四日目、エレクト&タクト
なんと、不審者二人の呼び方を、スーツ姿にするか背広姿にするか悩んでいる間に一週間が過ぎていたようです(/ロ゜)/
とりあえず、背広姿で書いてます。
突然に現れた背広姿の男女二人。
セクトさんとファクトさんの関係者のような気がするけど、実際には何者何だろうね?
「…………」
背広の女性がごにょごにょと喋っている。
「エレクト、君の声は小さい。拡声フィルターを使ってくれないか?」
背広姿の男性の方ははっきりとよく通る声だね。
「…………」
エレクトさん、かな。
女性の方がまたごにょごにょと言いながら、眼鏡をくいっとする。
「タクトが集音機能を使うべき。どうして私が合わせないといけないの?」
今度ははっきりと聞こえた。
拡声フィルターっていうのを使ったんだろうか?
ぱりっとした背広姿の上に眼鏡できりっとしてるのに喋り方は気だるい感じだね。
「彼らは我々のように多機能ではない。私ではなく、そこの坊や達に合わせるべきだろう」
「そう。面倒ね…」
タクトさん、か。
自分達のことを多機能とかいう人もけっこう変かもしれない。
ぼく達が怪しい大人達を前にして、ことの成り行きを見守っている時だった。
「あんた達なんなの! ストーカー!?」
不条理な出来事には叫ばずにいられない。
不審な大人には食ってかかる。
時々だけど狂犬モードになる正義感の強い撫子ちゃん。
「ストーカーって、何…?」
だけどエレクトさんはマイペースを崩さずに、気だるい感じでタクトさんに聞いている。
「そういうモンスターが居たはずだ、我々に似ているかどうかのデータは残念ながらない」
おっと、タクトさんの方もしっかりしてそうでけっこう天然なのかも…
「ああ、面倒だわ。 用事も終ったんだし帰りましょう?」
えーっ?
もう帰るって何がしたくて出てきたんだろ。
ファクトさん達も身代漫画を回収に来てたっていうよく分からない人達だったけど、今度の二人は更に意味が分からないね。
「それもそうだな。ストーカーとやらと我々の類似点には興味があるが、確かにやるべきことは最早ない」
うん、本当に帰っちゃいそうだ。
撫子ちゃんもぽかんとした表情で呆れてる。
何しに来たんだよって言わないのは帰ってもらった方が嬉しいから、かな。
気持ちは分かるけど、用事っていうのが何だったのかも気になるんだよね。
でも、帰ってくれるなら止める程の理由はやっぱりない。
「待つのじゃ!」
だけど、帰ってくれそうな二人を呼び止めたのはアビスちゃんだった。
怪訝そうな顔になる背広の二人。
いや、その表情はこっちも浮かべたいよね。
いったい何しにきたんですか?って背広の二人に聞きたい。
「お主達は何者なのじゃ!」
アビスちゃんが背広の二人にもっともなことを尋ねる。
「先程、銀髪の少年が何やら言っていただろう? それのエレクトとタクトだよ」
「うん。あとは少年に聞いてね」
「なっ!?」
ここでぼくに押し付けるとか本当に適当な二人だね!
って思ってる間に背広の二人は足元から消えてしまった。
えーっ!?
本当に帰っちゃったよ!
「さあて、後はテンゴクに聞かなきゃね。あの不審者だか犯罪者もどきの二人はいったい何だったのよ?」
撫子ちゃんがぼくにはしっかりと問い詰めに来る。
ぼくも良く分かってないし説明は難しそうだ…
「うーん、昨日だけどセクトさんとファクトさんっていう二人がね…。うーんと、それは本名じゃなくて所属してる組織の名前らしいんだけど…。えっと、ぼくがジゴクを拐った時に貰ったってことになってる身代漫画っていうのが…。 えっと、身代漫画っていうのは身代金の代わりに入ってたパラパラ漫画で…」
「ちょっと意味わかんないんだけど!」
「ですよねー」
って、何故か撫子ちゃんに対して心の中で敬語になっちゃうのは父さん絡みの出来事っぽいからだね。
父さんが関係してることで父さんが悪くないわけがないからさ、ついつい卑屈になっちゃうみたい。
「ふむ。ここはこちが参謀として御説明をば…」
おおう、どうして参謀として説明することになるのかは分からないけど、きっとジゴクならぼくよりも理路整然とした説明をしてくれるに違いない。
「良いけど? でもね、まったく何も事情を知らない人にもはっきりと理解できるように説明しなさいよね!」
ハードル高いね。
とんでも事案を説明するのに分かりやすさまで求められるのって辛い。
ジゴクも「ふむ」と考えこむ。
だけどそれは一瞬だけだった。
「では、あれを参考に致しましょう…」と呟くと、すぐに自信満々という表情で撫子ちゃんに向き合った。
何だか凄く頼もしいよ!
そしてジゴクが説明してくれたところによると…
一つ、『時空間及び異世界転移管理機構』なる組織在り、通称を『ファクト』という。
一つ、『時空間及び異世界転生管理機構』なる組織在り、通称を『セクト』という。
一つ、昨日、『ファクト』と『セクト』よりエージェントが来襲せり『身代漫画』に書かれた極秘文書を回収された。
一つ、今回の不審者二名は『エレクト』と『タクト』なる機関の者である公算が高い。
一つ、不審者の目的は不明である。
「以上で御座います。確かな情報は少なく申し訳なく御座います」
うん。
ぼくより簡潔な説明だったのは間違いない。
「結局は不審者ってことね。その組織名も胡散臭すぎるでしょ」
そう。
結局のところは胡散臭い人達なんだよね。
だけど、それを聞いたアビスちゃんが何故だか項垂れている。
何か心当たりがあったのか、ずんっと考え込んでいるみたい。
そして、胡散臭い以外の情報はないままに、ぼく達は氷精の祠へと到着した。
これからデートなのにアビスちゃんの元気がなくなっている。
どうしようね?
どうしましょうね?




