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HEAVEN AND HELL  作者: despair
四日目、氷精の祠
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4日目、怒りの氷精


 ダンジョンが回復ポイントの光で満たされ、すっかりと機能停止している今日この頃

 皆さまいかがお過ごしでしょうか?

 ぼく達は今、ダンジョンマスターに怒られています


「お前達のせいで回復ポイントが壊れたのだ! ダンジョンが機能停止するなど本来は有り得ないだろうが! このような事態となった責任を、お前達はとれるのか!?」


 うーん。

 ぼく達のせいって言われても、わりと普通に術を使ってただけなんだよね。

 回復ポイントからマナを引っ張るっていう計画だったけど、まさかそれでクリスタルが壊れちゃうなんて思ってもいなかった。

 どうすれば、今回の事態を未然に防げたんだろうね。


 ああ。

 あと、ここのダンジョンマスターの精霊、シェープル・リリームっていう名前の氷精さん。

 態度は大きくて偉そうなのに、見た目がとっても可愛くてさ。

 ずんぐりむっくりな丸い体に、ぺたりと垂れた長い耳

 一言で言えば氷で出来た雪うさぎって感じだ。

 見た目が可愛いから態度が大きくても、うん、可愛いね。

 怒られてるのにさ、ついつい微笑んでしまいそうになる。


「そも、こういう事態となる前にダンジョンマスターであるお主が何とかするものであろう? 辺りのマナを吸い付くす前に、回復のクリスタルを停止する程度の権限は持っておるじゃろうに…」

 うーん。

 アビスちゃんがちょっと呆れ顔。

 今の、どうやらダンジョンマスターの方に不手際があったんじゃないかってことだよね。

 確かに、こういう事態を防ぐ責任者みたいなポジションはダンジョンマスターなんじゃないかって気がしてきたよ!


「くっ! 確かにそれはそうなのだが…! だが、私は丁度フリーズしていたのだ!」


「フリーズ?」

 精霊が固まってたってことかな?


「そうだ! そうだよ! 私はフリーズしていたのだ! あのような恐ろしいものを見たせいであろうな!」


「恐ろしいもの?」

 肉食動物でも出たのかな?

 うさぎさんならそういうの怖いだろうな…


「そう、お前達だよ!」


 あれ?

 ぼく達って言った?


「お前達ってぼく達のこと?」

 何か小動物を怯えさせるようなことをしちゃったんだろうか…


 あっ!


「『天化』!」


 ぼくは足元の氷の床に『天化』の術を使う。

 そこに『天龍』の術で召喚していたドラゴンを呼び寄せた。

 『天』の属性がある場所ならどこにでも呼べるみたいで便利だね。


「こいつが怖かったかな?」

 あ、怖がるなら呼んじゃダメだったかな…


「本物のモンスターだからといって私がフリーズすることはない!」

 あっ、平気そうで良かった。

 いや、氷精とドラゴンが睨みあってるけど…

 うん。睨みあってても可愛い。


 だけど、じゃあ何が怖かったんだろうね?


「私が恐れ(おのの)いたのは、お前達の使ったあの恐ろしい術の方だ!」


 恐ろしい、そう言われるような術ってなんだろう?


「もしや、『極化』のことで御座いましょうか?」


 うん?

 それじゃあ、この可愛い氷の雪うさぎが恐れているのはぼく達だってことになるけど…


「そうであろうな。マナを操れる人間など、精霊からしてみれば天敵のような存在なのじゃろう」


 精霊の天敵…

 よく分からないけど、マナを操れるっていうのは精霊を怖がらせちゃうってことかな。


「それじゃあ、出来るだけ『極化』するのはやめとこうかな」

 マウプーと同じで精霊とはいえ、こんな小動物を怯えさせるのは嫌だもんね。


「それはそうしてくれ。 あ、いや、そうじゃなくてだ! そんなことよりも、ダンジョンが機能停止したんだぞ!?」


 うんうん。

 確かに、まだ回復ポイントの緑の光しか明かりがない。


「私のダンジョンが機能停止するということは、私の精霊としての役割を果たせなくなるということだ! それはつまり、巫女様に御迷惑をかけてしまうということだ! どうしてくれる!!」


 巫女様って(みどり)さんだよね。

「迷惑かけちゃうってどういうこと?」

 なんだか碧さんに怒られそうな予感だね。

 いや、あれ?

 石精の祠の時と同じような…


「この氷精の祠は、異世界(イツ・ルヒ)における全ての氷室(ひむろ)の管理をしているのだ! もちろん、巫女様の使用なされるところもな! それが止まってしまったら巫女様は…… 」


「氷室…?」

「冷蔵庫のことじゃよ」


 ああ、このダンジョンが機能停止すると、異世界(イツ・ルヒ)にある冷蔵庫が止まっちゃうってことか!

 あれ、それって大変なんじゃ… って……あれ?


「だけど、こっちの世界じゃお腹は空かないし、すぐには問題にならないんじゃないの?」

 食材が腐る前には機能も復活するよね、きっと。


「何を言っている! 巫女様の大切なアイスクリームが溶けてしまうではないか! ああ、もうダメだ! 私は信用を失い、精霊としての役割も剥奪され、そして行き場を失った野良精霊として一生を終えるに違いないだろう!」


 うわー!

 何だか大きな問題みたい!

 そして碧さんはアイスクリームが好きらしい!


「ふむ。そんなことより、先ずはダンジョンを出るべきでは御座いませんか?」


 精霊さんの一大事をそんなことと言うジゴク。


「そうじゃな。精霊の進退よりも、先ずは自分の身を守らんといかんじゃろ」


 あれ、アビスちゃんも同じ意見ってこと?

 自分の身を守るって、何か危険なことが…


 ぽたっ


 ぽたぽたっ…


 あれ?

 水滴が落ちてくる…?

 これって…!


「ダンジョンが溶けてきてる!?」


 このままじゃ危なくない!?

 四方八方、周囲は全部が氷で出来てるダンジョンが、とけ始めてるよ!


 確かに、精霊さんの一大事よりも、とっても一大事みたいだよ!



氷精シェープル・リリームの見た目はスワロフスキーな雪うさぎって感じです。

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