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HEAVEN AND HELL  作者: despair
四日目、魔女の館
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四日目、煌めく瞳と教師の本懐


「ちょっと、お二人ともそんなキラキラした眼で見ないでくださいよ。恥ずかしいですから…」


 おっと、シュラちゃんを困らせてしまったね。

 ぼくとジゴクはキラキラの眼を元に戻す。


「ちょっと、そのキラキラした眼はなんなの?」


 あれ?

 そういえば、眼ってこんなにキラキラしなかったような…

「よく分からないけど、術を使うのと同じ感じで眼をキラキラさせられるみたい」

 ジゴクちゃんもできてたんだよね。

「はあ? って出来るわね…」

 おっと、撫子ちゃんがキラキラ(まなこ)になった。

 ううん、すっごいキラキラしてる…!


「あっ、地球人だから眼がキラキラにできるっていうわけじゃなかったんですね。私も出来るみたいです」

 シュラちゃんもキラキラ眼になっちゃったね。

 でも、地球人は眼をキラキラできるって誤解しちゃうのは素直過ぎるよね。


「えーっと、ぼくもできてるよね? これ、その星のステッキが原因じゃないかな?」

 青磁くんもキラキラ眼になる。

 少女漫画のヒロインみたいな眼は男子にはちょっと合わない…

 って、ぼくもこんな感じなのか…


 ぼくは、手に持っているステッキを一振りする。

 おもちゃ売り場かパーティーグッズ売り場を探せば何本も置いてそうなチープなデザインの星のステッキだ。

「キラキラした眼になるのがステッキの効果ってこと?」

 そんな効果はいらないよね。

 いや、いらないを通り越して迷惑だよね。

「まあ、それくらいしか無さそうね」

「うん、これも含めてみるちゃん先生に聞いてみよう」

 みんなが普通の眼に戻る。

 眼がキラキラしてる人に囲まれてるとかなり落ち着かない感じがしたけど、少女漫画の世界で皆が恋に落ちちゃったりするのって、眼がキラキラしてるせいなのかもしれないね。

 皆が常にキラキラ眼だから落ち着かなくてドキドキしちゃうんじゃないだろうか。

 それを恋だと思い込んじゃう、いわゆる一種の吊り橋効果みたいな…

 いや、そんなわけないか。


 玄関先の広間はすぐそこだ。

 斧を引きずる音が聞こえなかったけど、みるちゃん先生はそこに居るみたいだね。


「あら、目覚めの気分はどうかしら?」

 みるちゃん先生の優しそうな声が、廃墟の洋館の中に響く。

「おかげさまでばっちりです」

「御厚意まことに有り難う御座いました」

 考えてみると、みるちゃん先生がいなかったら結構なピンチだったのかもしれないね。

 少なくとも、ヘブンとヘルの二人と上手くやっていけそうなのはみるちゃん先生のおかげだ。


「二人が元気になって先生も嬉しいです。そうだ、あの二人がこっちの世界でどうなってるのか見せて下さい」

 あの二人って、ヘブンとヘルだよね。

 夢の世界から出たから何か変わってるのかな?

 ぼくはジゴクと顔を見合わす。

「呼んでみよう」

「はい」


「『天魔召喚:ヘル』!」

「『地霊召喚:ヘブン』!」


 そしてポポンと空中に現れた二人は…

「うわっ、なんだこれっ!?」

「ちょっと、何がどうしてこうなるのよ!?」

 ぼく達の腰くらいの高さに、顔くらいの大きさしかない二人が浮かんでいる。

 とっても小さかった。

 しかも2頭身くらい!

 かなり可愛い!

「うふふ、可愛らしいですね。食べれそうですね。どうやら、彼らは精霊よりの存在になってるみたいです。興味深いですね。美味しそうですね」

 なんで半分は食欲が占めてるの!?

 ヘブンとヘルが怯えたみたいにぼく達の後ろに隠れる。

 そりゃあ、人から食欲を向けられたら怖くても無理ないか。

 今の台詞も「どうやら、彼らは精霊よりの存在になってるみたいです」っていうだけだったら尊敬できる先生なんだけどね。


「あらあら、もっと近くで見たいんですけど、そのステッキには近付けませんね」

 みるちゃん先生が本当に残念そうに、星のステッキをじとりと見ながら言う。


「えっと、これって何ですか?」

 そう言って、ぼくは眼をキラキラさせて先生の方を見る。

 

「眼がキラキラするのって意味あるの?」

 そう言って、撫子ちゃんが眼をキラキラさせて先生の方を見る。


「面白いよねー」

 そう言って、青磁くんが眼をキラキラさせて先生の方を見る。


「ちょっと照れますよね」

 そう言って、シュラちゃんが眼をキラキラさせて先生の方を見る。


「然り、尊敬の眼差しには丁度良いので御座います」

 そう言って、ジゴクが先生の方を見る。


「うふふ、魔女の館の中だとほとんど無敵の先生なんですけど、実は一つだけ弱点があるんです。そして、マジカルステッキはそれを作り出すことができるの。その、先生の弱点っていうのが…」

 先生の体からキラキラとした金色の粒子がこぼれだしている。

「無垢なる少年少女のキラキラした瞳なの! 」

 先生の体全体がキラキラしてきて、うっすらと透けてきている。

「だって、それに勝っちゃったら先生として最低でしょ?どうせ消えちゃうなら素敵なもので消されたいっていうか、これが見れるならいっそ消されちゃっても本望よね。尊くて、先生はうっとりしちゃいます」

 先生の体がほとんど金色の粒子に変わっている。

「そうだわ! どうせ消えちゃうなら…」

 金色の粒子に変わり果てた先生の姿が宙に浮かんでいく。

「その可愛い妖精達に、全力で飛びかかって消えちゃいたい!」

 そして、先生がヘブンとヘルの方に突進してきて…


 ぱんっと弾けて…

 さらさらさらっと消えていった…

 なんだったの!?


「消えちゃったわね…」

 消えちゃったね…

「怖かったんだけど…」

 怖かったね…

「いやあ、俺達もう食われないんだよな?」

 そう願いたい。

「みるちゃん先生はどうなったのでしょうか?」

 考えたくないけど、きっと無事だよね。

「あれが、先生という者の覚悟なので御座いますね」

 それは違うと思うけど、所々は立派な先生っぽいね。

「今のも、撮っといたけど…」

 それは消しといた方が良いと思う。


 ぎいぃっ、って玄関の扉が開いた。

「あっ、出れるみたいだね」


 そうして、ぼく達は少しだけ早足で外に出るのだった。



この世界のルールに乗っ取って、みるちゃん先生は最後にセーブした場所で復活しています。

追記:おまけ資料に『みるちゃん先生の天職』の情報を追加しました。

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