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HEAVEN AND HELL  作者: despair
五日目
206/214

リリアラ救済、その1

ロウガくんの妹のリリアラちゃん視点です。

ほっこり病んでます。


 痛い

 苦しい

 悲しい

 虚しい


 私が生きていることで感じられることの大半がそれだ。

 あとは、怒りと憎しみが少しだけ。

 ああ、そうだ。

 ロウガ兄様には本当に申し訳なく思っている。


 生きててごめんなさい。


 ムクロの私は完全に兄様の重荷でしかない。

 そんな私が、生かされていることを煩わしく思い、苦しさの余りに兄様に怨みすら抱いてるということが本当に申し訳ない。


 床に転がっている自分の身体を見下ろす。

 ぴくりとも動かないムクロの身体。

 (これ)が消えてしまえば良いのに。

 そしたらロウガ兄様の負担にならないし、苦痛も空虚も罪悪感も感じずにすむ。


 そう、私が自分の身体から抜け出せるようになったのはもう随分と昔のことだ。

 それまで痛みしか知らなかった私は、その時ばかりは歓喜した。

 夢現に聞こえていたロウガ兄様の声がはっきりと聞くことができた。

 初めて世界というものが実在するのだと感じ取れた。

 救われたんだと思った。

 肉体から抜け出し、魂からも解き放たれて、自由になったと信じて喜んだ。


 だけど、身体から抜け出した私の精神は

 誰にも認識されることがなかった。

 何にも触れることができなかった。

 少しばかり自由になれたことで得たものは、孤独感だけだった。


 それでも、身体を抜け出している間は痛みを感じずに済む。

 そんなに遠くには行けないし、一定の時間が経つと肉体に引き戻されてしまうけれど、おかげで人並みの知識を得ることができた。

 肉体に居る時には痛みに堪えるだけで精一杯で、他には何もないのだから、身体を抜け出して孤独を味わうことが唯一の安らぎには違いない。


 もっと遠くに行けたら、時折家を出るロウガ兄様に着いていくことも出来るのにね。

 昨日、地響きがあってからロウガ兄様は家を出ている。

 何か危ないことに巻き込まれていないか、少し心配だけど、私に出来ることは何もない。

 いっそ、私を捨ててロウガ兄様がどこかで自由に生きてくれた方が嬉しくすらある。

 ロウガ兄様が居なくなれば、あの里の長は私を処分してくれるだろう。

 意外と、身体が無くなったら私の精神は解放されて、もっと遠くに行けるかもしれない。

 話に聞くチテイやチキュウを見てみたいな。

 なんて、都合が良すぎる夢想をしてしまう。

 きっとそう上手くは行かないだろうけど、最低でも消えられるなら悪くない話だ。


 そうなったらロウガ兄様は悲しむだろうか。

 それは少し嫌だけど、ロウガ兄様の為に苦しみ続けるのももう嫌なんだよね。

 本当に、ムクロの妹でごめんなさいだよ。


 

「リリアラ!」


 おっと、ロウガ兄様が帰ってきた。

 嬉しい?

 残念?

 うん、両方だ。

 それにしても、兄様は何かそわそわとしているようだ。

 時々、私を助けられるかもしれないと言って何の薬にもならない薬を試したりする時のそわそわだね。


「リリアラ、もしかするとお前を助けられるかもしれないんだ!」


 ほらね。

 やっぱりだ。


「悪いが外まで連れて行くぞ」


 むむ…

 ロウガ兄様が私の身体を担ぎ上げた。

 それと同時に、私の精神が肉体へと引き戻されてしまう。

 肉体に刺激があると戻されちゃうんだよね。


 痛い…

 戻ってすぐは凄く痛い…

 全身の皮をめくられ、肉を削ぎ落とされているようだ…

 もがくと痛みが増すからじっと堪えるだけだ。

 しばらく耐えたら全身に針が刺さっている程度の痛みになる。

 それまではじっと我慢しよう。


 ロウガ兄様が私のことを諦めるまでは、まだまだかかりそうだなって考えると嫌気がする。

 だけど、その度に少しだけ期待もしてしまう。


 今度こそ、本当に助かると良いなってね。



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