2日目、旅立ち
ぼくたちは「占い処 千歳」の前に居る。
山吹食堂の裏口を出てすぐにあるけれど、こんな所に占いの店があるなんて知らなかった。
見た目は普通の住宅だし、お店の裏口の前なんて通ることがなかったから気付けなくてもしょうがないけど。
でも、普通の家なのに表札には店名が書かれていて、ぼくは何とも言えない違和感を感じる。
お店だと思って入ったら「占い処?えぇ、変わった名字でしょう?」とか言われそうなくらいに普通の家だ。
山吹さんが玄関のドアを開けて中に入る。まるで自分の家みたいに、チャイムも鳴らさずに玄関から入る山吹さんに自分の家みたいに入る。おいでおいでと手招きする山吹さんに、ぼくは何だか泥棒にでもなった気分で玄関をくぐる。
女の子もぼくの後に付いて入ってくる。平然と他人の家に入るなんて心臓強いなぁ。って、今日はこの子はずっと見知らぬ場所へばかり行ってるんだよね。しかも知らない人に着いてってるし。
誘拐されて泥棒で捕まったらどうなるんだろう。いや、それでも誘拐した側で泥棒になるぼくより罪が軽いのは間違いないけど。
なんてね。ぼくは山吹さんは信頼してる。手招いてるのが父さんだった迷わず逃げるけど、山吹さんなら大丈夫に違いない。
中も普通の家だった。
っていうか異世界…?ここから行くのかな?二階の勉強机の引き出しの中に異世界への通路があったりしないよね?
ぼくが玄関のドアを閉めたのを確認すると、山吹さんが玄関に向かって叫んだ。
「梅染山吹です!鏡占いをお願いします!」
えっ!山吹さんって名字だと思ってた!店長ってお店に自分の娘の名前つけてたんだ!
ぼくが驚いていると、玄関の呼び鈴がポーンと鳴った。
「えっ、外に誰か居るの?」
ひょっとして店長かな?
「ふふ、到着した合図だよ」
そう言って山吹さんは笑って扉を開く。
外には、オレンジ色の空が広がっていた。




