四日目、ダンジョン立ち入り禁止につき
「石精の祠はメンテナンス中だ。立ち入り禁止だよ」
ダンジョンへの転送サービスで聞く衝撃の一言。
これはマウプーのせいに違いない。
つまり、間接的には父さんのせいだと言えなくもない。
そして、父さんに関する話題を出しちゃったぼくに責任がないとは言えないこともない。
異世界では父さんの名前を出すだけで誰かに迷惑をかけてしまうようなんだよね。
「あんた達、初めて入ったダンジョンを立ち入り禁止にするとかさ、ちょっとあり得ないでしょ」
撫子ちゃんの小言にも、はい、頭が上がらない思いでいっぱいですとも。
本当に、ダンジョンの中で父さん関係の話題を出しちゃってごめんなさい。
「それじゃあどうしよっか?」
昨日の間にもうちょっとレベルを上げとけば良かったね。
「あんた達は他に何か目的とかないの?」
「うーん、碧さんとこに行くくらいかな」
他には特に用事はないはず。
「テンゴクさん! 宿代を稼がないと今晩は泊まれませんよ!」
ああ、そう言えば…!
宿代が二人分しかないんだった!
「なによ、あんた達って自分のお金で宿に泊まってんの?」
「うん。撫子ちゃん達は違うの?」
誰かに貰ってるのかな?
「いや、普通に家帰ってるけど?」
ああっと、それはそうだよね。
「うーん、ジゴクが新世界に狙われてるからね。ぼく達はしばらく地球に帰れないんだよね」
乱堂汕圖みたいな人に襲われたせいか、地球が危ない所のような気がしてたよ。
まあ、地球で本気の大人達に襲われるよりは、どんなにレベル差があっても異世界での方が対抗できるように思う。
「そこら辺の事情はさっぱり分かんないんだけどさ。それでも、小学生が自分の宿代を稼がないといけないとかありえないでしょ!? 」
ああっ!
「ほんとだ! どうしてぼく達は自力で今日の宿代を稼ごうとしてるんだろう!?」
すっかりゲーム感覚で、宿代は自分で払うっていうのを受け入れてたけど、これが地球だったら絶対にあり得ないよね。
「でもお金が欲しいなら碧さんとこに行くのは丁度いいんじゃない? レベル10まで上がった記念に3,000屡くらい貰えたはずよ」
お、その情報は初耳だね。
しかも、今のぼく達にはけっこうな大金だよ!
「えっ、それって地球人だけの特典とかですか?」
あっ、シュラちゃんも知らないみたい。
「ああ、こっちの人って碧さんとこに行かないから、知らないだけなんじゃないの?」
碧さんって巫女として神様みたいに崇められてるっぽいもんね。
お金を下さいなんて気軽に言いに行けるような場所じゃないんだろう。
「それは畏れ多くて無理ですね。そもそも行き方を知りません」
やっぱりね。
「って、ぼく達も山吹さんに連れてってもらっただけで行き方知らないや…」
これはうっかりしてた!
「まったく、しょうがないわね。今回は私が連れてってあげるわよ」
というわけで、ぼく達はなんだかんだで面倒見の良い撫子ちゃんに、碧さんのところまで連れていってもらうことになった。
うん、これはしばらく撫子ちゃんに頭が上がらないかな!




