四日目、館の外で雑談
廃墟みたいな洋館から脱け出したぼく達。
外の空気は美味しいね。
「いやいやいや、みるちゃん先生を消しちゃったんだけどっ!?」
撫子ちゃんが取り乱してる。
珍しいね。
「街の守護者様をやっつけちゃうなんて、前代未聞ですよ…」
シュラちゃんはため息を一つ吐いて途方にくれている。
「後で怒られるかな?」
そもそもの原因らしき星のステッキが、あの変な呪文のせいでゲットできたみたいなんだけど、その呪文をぼくに教えたのって誰なんだろうね。
しかも寝てる間にって…
「あんまり考えたくないね」
うん、青磁くんに皆が同意する。
「お前らなあ、食われるよりは怒られた方がましだって」
「そうよ。あんな怖いことってそうないわよ!」
小さくなったヘブンとヘル。
うーん、二人とも可愛い。
まるで誰かがデザインしたみたいにしっかりとデフォルメされてるんだよね。
「おい、ちゃんと聞いてんのかよ?」
「精神を分けあった仲なのに、まさか他人事だと思ってるんじゃないでしょうね?」
「うわっ、ちょっと心が離れたらもう他人扱いされるのかよ!? 酷いっつうか薄情が過ぎるんじゃねえの?」
「こんなことになるなら私が主人格になってテンゴクを乗っ取れば良かった!」
「おおっ!それ良いんじゃねえの? ツンデレテンゴクなんてすげえ罰ゲームだぜ!」
「誰がツンデレでっ! 誰が罰ゲームじゃあ!」
「うげえっ! って痛くねえ! ぎゃははっ!体が小さくなって攻撃力が消えちゃったんじゃねえの?」
「うそっ? ああっ、レベルが1になってる!」
うーん…
わいわいと騒ぐヘブンとヘルだけど…
「ごめん。チビキャラに何を言われても可愛いくて和んじゃうよ」
子犬と子猫が騒いでるような感じ。
「ああっ、そんなのありかよ!?」
「けっきょく外見なのね…」
ああ、ショックを受けてるところを見てると可哀想になるね。
「ふむ、あれほど生意気だったヘブンが確かに可愛く見えまする。ヘルも、これなら嫌がる素振りにも危険がなく、問答無用で可愛がることも可能で御座いますね」
ぬいぐるみたいにヘルを抱っこするジゴクちゃん。
「ちょっと、何すんのよ!」
ばたばたと嫌がってるような素振りをしつつ、顔は嬉しそうなヘル。
うんうん、めでたしめでたし。
「それにしても、そいつらって召喚されてない時はどこに居るのよ?」
ああ、言われてみると確かに気になる。
「あん? よくわかんねえな…」
「何かしてたような気も…」
「んー、よくわかんねえな…」
どうやら分からないらしい。
夢の世界から帰ってきてから召喚されるまでの間に、ヘブンとヘルはどこにいたんだろうね。
「なによ。はっきりしないわね。もういいわよ。ああ、そうだ。私達はこれからレベル上げ行くけどあんた達も来る?」
呆れちゃった撫子ちゃん。
でも、レベル上げに誘ってくれたね。
「撫子ちゃん達はレベルどのくらいなの?」
一年前から異世界に来てたのなら、きっとぼく達よりはレベル高いよね。
「二人とも36よ。あんた達は?」
「ぼくとジゴクが18で、シュラちゃんが20だよ」
まるで年齢の話みたいでちょっと面白い。
「二人とも、こっちに来たばっかりでどうしてそんなに高いのよ? っていうか異世界人のシュラちゃんがレベル20って低すぎない?」
「ううっ、私はしばらく宿屋に引ここもっていたので…」
シュラちゃんが申しわけなさそうに言う。
「ああ、いや聞いた私が悪かったわね…」
撫子ちゃんも申しわけなさそうになる。
「いえ、昨日まではレベル10だったので、今日はまだ良かったです」
てへへっと笑うシュラちゃん。
「なにそれ!? 一日でそんなに上がるってどんだけ頑張ったのよ? 寄生プレイ?」
おっ、レベルの急成長に撫子ちゃんが食いついた。
考えてみれば、一時間程度でレベルが倍になったんだよね。
うっかりマウプーには感謝しとこう。
「石精の祠でゴブリンの群れが出てるんだよね。階段の登り降りが多いけどレベルはすぐに上がったよ」
そして、ぼく達は撫子ちゃん達も連れて石精の祠に行くことになった。
うん、碧さんとこ行くのは明日にしようっと。
この小説の奈落編と地獄編を近日公開予定。




