなくとも仕様がないわけでないとでも言った方が今回は良いじゃろうな〕

‐なんと!言葉とはこれほどに奥深きもので御座いましたか…‐

 うーん。

 普通は語源っていうとこまで考えて会話しないけど…


 って、いやいやすぐに脱線しちゃうんだからもう。

〔心の中での会話は時間が殆ど過ぎんのでな。この程度はよいではないか〕

‐然り。然れど確かに頃合いで御座いましょう‐



「こちはジゴク」


 おっと、ジゴクが名乗りを上げたよ。

 ぼくも続こう。


「ぼくはテンゴク」


 ぼく達は凄く真面目な顔をする。


「「リリアラよ。汝に祝福を授けよう」」


 うん。

 ちょっと偉そうだ!


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