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HEAVEN AND HELL  作者: despair
四日目、アビス登場
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四日目、デートの前の雑談


「そういえば、碧さんからお金を貰ってなかったね」

 三角な何かから目をそらしたいのもあって別の話題を持ち出すぼく。

「ふむ。レベルアップボーナスじゃな?」

 真っ先にアビスちゃんが話にのって来た。ぼくと一緒で、実は気まずかったのかもしれない。

「然れど、今すぐ彼処に戻るのは逆鱗に触れるようなもので御座いませんか?」

 ジゴクもしっかりのって来た。これで不穏な空気は何処かへ飛んでいった、よね?

「こちの落ち度でも御座います故、テンゴクが行くというなら覚悟を決めて向かいまする」

「それについては余も同じじゃ。必要とあればいつでも行くのじゃよ。おっかないがのう」

 不穏な空気がふっとんで、気まずい空気がやってきた。


「それじゃ、デートのついでにギルドで依頼を受けとけば良いじゃない。討伐依頼なら報酬は山分けで良いわよ?」

 撫子ちゃんの提案に皆が賛成する。

 これで気まずい空気も飛んでいった。

 さっきのアビスちゃんの情報で、撫子ちゃんはすっかりやる気になってるみたいだね。

 っていうか、デートって単語が普通に会話に出てくるようになってるけど…

「微力ながら私も撫子お姉ちゃんのお手伝いをします。テンゴクさん達はデートに集中して下さいね!」

 うん。

 普通にデートって言葉が出てる。

 ひょっとして、これがあの悪名高い夏休みデビューってやつなのかな…

 ぼくには縁のない話だと思ってたけど…

 ぼくって、今年の夏休みこそは普通に過ごして、普通に宿題して…


「あっ! 宿題もどうしよ!」

 突然に叫んじゃったぼくに視線が集まる。

 ちょっと恥ずかしいね。

「急にどうしたのよ?」

 撫子ちゃんが、まるで変な人を見るみたいな視線をぼくに向けてる。

 みるちゃん先生が消えたりしなかったら宿題についてもちゃんと相談できたのにね。

「いやあ、ぼくの夏休みの宿題を地球に置きっぱなしでさ…」

 ぼくにとっては大事な問題だった。


「ああ、あんたってどうせ毎年やってないんだし、別に今年もサボるんじゃないの?」

 撫子ちゃんがズバリと言った通り、ぼくは毎年のように夏休みの宿題をやってない。

 だからこそ、今年こそはって意気込んでるんだけど…


「先は長いんだし、まずは今日のデートをしっかりやりなさいよね」

 うーん、まあ撫子ちゃんの言うとおりかな。


「それでは、そろそろ出発しませんか?」

「うん。そうしようかな」

「はい! デートが楽しみで御座います!」

「うむ。デートが楽しみなのじゃ!」

 というわけで、ぼく達はラプトパの宿を出ることにした。


「ラプトパ・レドルテ! 良い旅を!」

 シュラちゃんのお父さんことデウリリュさんが見送ってくれた。

 けれど、宿代を心配してるのか目付きがちょっとギラってしてる、気がした。



 一先ず、デートの前に冒険者のギルドへと向かう。

 ぼく達は碧さんからお金を貰いそこねていたんだよね。

 今日の宿代を稼がないとね。

 ギルドにはお喋りなメルシエさんが居るけど、ちょっと依頼を受けたら直ぐに帰りたいなあ…


「いらっしゃい。あら、テンゴクちゃんにジゴクちゃんに、セイジくんとナデシコちゃんまで居るのね。地球人の子どもが勢揃いだわ。それに、あら? 異世界こっちの子も一人いるのね。 違う世界との交流って良いわね。これからは増えてくるのかしらね。そして…」

 メルシエさんの視線がアビスちゃんを見て一瞬止まる。

 お喋りも一瞬だけ止まる。

「まあ!この子って地球人!? それにしても神秘的で可愛いわね! 和服スタイルっていうのよね。その衣装もよく似合ってるわよ! でも地球人にしてはどこか雰囲気が違ってるような… あっ! 肉体の構成がこっちよりなのね! でも魂の気配がないし… 新種の人類なのかしら? 地球でも異世界こっちと繋がってから生まれた子どもはそれ以前とは少し変わってるって聞いたけど、その発展系なのかしら…」

 うん。一瞬だけだったね。

「ふふん。を詮索するのは勝手じゃが、余の成り立ちについてお主に言えることは無いのでな。どうせ話すのなら、もっと互いに有益な話をせんかの?」

 おおっ!

 アビスちゃんってばメルシエさんに話しかけた!

「あら、不思議ちゃんなのね。もちろん良いわよ。私はどんなお喋りでも楽しくって有意義だもの。何でも良いのよ。だから、あなたに有益な話題が何かを教えて頂戴」

「うむ。それでは氷精の祠で1日で達成できる依頼を見繕ってもらおうかの。あとは昨日の騒ぎの顛末を聞かせてはくれんか?」

 そんな一方的にお得情報を仕入れる感じなのでもお喋りって言って良いのかな?

「あら、氷精の祠ってレベルは大丈夫なのかしら?今日1日で達成までなんて急いでるのね。でも、慌てちゃだめよ。とくにボスの討伐は無理して受けない方が良いわ。だって、あそこは初心者冒険者の最初の壁って言われてるくらい厄介なのがいるんだから」

 喋りながらもメルシエさんが、依頼の一覧を提示してきた。

 お喋りしながらでも仕事は早いんだね。

 仮にもギルドマスターって名乗るだけのことはあるってことかな。

「それより、昨日の騒ぎってあれよね…」

 話題が急に変わり、途端にお喋りメルシエさんが小声になった。

 やっぱり大鬼が戦ってたのって大事だったんだよね。

 メルシエさんがひそひそと話そうとするくらいだ。

 あの後どうなったのか、ぼくも気になるところだよ。


 だけど、その後に続いた言葉は「和堂兆の小包…」だった。

 

 小声でひっそりと言わなきゃならない小包ってなんだろね。

 中身はトマトと着替えだけだったけど…


「今回もヤマブキが解決してくれたみたいで良かったけど、和堂兆がこの世界への干渉をまた始めたなんて大変よね。前はダンジョンが全て半壊した程度で済んだけど、今度はどうなることやら… 巫女様は大丈夫かしら…」

 はふうっと溜め息をつくメルシエさん。

 ダンジョンがどうこうって、確かマウプーが言ってたやつだよね。全精霊のトラウマとかなんとか…

 それに、巫女様って碧さんだよね。父さんってば碧さんにまで迷惑かけてるんだ…


 うーん…

 この世界での父さんって、想像以上に深刻な大問題みたいだよ!


 でも…

「あの時の山吹さんって、確かデコピンしただけだったような…」

 いや、深くは突っ込まないでおこう。




間が空くと書くのが大変ですね。

こまめに更新したいものです。

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