四日目、デート作戦
サブタイトルはデートの作戦ではなく、デートで作戦を立てるの意。
「染め上げるってどうするの?」
それが出来るなら相性なんて関係なくなりそうだけど、どうにかすれば出来るのかな?
「『極化』すればマナを操ることができます故、オーラを無理やりにでもアビス様へと流し込めるやもしれませぬ」
ああ、昨日のあの謎の状態か…
「あれってどうやってなったんだろうね」
「ふむ。やはりあの時のテンゴクの想像通りに『天極』と『地極』という術だったのでは御座いませんか?」
「あれ? あれってジゴクが『天極』と『地極』って考えたんじゃなかったっけ?」
「はて? そう言えばテンゴクが『極化』という状態に気付いたのを受けて、こちが『天極』『地極』という術を使ったのかと想像したので御座いましたか…」
「あの状態だと意識が繋がり過ぎてて、もうどっちが考えていることかも分からない状態だったもんね」
「いや、お主らはそれを危険なことだとは思わんのか?」
アビスちゃんがちょっとだけげんなりした様子で聞いてくる。
「うーん。もうジゴクと意識が繋がるのって普通のことだと思っちゃてるかも。逆に繋がってないとちょっと足りてないような気持ちになるんだよね」
「確かに、以心伝心することの影響は未知数に御座いますが、そこは矢張り、既知ではないからというだけで否定しようとは思いませぬ。そも、以心伝心する前のこちなど、カレーライスのことを枯れ枝の煮汁の料理だと思い込んで食していたような阿呆に御座います。以心伝心で学んだことは多く、それは掛け替えのない財産とも言うべきものと…」
「おーい! 一階の敵は倒しちゃったから先行くよー!」
ジゴクの台詞が途中で撫子ちゃんの大きな声にかき消される。
ああ、いくらなんでもずっと入り口にいるのって確かに変だよね。
デートって散歩してるイメージがある。
「うん! すぐに行くよー!」
ぼくが返事をすると撫子ちゃんはシュラちゃん達の所に戻っていった。
「それじゃあ、ちょっと移動しよっか」
「承知仕り!」
「うむ。デートじゃったな」
氷精の祠の奥へと歩き出すぼく達。
ぼくとジゴクの間にアビスちゃんを挟んだままで手を繋いで歩き出す。
アビスちゃんだけ背が低いから、なんだか親子みたいだ。
いや、流石に小学生のぼくが親には見えないか。
「えっと、何の話しだっけ」
枯れ枝カレーに話が脱線してたけど…
「『極化』する方法で御座います」
うん。
枯れ枝の話はジゴクも少し恥ずかしかったのかもしれない。
普段にはない露骨さで話をそらしてきた感じ。
「うーん。それっぽい術って覚えてないよね?」
名苻から今使える術の一覧を見てみたけど、確かに『天極』っていう術は覚えていない。
「然り、先ほども『地極』と唱えていたのですが変化は皆無で御座いました」
うん?
つまりどうしようもないんじゃ…?
「ふむ。使えんはずのスキルが使えたということなら、それじゃ。お主らの腕についとるアクセサリーじゃよ」
アビスちゃんがついっと指したのは、リプシー・マウレイからもらった宝石付きのブレスレット…
「あっ、石精の加護の効果なのかな?」
まだ覚えてないスキルが使えたのなら、石精の加護って思ってたより役に立つんじゃないかな?
「うむ。余の見立てでは、それは一日に一度だけレベルを越えたスキルを使えるようじゃな」
うん。これを見ただけで効果が分かるなんて凄いね。
「然れど、今は何も効果が御座いませんでした」
「ふむ。丸一日たたんと再使用出来んのじゃろうな。そも、お主らはスキルレベルを上げれば良いじゃろ?」
あれ、そうだね。
じゃあスキルレベルを上げちゃったら石精の加護って役に立たないのかな?
うーん。
まあ、マウプーの加護なんだし、そこまですごい効果を期待するのも変かもね。
「ではスキルのレベルを上げてみましょう」
「そうだね」
ぼく達はステータスを設定するために、一度ジョブを解除する。
その時に必殺モードも解除される。
「『ジョブ魂:天術使い』『名苻』『ステータス設定』」
これで設定画面が出てきたから、よし、天術のスキルレベルを7から最大の10にしたよ。
あと、撫子ちゃん達が先に進んでモンスターを倒してるからかレベル自体も少し上がってるね。
んっと、増えた術は、っと…
「『天龍』と、『天極』が使えるようになってる!」
『天龍』が消費MP150
『天極』は消費MPがALLってなってる。
「こちには『地龍』と『地極』の二つの術が増えておりまする」
ジゴクにも同じ系統のスキルが増えたみたいだね。
「では、これで『極化』状態になれそうだね!」
それと同時にマウプーの加護が意味をなくしてしまったけどね!
いや、宝石は綺麗なんだけどさ。
「然れど、気になるのはこの消費MPで御座います」
うん。
消費MPがALLってなってるね。
オールってことだよね。
「昨日も『極化』の後はMPがなくなってたもんね」
「然り。然し、MPとは無くなると戦闘不能な状態になるのでは御座いませんでしたか?」
「あっ! そう言えばMPってHPも兼ねてるんだったね!」
「えいちぴい?」
「ああ、体力とか生命力っていう感じのやつだよ」
「ふむ。それはシールドとMPの両方が尽きた場合じゃな。普通はダメージを受けるとシールドから消費される故、滅多にMPが先に尽きることはないのじゃがな」
ああ、じゃあ『天極』や『地極』を使うとMPが0でシールドだけが残ってる状態になるんだね。
「術士系統のジョブにはMP切れは致命的な状態じゃからな。滅多なことでは使わん方が良いじゃろうな」
ぼく達の場合は二人揃って無力になっちゃうわけで、その状態で新しい敵とか出てきたら確かに致命的だね。
昨日はたまたま大鬼店長が助けてくれたけど、今度は敵の増援が現れるってのも有り得ることだ。
「うーん。『極化』で以心伝心を試すのは回復ポイントに着いてからにしようか」
「それが懸命で御座いますね」
そして、ぼく達は回復ポイントを目指すのだった。
ぼくとしては『天龍』っていう術も早く試してみたいしね!
格好良いドラゴンを召喚する術だったら良いんだけど、術の説明が『天を結ぶ龍』っていう一言だけなんだよね。
うん。
気になっちゃうよね!




