四日目、氷精の祠への道中、パーティーを組もう
物語は冒険者ギルド経った後のテンゴク視点に戻ります。
氷精の祠に行く前に、ウガリットの街の道具屋で準備をしてきた。
とはいっても、買ったのは防寒着だけだ。
いや、支払いは撫子ちゃんがしてくれたんだけどね。
今度返してくれれば良いらしい。ありがたいけど取り立てはしっかりしてそうだ。
買い物のついでに回復薬を補充しておく。
なんといっても普通の消耗品はただ当然で、なんとMPと交換できるんだね。
プールMPとかっていう自分の経験値にできない余分なマナが、レベルに応じた量だけあるらしい。
道具屋では、それとアイテムを交換してアイテムボックスに入れとけるみたいで…
うん、ぼくにもどこからともなく回復薬を取り出すことが出来た。
仕組みがよく分からないけど、便利なのは間違いない。
「それじゃあ、あとは氷精の祠に行くだけね」
ああ、これからデートなんだ…
ちょっと緊張してきたよ。
「今の間にパーティー組んどきませんか?」
「ああ、どうする? デート組とボディーガード組に別れとこっか?」
シュラちゃんと撫子ちゃんでパーティーの組み方の相談だね。
守って貰う側のぼく達は守ってくれる側の撫子ちゃん達のやり易い方法でお任せすることにした。
「ちょうど6人だし1つのパーティーで良いんじゃないですか?」
パーティーは最大で6人らしい。
そういえばアビスちゃんってなんのジョブなんだろう。
青磁くんって後衛になるのかな?
前に立って戦えるのが二人だけだとちょっとバランス悪いかも…
「ん、ああ、別に良いわよ。なんていうかほのぼのとデートしてる奴らにも経験値が入るとか嫌だなっていう小さいこと考えちゃってた。ごめんごめん」
うう、確かに遊んでるみたいなものなのに経験値まで貰うのは悪いような…
「あ、いえ、確かにちょっと狡い気がしてきましたけど…」
シュラちゃんがそう思うのも無理はないよね。
「ああー、良いの良いの。シュラちゃんはそのまま天使の心を持ってるエンジェルシュラちゃんで居続けて欲しいから今のはなしね。皆でパーティー組みましょ」
少し焦ったように意見を変える撫子ちゃん。
理想のぼく(キザなやつ)が居るように、理想のシュラちゃんっていうのも居るようだ。
確かにね、ぼくもシュラちゃんは仲間思いの損得で物事を考えない優しいシュラちゃんが良いなって思ってしまう。
「天使って何ですか?エンジェルってモンスターですよね?」
シュラちゃんの常識には天使ってものがないようだ。
天使って宗教的なものだからこっちの世界にはそういう概念がないのかな…
だけどエンジェルってモンスターはいるみたいで…
あれっ、
「シュラちゃんって悪魔は知ってるんだよね?」
神か悪魔かなんとやらっていう変な名前の本があるって言ってたよね。
「はい。悪魔ってとても悪どいモンスターだっていう話です。地の底の底にあるっていうダンジョンに悪魔の王が住んでるんですよね」
「今では珍しい天然ダンジョンの中の有名処じゃな。もっとも、既に攻略済みでダンジョンというよりただの観光地じゃがの」
「えっ? そうなんですか?」
小さなアビスちゃんに敬語になってるシュラちゃん。
「うむ。精神攻撃への耐性さえ付けておればぬるま湯みたいなダンジョンなのじゃ。ある程度のレベルがあればそれこそ温泉みたいなものじゃな」
天然ダンジョン、観光地、温泉、悪魔…
何だか入場料とかとってそうだね。
「へーえ、本当に物知りなんですね」
「うむ。知識だけなら誰にも負けんよ」
凄い自信のアビスちゃん。
「今となっては、本当に知っておるだけじゃがの」
だけど、少しだけ寂しそうなのは何でだろう。
「まあ、天使って言ったら優しい人とかそんな感じよね。清くて正しいっていうイメージかな」
「ついでに、何故だか天使には金髪が多いようなイメージもあるからシュラちゃんにぴったりだね」
「いえ、私そんな清くて正しいだなんてとてもとても…」
謙遜するシュラちゃん。
「ですが、エンジェルシュラちゃんっていうのは嬉しいですね。翼の生えたモンスターの中でも最強格の種族名で呼んでもらえるのは、『翼』を使って戦う私にとっては光栄です。そう呼ばれるのに相応しい強さになりたいです!」
テンゴクと呼ばれるぼくとしては、エンジェルシュラちゃんなら仲間が増えるように思えなくもない。
「天国に天使が住んでるって地球では言われてるし、シュラちゃんは地霊より天魔の方が似合ってるのかもね」
ぼくが何気なく言うと、シュラちゃん以外の皆が少しびっくりしていた。
あれ?
「そうなんですか? そういえば、契約ってまだでしたね」
シュラちゃんだけが、地霊と天魔って悩みますねっというふうに考えこんだけど…
「いやいや、ちょっと待ちなさいよテンゴク!」
撫子ちゃんが凄い剣幕でぼくを止める。
何か失敗したんだろうか…
「どうしたの?」
「いや、どうしたのじゃないでしょうが! これからデートって時に他の女の子を口説くなんてありえないわよ!」
ええー!?
今のってそういう意味になっちゃうのー!?
「ええー!? 今のってそういう意味だったんですかー!?」
シュラちゃんがぼくの頭のなかの台詞を代弁してくれた。
あれ?
以心伝心してる?
いや、そんなはずはないよね。
「違うよ!そんなんじゃなくてさ! 天使なら天国かなっていう駄洒落的なやつだよ!」
「ああ!駄洒落的なやつですよね! もーう、びっくりしちゃうじゃないですか撫子お姉ちゃん!」
良かった。
シュラちゃんが怒ってくれたら撫子ちゃんも謝ってくれるかもしれない。
だけど撫子ちゃんはにんまりとして…
「ふーん。その反応は満更でもないみたいね」
なんてことをシュラちゃんに言うんだ!
「なんと!シュララバ様もデートに加わるのであればこれは強敵に御座います!」
「うむう。今からでも余も可愛らしい振る舞いをして対抗するべきか…」
二人ともとっても動揺してる。
だけど、シュラちゃんだけは真っ赤な顔でぷるぷる震えてる。
照れてる?
いや、これはそれだけじゃなくて…
「しませんよ! 私はテンゴクさんとジゴクちゃんの二人にラブラブカップルになって欲しいんです!変なこと言わないでください!」
ああ、
シュラちゃんがマジ切れみたいだ…
いやあ、今回で氷精の祠についてる予定だったんですよね。
エンジェルシュラちゃんっていう何気ない一言から、どうしてこうなったんでしょう?
男の子キャラがもう一人居れば良いんですが、出てくるのはまだ少し先です。
青磁くん?
はい、勿論撮ってますよ。




