2日目、異世界チュートリアル
ピンク色の巨大うさぎは怒り心頭っていう感じでぼくたちに襲いかかってきた。
「この世界はマナってやつで出来ていていて、マナの流れの淀みから魔物が生まれるんだとさ」
山吹さんが冷静に解説している間にも、巨大うさぎはどんどん近付いて来る。
「って、逃げた方が良くないですか!?」
このままじゃ風船ボディーにぼくたちははじきとばされる!
だけど山吹さんは落ち着いている。「大丈夫さ。よく見ときなよ」とか言ってる。怖すぎる!
「チュートリアルその二、この世界では私たちの体はマナで強化される」
そう言うと同時に、山吹さんの身体がふっと消えた、ように見えた。
そして目前に迫った巨大風船が弾き飛ばされる。
山吹さんが高速で体当たりしたんだと、遠くへ飛んでいく風船を見送ったあとにようやく理解できた。
30メートルくらい離れた所に山吹さんが立っていて、こっちにおいでと手を振っている。
山吹さんが一瞬で移動した距離は、ぼくたちにとってはそうではなく、砂に足を取られて歩きにくいし一苦労だった。
「強化されるとは言ってもレベルがあってね。マナを上手く身体に巡らせるには相当の経験を積まなきゃならないよ。そして、身体に巡らせたマナを使いこなすのは更に難しいんだ」
誰でもすぐに最強になれるわけじゃないようだ。がっかりしつつも安心する。さっきの山吹さんみたいな動きで身体が動いちゃったら怖すぎる。
「さて、その三は中に入ってからだね」
そう言えば、どこかに行くんだっけ。入れるような場所ってどこだろ。
そう言えば、さっきのウサギが飛び出してきた場所に穴が空いてるけど、まさか、あれ…?
「おや、テンゴクは気付いたみたいだね。この世界って地上は住みにくくってさ、人が居るのは地下なんだ。それで、入り口の一つがここなのさ」
山吹さんは、穴の方へ手を向け『リフト』と唱えた。
あっ、唱えたんだ。声が普段より響いて聞こえたよ。絶対に呪文だよね。
穴の入り口が光で覆われて、その上に山吹さんが飛び乗った。
ぼくたちも続いて、恐る恐ると光の床を踏んでみた。
あっ、けっこうしっかりしてる。大理石の上みたいになめらかで安心感があった。
ぼくたちが乗ったのを確認して、山吹さんは手を光の床に向けた。
すると、光の床が一層強く輝きだして、下に降り始めた。
リフトっていうかエレベーターみたいな感じ…
って!穴の中は周りが砂の壁だったけど、そこを通りすぎたら何もなかった!壁の無いエレベーター!転んだら落ちるくらいには狭い!
とか思ってる間に下についたみたい。「着いたよ」って山吹さんが言ってる。意外と近かったみたい。内心はがくがくのぶるぶるだ。光る床から降りようと思って、ぼくはひざが震えてるのに気付いた。女の子はやっぱり平気そうに光る床から降りていく。
あれ、まさかこの中でぼくが一番の怖がりだったりするんじゃ…




