2日目、初めての異世界
オレンジ色の空には、謎の巨大な銀色の箱がいくつも浮かんでいる。
そして、太陽は見当たらず、なのに空そのものが明るく光ってるみたいだ。
足元は砂の地面で、それがどこまで続いていて砂漠のようだけど、ピンク色の葉のついた、電柱くらいの高さはありそうな木があちこちに生えているから枯れてるわけじゃないらしい。でも草は見当たらない。川も見当たらない。
ちょっと殺風景ではある。
っていうか、太陽がないせいか、ぼくたちや、木や、空に浮かぶ立方体にも、影というものが見当たらなかった。
アニメとかゲームみたいな、だけど現実の世界。異世界ってこういうのなんだ!
「わくわくするかい?男の子にはたまんないだろ?冒険が始ったっていう実感はさ」
山吹さんの言葉に全面同意でぼくは頷く。
「すごいです!こんな場所があったなんて!」
玄関を開けると異世界でした。そんな、有るはずの無いことが起きたっていう実感を共有したくて、ぼくは女の子にも同意を求めて「ね!」っという。
「こちにとって、今日は見るもの全てが初めて見たものだったのです。てんご様とこの気持ちを共有できたのならば嬉しく思います」
言ってることはとんでもないけど態度は冷静な人のものだった!
共有できてる気がしないけど、嬉しいのならそれでいいかな。
「さて、あんまり待たせちゃ悪いし、そろそろ行くよ」
そう言って、山吹さんは右手を上げる。
「どこにですか?」
見渡す限りに砂とピンクの木だし、歩いていけそうな範囲には何もなかった。
「ふふ、ここはね、いわゆるチュートリアルってやつなのさ。この世界に初めて来た人間に、ここがどんな場所なのかを分かってもらうためのね。言ってみれば、百聞は一見に如かず、一見は体験に如かず、ってやつさ」
なるほど、っとぼくは思った。説明より実際にやってみた方が分かりやすいよね。
「まぁ、最後のはきざしの旦那の受け売りだけどね」
ぬぬ!
父さんの言葉と聞くと反論したくなるぼくは、やっぱり反論してしまう。
「それって、父さんは説明が面倒なだけで言ってたんじゃないですか?」
山吹さんが言うと良い感じなのに、父さんと聞くと嫌な感じに聞こえる。
なんだか、裏がありそうなんだよね。
「あはは。まぁ、旦那はそういうつもりで言ったのかもね」
山吹さんは、そう言いながらも右手を上げたままだった。
何するんだろ?
すると突然、「見付けたよ!」と言って、山吹さんは上げていた腕を砂だらけの大地へと振り降ろした。
すると、地面の一角がぼこりと盛り上がり、中からピンク色の風船みたいな生物が現れた。ウサギのような耳がついてて可愛いけど、とっても怒っているように見える。
「それじゃあ、チュートリアルその一だ。この世界には、モンスターがいる!」
あれ?ひょっとして、戦ったりする感じですか!?




