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HEAVEN AND HELL  作者: despair
四日目、魔女の館
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四日目、夢の世界の後の雑談


 夢の世界ががらがらと崩れてしまった。

 強制的に目が覚めてしまったぼく達。

 気付けばベッドの上に居たけど、眠る前にはなかったステッキが枕元に置いてあった。

 夢の世界でみるちゃん先生が使ってたやつだね。

 うん、謎の言葉で、謎の現象が起きて、夢の世界が崩壊した謎…

 うーん、あれってぼくのせいなのかな…?


「テンゴク、今朝の目覚めにご機嫌で口ずさんでいた歌にあのような効果があるとは驚きでした。あれは何だったので御座いますか?」

 ああ、ジゴクと手を繋いだまま寝ていたんだよね。

「うん、昨日の夢の中で先生に聞いたんだと思ってたんだけど、ぼくにもよく分からないね」

「こちはテンゴクの創作であると思っておりましたが、おそらく、このステッキを得るための合言葉だったので御座いましょう」

 うーん、変なの!

「そうだ、もう体調は大丈夫!?」

「はい、お陰さまで絶好調に御座います。なんとも清々しきこの心持ち。なるほど、心が軽いとはこのことで御座いましょう」

 うん、何の憂いも無さそうなジゴクの笑顔。

 ぼくもついつい微笑んでしまう。


「はいはい、ラブラブなのは良いけどそろそろ二人の世界から出て来てねー?」


 ぎゃおっ!

 皆がにっこりとこっちを見てる。

 いや、一人だけにやにやって感じだけどね。


「こうもみんなから見られてるのに、ちっとも気付かないってどういうことなの?」

 えーっ…

 確かに気付かなかったけど…

 でも、どういうことなのかぼくにも分からない。

「撫子様、ここは二人の世界では御座いませぬゆえ、こちがテンゴクと相思相愛で互いに夢中のラブラブカップルだったとしても、この場において遠慮は不要で御座います」

 そりゃそうだ。

「うん、でもあんまり二人きりみたいに振る舞われるとこっちが辛いからね。主にシュラちゃんが」

 それもそうだ…

 って、シュラちゃんが激しく横に首を振っている。

「そんなことはないです! 私、お二人の逢瀬を見てると幸せになれるっていうか、みるちゃん先生が言う所の大好物!ってやつなんです!」

 うーん、先生から変な影響を受けてないかちょっと心配になっちゃうね。

「シュラちゃん、あの先生から変な影響を受けないほうが良いわよ?」

 撫子ちゃんも同じ意見らしい。

「えっと、どこが変なのですか?」

 うう、シュラちゃんの純粋な眼差しが、みるちゃん先生が「大好物」って言ってる時の汚れた大人の眼差しになっちゃったら嫌だよね。

 でも、それをどう伝えたら良いんだろう。

「まあ、地球にも色々あるのよ。こっちではあんまり気にしなくても良いわね。それより、そろそろここから出ない?」

 おおっ、撫子ちゃんが軽くはぐらかして、そして話を逸らしたよ。

 いや、そっちが今の本筋かな。

「うん、みるちゃん先生も夢の世界が崩れてびっくりしてたし、様子を見に行こうかな」


 そして部屋を出たぼく達は、廃墟みたいな洋館の中に戻っていく。

「それにしても、ここってなんなのかな?」

 みるちゃん先生の趣味とは違うよね。

 

「みるちゃん先生の異世界での家でしょ? 魔女の館よね。そう思っとくべきなのよ。主に自分の身の安全のために。」

 思考停止したように魔女の館と言い張る撫子ちゃん。

「そうだよー。ここは魔女の館だよ。それ以外には考えられないよね。主に自分の身の安全のために。」

 思考停止したように魔女の館と言い張る青磁くん。

 うん、撫子ちゃんと青磁くんが自分の見に危険を感じてしまう館なのは間違いなさそうだね。


「えっと、ここはウガリットの街の、守護者の、魔女様の、テリトリーで、魔女の館って呼ばれてます」

 シュラちゃんのは異世界イツ・ルヒの方で知られている基本情報って感じかな。

 地球のホラー映画とかを知るはずもないシュラちゃんの…

「あっ、シュラちゃんってホラー映画って知ってる?」

 知らないって決め付けて誤解しちゃってたら悪いよね。

「えっと、この館に入ったときにテンゴクさん達が言ってたやつですよね。地球の挨拶でしょうか?」

 そうそう、玄関くぐって「ホラー映画か!」って言うのが地球の…

「って、違うよ!」

 普通の家でそんな失礼な挨拶したら追い出されちゃうよね。

「あれは、こちとテンゴクの決め台詞に御座います。主に恐怖体験をした時に発動いたします」

 それもちょっと違うかも…

「なるほど、守護者様の屋敷って私も最初は緊張しちゃってましたし、怖いくらいの感じがしちゃってもしょうがないですよね」

 ここらへんの感覚って異世界イツ・ルヒの人の普通なのかな?

「シュラちゃんってこの館は怖くないの?」

 散らばる瓦礫

 揺らめく蝋燭の灯り

 腐臭こそ漂っていないものの、鉄錆と乾いた石の無機質な匂いが立ち込めている。

 人骨が転がっててもおかしくないよね。

 ぼくは控えめに言っても怖い。

 大げさに言うと「ヤバイよここ!絶対ヤバイって!早く逃げよう!」って言いたいくらいに怖い。

 そこらへん、シュラちゃんはどう思ってるんだろうね。


「えっと、ちょっと散らかってるかなって思いますけど…」


 うーん、勇者か!

 肝試しとかやるときには是非ともシュラちゃんと一緒のペアになりたいね。

 どんな墓場でも果敢に素通りできそうだよ。


「なんと! テンゴクが尊敬の眼差しでシュララバ様を見つめておりまする…」

 あれ、何故かジゴクがショックを受けている。

 ショックのあまりにシュラちゃんからシュララバ様っていう呼び方に戻っちゃってるよ。

「えっと、シュラちゃんが居たらこんな場所でも怖くないなあって思ってさ」

 ぼくは正直に思ってることをそのままに話す。

 嘘も誤魔化しも、どこかでジゴクと以心伝心した時に伝わっちゃうから意味ないもんね。

「なるほど、それはこちも尊敬の眼差しでシュララバ様を見つめておくべきで御座いましたね」

 ジゴクの同意を得られて良かった。


 そして、ぼく達はキラキラとした尊敬の眼差しでシュラちゃんを見詰めるのでありました、っと。




次回でみるちゃん邸から脱出します。

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