メルシエとマウプーのお喋り
テンゴク達が立ち去った後のギルド内での会話です。
ウガリットの街のお喋りギルドマスターのメルシエさんと、元精霊のお喋り天魔リプシー・マウレイの会話です。
はい、会話しかないです。
「もーう信じられないわよ! テンゴクちゃんがあの巫女様に特別扱いされてるって信じられる!? 信じられないわよね! だけど信じてリプシーちゃん! 」
「あははのはははのはははははっ!信じるもなにも疑いの余地がないってもんだよメルシエちゃーん!」
「まあ! こんなにも信じがたい情報をそんなにもあっさり信じるなんてびっくりだわ。ひょっとしてリプシーちゃんも何かを知ってるのかしら?」
「おおっと、これは鋭い洞察力だよ。リプシー・マウレイもたじたじだあ。ギルドで椅子を温め続けてるメルシエちゃんがこっそりと情報通なのも頷けちゃうよ!」
「うふふ。お世辞は結構よ。っていうか半分は褒めてないわよね。まあいいけど、それで何を知ってるのかしら?」
「そう。あれはちょうど一年前の一年後の一週間前の一週間後の一日前なんだけど、テンゴクくんがぼくのダンジョンにやって来たんだよね」
「ああ、私が依頼を勧めたのよ」
「おおっと、それは感謝に感激を込めて贈りたいくらいだよ。ありがとメルシエちゃーん!」
「あそこのダンジョンもたまには風を通しとかないといけないものね。それで、テンゴクちゃんが石精の祠で何をどうしてリプシーちゃんを使い魔にしちゃったのかしら?」
「そんなの小事さメルシエちゃん。小事の前に大事を言うけど驚かないでよね。テンゴクくんってばさ、実は…」
「テンゴクちゃんが、実は…?」
「なんと、あのワドウキザシの子どもらしいんだよ… シュラちゃん談ね」
「へえええええええっ!?」
「もうっ、驚かないでって言ったのにー」
「そんなの無理よ!吃驚が全身を支配して驚くことに全身全霊をかけてしまったわよ! たとえ吃驚に耐性を持っていても今のは耐性を無視して吃驚するレベルだったわよ!」
「だっよねー。でもテンゴクくんも異世界でのワドウキザシのことはよく知らないみたいだしさ、あんまり気にしないであげて欲しいんだよだよ。なんてったってリプシー・マウレイのマスターなわけだし、リプシー・マウレイはテンゴクくんの肩を超持っちゃいつつ贔屓しちゃってるってわけだい。わあ、マスター思いの良い精霊、改め天魔のリプシー・マウレイだね!」
「テンゴクちゃんがワドウキザシの子どもだっていってもヤマブキが一緒に居てくれたんなら大丈夫でしょ。だけど、それじゃあ昨日の騒ぎってまさか…」
「そうだよー。お察しの通りの向かい側から手を振ってる人が持ってる旗に描いてる落書きの内容よりも分かりやすかったかなー?」
「悪いけど、その喩えはさっぱり分からないわよ。だけど、さっぱり分からないものよりは断然に分かりやすかったわね。テンゴクちゃんにワドウキザシがまるで普通の親が子どもにするみたいに何か送ったんでしょ?」
「そうだよー。つまりはあれさ…」
「こっちの事情も考えず、ってやつね」
「だね。宿題とか荷物って言ってたっけなー。よくは知らないのだ!」
「宿題ってなにかしらね。宿でやるお題って意味よね?」
「そうじゃないのかなー? テンゴクくん達って昨日から宿に泊まってるみたいだし、宿で何か修行してるんじゃないかな?」
「まあ! 地球人ってそういうところ本当に忠実みたいなのよね。経験値にならないことでも嫌がらずにやるっていうか、勉強が大好きなのかしら?」
「そうだと思うよー。テンゴクくん達ってレベル差なんて関係ないって感じで戦ったりしてたからねー。なんていうか、駆け引きってやつ? 勝利条件から自分達で決めるみたいのが普通なんじゃないかな? そういうとこジゴク様は凄かったよー」
「あら、ジゴク様ってジゴクちゃんよね?」
「そうなので御座いますればー! ジゴク様にリプシー・マウレイ様だなんて呼ばれたから崇め奉られたのかと思ってちょっぴりどきどきしちゃったよ!それでつい様がついちゃったんだよねー」
「あらまあ。ジゴクちゃんと喋ったことなかったけど、そんなに丁寧な子だったのね。私もメルシエ・メルルヒルドレグダノーヴァ様って呼ばれるのかしら?」
「そんな長い名前は流石のジゴク様も呼ばないんじゃないかなー?」
「あら、もっと名前の長い人だっているのに…。 それじゃあメルメル様を勧めてみるわね!」
「それもどうだろうねー。みんなヤマブキネームで呼びあってるからさー。メルシエちゃんはヤマブキからメルシエって呼ばれてるからそれで決定だと思うよー」
「ヤマブキネームならしょうがないわね。流行りっていうのが面白かったりするのよね。ヤマブキにもメルメルを勧めてるのに一向に呼んでくれないのが残念だわ」
「リプシー・マウレイはヤマブキネームがマウプーだけどけっこう気に入ってるよー」
「あら、精霊にもヤマブキネームがついちゃうのね」
「ふふふんふふんふーん。おいらは今では天魔なのだー!」
「あらあら、そうだったわね。天魔ってなんなのかしら。あら、そう言えばジゴクちゃんが凄いって話じゃなかったかしら?」
「おろろん!そういう話だった!」
「おとなしそうな子だけど、どこが凄かったのかしら?」
「ジゴク様はねー、ずばーっと来たかと思ったら次の瞬間にはふわっとしてたりするんだよね。リプシー・マウレイが碧様に怒られるのが怖くてテンゴクくんに責任をなすりつけようと頑張ってた時も、最後はジゴク様が上手くまとめてくれちゃって頂いたので御座いましたんだよねー」
