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HEAVEN AND HELL  作者: despair
四日目、氷精の祠
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四日目、星羅雲布で光輝燦然


 アビスちゃんに言われて『極化』を解く。

 まだ回復ポイントから緑の光は出続けている。


 ああっ!

 『極化』でMPを全て消費する状態になってる時に回復したから、回復とMP消費が重なったのかな。

 消費し続けてたからいつまでたっても回復が終らずに、延々と際限なく回復の光が出続けてたんだね!

 辺りには霧のように回復ポイントの光が漂っている。

 青い氷の洞窟の中に緑の光が揺らめく光景はとても綺麗で幻想的だ。


 けど…

 これって不味いんじゃ…

 やり過ぎた気がするよ。

 それに回復ポイントからの光はまだ止まってない。

 壊れちゃったのかな?

 でも綺麗なんだよね。

 デートで綺麗な場所を見てるんだから、これって良い感じなのかも。


「星羅雲布にして光輝燦然とは贅沢な景色に御座います!」

「眺めているだけで誰もが氷壺秋月たるであろうな。絶景じゃよ」

 おっと、所々何語か分からない。

 いや日本語なんだろうけど。

 少なくとも、ジゴクはぼくの意識の中から拾った言葉以外ではカタカナ言葉も使ってないはずだし、ぼくに分からないってことは日本語の難しい言葉だっていう予想はできるんだよね。

 景観を褒めていることは分かるから良いかな。

 うーん。

 以心伝心してる時なら言葉の意味も心から伝わってくるから理解できるんだけどね。


「しかし、これは想定以上じゃな」

「あっ、面白いことってこの景色のこと?」

 アビスちゃんが予想してた以上に綺麗な光景だっていうことなのかな。

 だけど、いやいやと首を振るアビスちゃん。

 他にも何かあるみたいだ。


「はて。もしやテンゴク、これは…」

「どうしたの?」

 ジゴクが何かに気付いたようだ。

「ふふん。気付いたようじゃな」

 アビスちゃんが自慢気にふんぞり返っている。

 さも良いことがあっただろうと言わんばかりだ。

 大人がしてたら偉そうで嫌味なポーズだけど、小さな子どもがやってると可愛く見えるのは面白いね。

「はい。彼方(あちら)に緑の球体が御座います」

 言われてぼくは指された方を見る。

 確かに、そこには緑の光が蠢く球体があった。

「なんじゃこれは!?」

 あれ、アビスちゃんもびっくりしてる。


 今もクリスタルから出ている緑の光が、ふわふわと漂いながら球体の方に吸い込まれていってるようだ。

「ああ、天球儀と地球儀が一つの(たま)になったやつかな」

 さっき『天龍』と『地龍』の術を試すのに出したやつだよね。

 そこに回復ポイントの光がゆっくりとだけど集まっていってるみたいだね。

 球体の中から肯定するように「ぷしゃ」とか「ひゅーるるるっ」って鳴き声が聞こえてきた。

 そっか、『天龍』と『地龍』の術で現れた二匹のドラゴン達もまだ居たんだね。

 あんな緑の光の中に居て大丈夫かな?


「ああ、そう言えば()のドラゴン様達のことをアビス様に聞けず仕舞いで御座いましたね」

「ああ、あれらはウロボロスとヨルムンガンドというドラゴンの幼生じゃ。進化すれば立派なドラゴンになるのじゃよ」

 今度は普通に教えてくれたアビスちゃん。

 二匹はドラゴンの妖精なんだね。

 アビスちゃんの中の黒雲の塊を払ったから、もう言えるようになったってことかな。


「あっ、緑の光が止まったね」

 球体に意識を向けている間に、回復ポイントのクリスタルは止まっていた。

 やっと直ったのかな?

「何故に光が溢れ続けていたので御座いましょう」

 うん。

 何かぼく達の使い方が不味かったんじゃないかな。

「おそらく、クリスタルの制御機構が壊れたのじゃな」

 ああ、やっぱり壊れてたのか。

「では、(ようや)く直ったということで、めでたく一件落着で御座いますね」

 うんうん。

 直ったんだし良かったよね。


「否、これは単にダンジョンの周囲のマナを使い尽くしたんじゃろう」

 うん?

 何やら不穏な台詞。

 周囲のマナって吸い尽くしたらどうなるんだろうね。


 その時、氷の床がぽわっと光った。

「なにこれ!?」

 光は小さな魔方陣が描き、そこから白い物体が飛び出してきた。

 これは!?


「お前ら!何やらかしとんじゃー!!」


 ぎゃーっ!

 白い物体に怒られたー!!


 とか思った途端に、今度はダンジョンの灯りが完全に消えた。

 氷の床も壁も真っ暗になった。

 回復ポイントから出ていた光だけがまだ残っていてぽわっと光っている。

 これはこれでまた綺麗だけどね。

「今度はなに!?」

 そろそろ何か起こることにお腹いっぱいな感じだよ!

 今日だけで何かとんでもんないことになってる気がしてきた。


「ああ、マナが足りとらんのにそこの氷精がワープしたからの。それでマナが完全に涸渇してダンジョンが機能停止したんじゃろ」

 そんなのは分かりきったことだと言うようなアビスちゃん。

 謎の白い物体は氷精だったんだね。

 可愛い精霊もいるもんだ。


「そっか、ダンジョンって機能停止するんだね」

 停電みたいなものなのかな。

 そう言えば、昨日は初めて行ったダンジョンが立ち入り禁止になっちゃったんだよね。

 今日は機能停止かあ…


 あれっ!?

 これじゃあ、ぼく達がトラブルメーカーみたいだよ!




デートしてたらダンジョンが機能停止するなんて困った主人公達です。


次回は氷精視点。

ただ、しばらくは奈落編と地獄編を更新する予定。



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