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HEAVEN AND HELL  作者: despair
4日目、イツ・ルヒの地上世界
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4日目、ロウガくん登場


「俺を捕らえてどうするつもりだ!」


 山吹さんに抱えられたロウガくんがじたばたと暴れている。

 全身を包む衣装のせいで、まるで袋に入れられて誘拐されてる男の子みたいだよ。

 まるでぼくみたいだね。


「うーん。つい反射的に捕まえちゃったけどさ、どうしよっかなー」

 ノープランだった山吹さん。

 特に目的もないのに人を捕らえちゃいけないよね。


「山吹よ。一つ頼みがあるのじゃが…」

「ん? なんだい?」

 アビスちゃんが山吹さんに頼みたいことってなんだろうね?

「さっさと降ろせ!『ダークフレ…、がっ!」


 うわっと!

 ロウガくんが技を使おうとしたところに山吹さんが頭の天辺と顎を掴んでしっかりと押さえ込んだよ!

 山吹さんの力で押さえられたら喋れなくなってもしょうがない!

 そりゃあ術の名称も唱えられなくなるだろうけどさ!

 そんなので技を封じるなんてありなの!?


「流石に、技を素直に受けたくないからね。」

 少年らしき人物の頭を押さえるのも気が進まないという風に、やれやれと言った顔をしている山吹さん。

 周囲をぐるりと見回して、そして最後に地面を見た。


「よし、レベル75ならちょっとくらい大丈夫だよね」


 そう言い終わるよりも早くどごんっと音がして、地面に黒い布地が埋まっていた。

 山吹さんが、ロウガくんを地面にぶっ刺したようだ。


 って、ぶっ刺した!?


「うわっ、思ったより深く入っちゃった…」

 すねの辺りまで地面に刺さってる人に、思ったより深く入っちゃったという山吹さん。

「どこまで突っ込むつもりだったんですか?」

 ぼくは恐る恐ると聞いてみる。

「この辺まで、かな」

 ももの辺りだった。

 そんなに変わらないなとぼくは思った。


 いや、膝まで出てたら足をばたばたさせられるかな?

 今はぴくりとも動いてないし、本当に大丈夫なんだろうか。

 ひょっとすると、レベルが高くなってくるほど体が丈夫になるせいで、人としては雑に扱われるのかもしれないね。


「それで、頼みって何だい?」

「う、うむ。それなのじゃがな、すまんがそこの終末論者(カンパネラ)の少年にも聞いてもらわんと始まらんことなのじゃよ。威勢良く突き刺したばかりで恐縮なのじゃが、ちょいと引っこ抜いてはくれんかの?」


「あはは。それは良いけどさ。それでも、一体何の話をするのか私達に先に教えてほしいかな」

 にこりとしながらも、山吹さんの表情が少し険しくなった。

 アビスちゃんのことを警戒し始めたんだろう。


「私は反対です!」

 そう言いながら、アビスちゃんと山吹さんの会話にシュラちゃんが入っていった。

 よく分からない大人の事情がありそうだと、ぼくはついつい傍観しちゃっていけないね。

 ジゴクはきっと、状況を読み解こうと考えているに違いない。


終末論者(カンパネラ)の人と関わってはいけないと、私は親に聞かされています。それは決して理由のないことではないと思うんです!」

 シュラちゃんは反対らしい。

 関わってはいけない理由ってなんだろうね。


「そうかもしれん。シュララバよ。余も、ここにお主が居なければ、このような提案はせんかったじゃろうからな」


「私、ですか…?」

 何かシュラちゃんにも関係のある話なんだろうか?


