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HEAVEN AND HELL  作者: despair
4日目、夢編
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四日目、ドリームでマジカルな展開


 シュラちゃんとロウガくんを一瞬で眠りに落とした寝袋は、本当にふかふかだった。

‐これはなんとも、心地好き‐

 今、ぼく達は三人で以心伝心している。

 心が繋がっているから、ジゴクの感じているふかふかもぼくに伝わってくる。

〔うむ… 余は眠ることを必要とせんのじゃが… これはなんとも…〕

 心が繋がっているから、アビスちゃんの感じるふかふかもぼくに伝わってくる。


 つまり、最強の寝袋の三回攻撃を一人で受けているようなものだ

 つまり、最強の寝袋の全体攻撃を一人で受けているようなものだ。

 三人がそれぞれ三回攻撃だか全体攻撃だかを受けているわけで、その三倍の癒しに包まれている感覚が、ジゴクとアビスちゃんからまたまた伝わってきてしまうわけで。

 これはもう何がなんだかよく分からないくらいに心地好い。

 ぼく達は今や寝袋と一体化して、宙に浮かんで雲になっているんじゃないだろうか。


 心地好さは際限なく膨張を続けていく

 ぼく達はこれに勝てるはずもなく

 意識が眠りにあっさり落ちて……



「って、寝ちゃったんだよね!?」


 気が付くと三人揃ってぼくの家の居間に居た。


「うむ。ここは夢の中じゃよ。上手く入れたようじゃ」


 ちゃぶだいの前に綺麗な姿勢で座りながら、アビスちゃんは麦茶を飲んでほっと一息ついている。


「テンゴクと共に夢の中に入れたことに、こちは胸を撫で下ろす思いで御座います」


 ちゃぶだいの前に綺麗な姿勢で座りながら、ジゴクも麦茶を飲んでほっと一息ついている。


 冷たくて美味しそうな麦茶の入ったガラスのコップは透明な琥珀色をしている。

 コップの周りについた結露をきらきらと煌めかせている魅惑の飲み物。

 それは、ちゃぶだいの上に二つしかなかった。


「二人だけ麦茶飲んでずるい!」


 まだ朝方とはいっても今は夏だ。

 本当は寝たばかりの夢の中だけど、暑いことにはかわりがない。

 ぼくだって、冷たい麦茶を飲みたいよ!


「テンゴクの麦茶はそこに御座います」

「うむ。そこにあるのじゃよ」


 二人がそう言いながらちゃぶだいの上をを指し示す。


 おっと、

 ちゃぶだいの上には確かに三つ目のコップが置いてあった。

 美味しそうな麦茶がちゃんと入っているよ!


 ぼくもちゃぶだいの前に、二人を見習って行儀よく座り、だけどすぐに足を崩してから麦茶を飲んだ。

 うん、美味しい!


「だけどどうして地球の、それもぼくの家に居るんだろ?」


「余がテンゴクとジゴクの記憶の内より呼び出したのじゃ」


 ふーん。

 アビスちゃんも器用だね。


「何せ、今の地球の様子がさっぱり分からんかったのでな。実際に見てみれば、ここは余の知る場所と全く同じでほっとしたのじゃよ」


 あれ?

 アビスちゃんもここに来たことあるの?


「なんのことはない。余が……」


 「余が」まで言って、アビスちゃんが台詞を中断してしまった。


「ヨガ?」


 ぼくは人体の限界に挑むかのような、きっと軟体生物も真っ青になって裸足で逃げ出すだろうポーズを想像した。


「なんと!人体が有らぬ方向に曲がって…!」


  おおっと、ぼくのヨガって言葉とともにそのイメージがジゴクに伝わってしまったようだ。


「あ、うん。ヨガっていうトレーニングを思い浮かべちゃって…」

「いや、流石に人を折りたたみ傘のように畳んだり開いたりするトレーニングはないのじゃよ。それよりも、どうやらここを覗かれておるようじゃな」


「え? 覗き?」

「なんと!無断の覗きは万死に値する罪の一つで御座います!」

「ええっ!? そんなの誰から聞いたの!?」

 もう体の方は寝てしまっているからだろう。

 ジゴクがいつもより変なことを気軽に口に出しちゃってる感じ。

 ちょっと過激だよね。


「山吹様とのガールズトークで教えて頂きました。」


 ああ、それなら納得かも。

 山吹さんなら言いそうだ。


「ふむ。そうじゃな。万死に値する罪を犯した不届き者よ。姿を現すが良い!」


 おおっ

 格好良い台詞とともに、アビスちゃんが壁に向かって閉じたままの扇子を投げた。

 ううむ。

 びしっと動きも決まってるけど、こういうのってどこで練習するんだろね?


 そして、扇子は壁にぶつかって、壁が吹っ飛んでいった。


 ん?

 確かに壁が無くなっているよ!

 っていうか壁の向こうには何もない!

 どこまでも果てしなく何もない!

 世界は虚無に侵食されている!?

 夢だからってこれは大丈夫なのかな!?


「む、ちと強すぎたかの? 宇宙最強の破壊魔法をイメージしたただの投擲(とうてき)なのじゃが、夢の中では恐ろしい威力になるのじゃな…」

「万死に値する不届き者を成敗致せたのです。覗きに対して手ぬるいという言葉はありませぬ故、これで良いので御座います」


 うーん。

 それは実に青磁くんが危険な考え方だね。

 とはいえ、今回の覗き見さんは誰だったのか…


 そんなことを考えつつ、覗き見さんのことを少し心配しつつ、夢の中だし大丈夫だよねっとか考えてたらちゃぶ台が光りだした。


「今度は何!?」

「ちいっ!あやつが来おるのか!」


 もう目を開けてるのが辛いほどの輝き!

 こんなに眩しいちゃぶ台じゃあ、落ち着いてご飯が食べれないよ!


 そして、輝きの内より一人の先生が現れた。

 とても先生には見えないけれど、確かに先生だった。

 何せ、ぼくのクラスの担任だ。


「はーい♪ あなたのハートをマジカル満たすぞ♪ マジカル☆ミルチャン♪ 参上っ♪」


 どうして学校の先生が自宅のちゃぶ台から湧いて出るのか…

 どうして自作の魔女っこの自作のコスプレで自作の名乗りをアニメ声で上げるのか…


 この人が学校の先生だと人に説明しても簡単には信じてもらえないだろう。

 まだ職業がアイドルとかなら同情の余地はあるけれど、この先生は仮にも教職についている。

 つまり、この奇行にも同情の余地は一切ない。

 実際に、親への反抗期よりも先に、担任の先生への反抗期を迎えてしまった生徒がぼくのクラスには何人も居る。

 それも無理がないと思う。


 いくら夢の中だと言っても、これはあんまりな家庭訪問だよ!



流石に現実ではちゃぶ台からは現れませんが、「こんな家庭訪問は嫌だ」というお題の大喜利があれば、テンゴク達5年A組の生徒は実体験を語るに違いありません。


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