「あらまあ。そんなことをしていたの? 」
「そうなんだよー。リプシー・マウレイが消されずに済んだのもジゴク様の公正な裁きをテンゴクくんが寛大に受け入れてくれたおかげだよねー。つまりはリプシー・マウレイの愛くるしくって守ってあげたくなる可愛さがみんなの心を動かしたに違いないのだー!」
「まあ。随分な自信だけど、それはそれとして大変だったのね」
「そそそそそうそう! それはそれとして大変だったんだよー! その後もね、誰か知らないけどワールドパッシブ持ちっぽい地球人の敵と戦っちゃってたりしたしさ、まさか生き延びてるなんて思わなかったよ。でも無事で良かった!」
「さっき話してたスオウと戦ってたっていう人かしら?」
「わおわおわおわおわおっ! スオウも来てたんだ!それなら安心だねー!」
「そうね。ああっ、そうだわ。そのスオウのことを無事かどうか心配してたのよ。テンゴクちゃんが」
「げげんげっ! あんなのを心配できるならテンゴクくんは自分がワドウキザシの子どもだってことを心配した方が良いんじゃないかなって思っちゃうよ!」
「あらあら、それは言い過ぎじゃないかしら? ワドウキザシの子どもだからこそ関わりたくないって思われたりして安全かもしれないわよ。なにせ巫女様も特別扱いするくらいだもの」
「おおう!結局はそこに話が戻るってわけだね!」
「そうよ。巫女様がテンゴクちゃん達に可能な限り協力してやってくれだなんて言うんだもの。私もびっくりしちゃったわ!」
「リプシー・マウレイだってテンゴクくん達のお供になってくれって頼まれたもんね!」
「だけど精霊の権限を巫女様から奪ってるのと同じよね? そのへん大丈夫なのかしら?」
「うーん、良いんじゃない? あの碧様が気にしてないならこの世界にとって悪いことだとは思えないしさ。だって、気にしてたら真っ先にリプシー・マウレイが怒られちゃうし、気にしなくても良いんだと思うよ!」
「巫女様、また無理してないと良いんだけど…」
「ああ、それは大丈夫だよ!テンゴクくん達が自分そっくりな精霊を生み出してたからさ、あっ、天魔だったか。ちょっと生意気だけど、リプシー・マウレイよりは役に立つかも… うん、碧様の手伝いくらいは出来そうだったしその辺は大丈夫そうだったよー!」
「なによそれ! 巫女様どころか神様でも自由に精霊を生み出すなんてことは出来なかったわよ! ?」
「ううううーん。ちゃんと精霊みたいなマナマナボディーにしっかりとした魂まで入ってたし、ゴーレムでも分身でもない精霊としか言い様のない存在だったんだよねー」
「人工精霊って以前に誰かが研究して大失敗してたわよね。ジョブ魂から精霊を造り出そうとしたらマナが暴走しちゃったやつ」
「ああー、あれもワドウキザシじゃないかな? よく知らないけどさ」
「きっとそうよね。他にそんなことする人は居ないでしょうからね。確か、精霊は神が神となる過程で削ぎ落とされた余分なマナから生まれたのよね?元精霊のリプシーちゃん」
「はいはーい。元精霊のリプシー・マウレイがお答えしまーす! 精霊は元々は原初のマナが固まってってってってってってってヘケトルトードの卵みたいになったあと、今から神になりますっていうときに神になりきれなかった余分な属性が集まって出来たマナの淀みだったんだよね。大部分のそれはモンスターになっていったんだけど、一部には神の特性が受け継がれてるところがあってさ、それが精霊の元になったんだよ」
「あら、流石に詳しいのね」
「半分は想像だけどね!」
「へーえ、それでテンゴクちゃん達ってどうやって精霊だか天魔っていうのを作っちゃったのかしら?」
「うーん、夢の中で何かあったみたいだよ。それまではテンゴクくんは一人しか居なかったんだよね」
「夢の世界は精霊の領域だものね。あとはこの街の守護者様も夢に関係する能力が使えるみたいだけど…」
「ああー、守護者のスキルで夢の世界に皆で集まってたのかもねー。そういえばあの夢ってミルチャンの夢っぽかったかもなー。うんうん、間違いないかもかもだよだよー!」
「それじゃあ、守護者様とテンゴクちゃんとジゴクちゃんのそれぞれの能力で精霊を生み出したってことかしらね」
「リプシー・マウレイが精霊から天魔になっちゃうくらいだし、テンゴクくんの『天魔契約』っていうスキルに何か秘密があるのかもね!ミルチャンがマナを固めて、テンゴクくんが契約のスキルで固まったマナを精霊体に仕立てちゃうって感じじゃないかな!」
「あら、それ採用よ!それなら精霊がたくさん生まれてこの世界も安泰ね!」
「おおー!それじゃあリプシー・マウレイも今よりずっと楽が出来るかも!ちょー暇そうだけど!」
「あら、そんな世界になったらまたお話ししましょ」
「おっ、いいねいいねえー!それじゃあたくさんお喋りするためにテンゴクくん達には精霊をぽんぽん造り出してもらわないとね!」
「うふふ。ワドウキザシと地球を倒せる日も近そうね!」
「碧様を狙ってる終末論者も涙目で大人しくなったら良いなー」
「そうね。異世界の未来に祝福あれ!」
「あれあれー!」
この会話の半分は想像と妄想で出来ています。
追記1/17「一年前の一年後の一週間後の一週間前の二日目」を「一年前の一年後の一週間前の一週間後の一日前」に修正