「そして、ここに来たのがロウガ・フォルトリアでなければな」


「だけど、私はこの人のことは何も知りませんよ!何の関係もありません!」


 関わってはいけないと聞いている人と、何やら繋がりがあるように言われてるんだもんね。

 シュラちゃんが必死に否定したがるのもしょうがない。


「うむ。この地面に刺さってるロウガにはな、一人の妹がいるのじゃよ」


 まさか、その妹がシュラちゃんだったり…


「私にお兄さんは居ませんよ!」


 居ないらしい。

 もっとも、ロウガくんがそこまで年上とも思えないしね。


「その通りじゃよ。然れど、お主とこやつの妹には、大きな関連があるのじゃ」


「関連ってなんですか?」

「すまんが、その話はこやつを引っこ抜いてからで良いじゃろ。その方が分かりやすいはずじゃよ」


「ふーん。気になっちゃうね。私はアビスちゃんの話を聞いてみたくなったかな。シュラちゃんはどうする?」

「私は山吹様が聞いてみたいのなら何も不満はありませんよ!さあ、聞きましょう!」


 あはは。

 うん。

 シュラちゃんの山吹さんへの愛は、親の言い付けに簡単に勝ってしまったようだ。


「みんなも良いかい?」

 山吹さんがぼく達にも確認をとる。


「良いわよ。私はカンパネラだかと関わるなって、親に言われたことないしさ」

「それはぼくも同じだね。それに面白そうだし賛成」


 撫子ちゃんと青磁くんが賛成した。


「ぼくも大丈夫です」

 反対する理由の方が思い当たらなかった。


「こちも反対は致しませぬ。されどもアビス様。一つだけ教えて頂けませんか?」

「なんじゃ?」


「それは、こちとテンゴクにも関係のある話なのでしょうか?」


 ぼく達に?

 カンパネラっていう謎の組織とぼく達に、関係なんてなさそうな…


「勿論あるのじゃよ。もとより、終末論者(カンパネラ)の存在は(いず)れは避けられん。天地術の使い手が居て、山吹が居て、シュララバとロウガが出会った。これ以上の良い状況はそうそう考えられん。余には、これが好機だと感じられたのじゃよ」


「承知致しました」


 ジゴクが承知いたした。

 って、これはぼく達に関係のある話だったの?

 それじゃあ、ひょっとしたら反対する理由もあったかもしれないよね…?

 もうちょっと考えてみるべきかも……


「よし、それじゃあ全員賛成ってことで、ロウガくんを引っこ抜くよー!」


 ああっ!

 ぼくはもう賛成しちゃってたよ!


 そしてずぼっと、

 大根のようにあっさりとロウガくんが引っこ抜かれてしまった。

 って!

 さすがに賛成とか反対する以前に地面に埋まりっぱなしは可哀想だった!


 だけど、ぼくの心配とは裏腹に、ロウガくんはとっても元気そうだ。

 足を掴まれて地面から引っこ抜かれたばかりの宙吊り状態なのに「『暗黒炎陣ダークフレイムストレージ』!」って技を使ってきたよ!


 ロウガくんの全身を包んで居る黒っぽい服を、さらに黒い炎が包み込む!


「あっつっ!」

 山吹さんの手にも黒い炎が触れたんだろう、熱くて思わず手を離してしまったみたいだ!

 ロウガくんが自由になっちゃった!


 やっぱりレベル高いと地面に刺さったくらいじゃ全然平気なの!?

 これは危険なんじゃないかな!?


「ぷしゃっ!」


 うん?

 ロウガくんの身体にジゴクのドラゴンが飛び付いた。


「ぷしゃっ、はむ、はむはむ、ぷしゃっ」


 おおっと!

 はむはむしながらジゴクのドラゴンがロウガくんの炎を食べちゃったよ。

「なんだと!? 俺の炎を喰らっているのか!?」

 ロウガくんも面食らってるようだ。


「なるほど、闇の炎ならまさしくこやつの大好物じゃろうな」

 なるほど、ぼくのドラゴンが回復の光が溶け込んだ水を美味しそうに飲んでいたように、ジゴクのドラゴンにとってはこの黒い炎が大好物だったってわけだ!


 うん。

 やっぱりエビのしっぽだけじゃもの足りなかったんだね!



Q:どうしてせっかくの新キャラが、出た早々に見せ場の一つもないままに地面に突き刺さったり、ペットの餌になったりしてるんでしょう?


A:主人公が登場シーンで頭から袋を被されて拐われてしまう小説なので仕方がないですね。

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