四日目、現実のテンゴク
青磁くんの再生してくれたムービーを何度か見ていて分かった。
ぼくにこの台詞はまだ早い!
台詞だけじゃなく、身振り手振りまであの大げさな感じじゃないと逆に恥ずかしいのが難易度高いよね。
それに、撫子ちゃんだって、あんな台詞は演技だから言えてるんだと思う。
でも、この期待が集まっている場で「やっぱりやめた」なんて言うのはもっと難易度高いよね。
なんらかの決断をしなきゃいけないわけだ。
今後の運命が決まるかもしれない大事な決断を…
うーん、やっぱり二人には仲良くして欲しいんだよね。
さっきのあの台詞をぼくが言うことを期待してるんだろうジゴクとアビスちゃんがこちらを見てる。
あの星のステッキがあれば目をキラキラさせてきたかもしれない。
どこか似ているけれど、何かが根本的に違っていそうなあの二人に、ぼくは何が出来るんだろう。
望まれたからって理想を描けるぼくじゃない。
そんな器用な人間になれると思い上がっちゃったら、それはもう自分を見失ってるようなものだ。
ぼくってけっこう不器用だ。
よし、そこら辺も踏まえてぼくに出来ることをしよう。
ぼくは、期待に心踊らせてそうな二人に向かい合う。
ぼくが動き出しただけで、待ってましたとでも言わんばかりに飛び付いてきそうな二人。
どうしてそんなに、ぼくに何かを期待できるのか分からないや。
けどさ、できればこの期待感を裏切らないようにしたいんだよね。
どうしたら良いんだろう。
そもそも、アビスちゃんのことはよく知らないんだけどさ…
って、そうだった。
まずは知り合わなきゃ。
よし、お互いに知り合うためにも一緒に散歩行ったりするのが良いかもね。
さっきの撫子ちゃんの感じもできるだけ取り入れるなら…
そうだ!
「ジゴク! アビスちゃん! ちょっと3人でデートしよ!」
んっ?
ぼく今なんて言った…?
真っ先にシュラちゃんが反応した。
「きゃー! テンゴクさんってば!」
なんて言いながら真っ赤にした顔をふりふりしている。
えっと、ぼくは今なんて言ったっけ…?
「テンゴク、あんたってけっこう大胆よね」
撫子ちゃんがため息混じりにからかってくる。
あれー、ぼくは今なんて言ったんだったかな…?
「テンゴクくん、骨は拾ってあげるから頑張ってね」
青磁くんが仲間を魔物の巣窟にでも送り出すみたいに心配しつつも励ましてくる。
本当に、ぼくはなんて言ったっけ…?
「「デート…」」
ジゴクとアビスちゃんが呟いた。
そうだ…!
ぼくはデートって言ったんだ!
ちょっと3人で…
デート!?
「楽しみに御座います!」
「ああ、楽しみじゃ!」
うわーい、良い笑顔だよ!




