四日目、名付けジゴク
闇天国と闇地獄ちゃんと『契約』するつもりのぼくだけど、二人はそこまで乗り気じゃないみたい。
「いや、ちょっと待てって。 もしも変な影響が出たらどうすんだよ?」
人のことだと心配性な闇天国。
「たいていのことなら受け入れるよ」
夢の世界でしか自由に動けない人格でしかないなんて言ってみたとしても、このままじゃ人が二人も消えちゃうわけだしね。
それよりも大きい影響って早々ないんじゃないかな。
「ちょっとは考えたのかよ? 例えば、俺達が居なくなった意識の、その隙間の中にもっと別の、とんでもない人格が出来ちまったりとかよ。そいつが犯罪者だったりしたらどうすんだよ?」
ん…?
「どうするって言われても、それもぼく達の一部から生まれるんだから、それが犯罪者になるんなら、ぼく達がいずれ犯罪者になるかもって話だよね。そんなの、誰でも皆が等しく持っている可能性まで考えてたらさ、悩みなんか尽きないし、答えなんかだせないでしょ?」
当たり前のことだよね。
「ちっ、どうなっても知らねえぜ?」
まだ不服そうな闇天国。
これが立場が逆で闇天国の方がメインになれる人格だったら、ぼくと闇天国は逆のことを言ってる気がするね。
色んな影響を考えると納得できないぼくに、それぐらい気にすんなよって言ってる闇天国を想像するのは容易かった。
まったく、気が合うからこそ答えが合わないこともあるんだね。
「っていうかさ、どっちと契約するつもりなの? あんたと契約したら天魔ってジャンルに変わるんじゃなかったっけ? 『天魔・闇地獄』って名前は流石に嫌よ」
うーん、ぼく達はまだ小学生だし、そんな中二病の人が考えたラスボスの名前みたいなのはまだ早いよね。
少なくとも、女の子らしさは皆無だ。
「ならば、こちが闇地獄と契約いたしましょう」
ジゴクちゃんの善意の提案。
闇地獄ちゃんも『地術使い』だし、やっぱり地霊の方があうかもね。
「絶対に嫌よ!」
あれ、闇地獄ちゃんは嫌そうだね。
でも、闇天国曰くツンデレの闇地獄ちゃんだし、内心はどうなんだろ?
「地霊・闇地獄なんてお化け屋敷みたいな名前は絶対に嫌!」
おっと、本気で嫌っぽいね。
でも、わざわざダークをやみって読むからお化け屋敷っぽさが増してるような気もする。
うーん…
「って、闇地獄ちゃんは名前が可愛いかったら問題ないの?」
「無いわよ? 逆に消えなくても迷惑かけずに済みそうだし、嬉しすぎて叫びたいくらいだけど?」
それなら素直に嬉しそうにして欲しいよね。
どうして不機嫌そうなんだろう。
「んじゃあ、ツンデレちゃんで良いだろ?」
闇天国ってば、やっぱり地雷を踏むのが好きなのかもしれない。
「あんた、また蹴っ飛ばされたいの?」
ちっとも可愛くない台詞を吐きながら、闇天国を睨む闇地獄ちゃん。
「なんでだよ? 俺はケイハク、お前はツンデレ、特徴が分かりやすくて良いだろ?」
うーん、分かりやすくても呼びたくないけどね。
名前がケイハクくんだと、いくら気があって以心伝心できる間柄であっても裏切られそうな気がするのはぼくだけなのかな?
ツンデレちゃんなんて、例え本名であったとしても「誰がツンデレよ!」って言われそうだし、色んな意味で呼びたくないよ。
「然らば、ここはテンゴクに名付けてもらうのが良いでしょう。こちもそうしてジゴクと成ったので御座います」
良いアイデアっぽく言うジゴクちゃん。
ぼくは小学生で、中二病みたいな名前を考えることすら出来そうにないのに、いったいどうして二人分の名付けが出来ると思われているんだろうか。
そもそも、誰が闇天国とか闇地獄とかって名前を…
あれ…?
「闇天国と闇地獄ちゃんの名前って、みるちゃん先生がつけたんじゃないですか?」
「そうです。己の中の闇と向き合うなんて使い古されたマンネリの中のマンネリな展開ですが、やはりお約束としては外せません。王道です。正義です。そんな運命を信じて闇と付けたんですけど、こんなに仲良くなってしまったのなら改名もやむ無しですね」
よし、みるちゃん先生が何を言ってるのかは置いといて、名付けた人が改名して良いってことだし、これはいよいよ名前を考えないといけないかな…
さっきみたいな闇を闇って読むみたいな感じで何かないかな…
あっ!
「それじゃあ、闇天国が『ヘブン』で、闇地獄ちゃんが『ヘル』っていうのはどう?」
そのままだけど、そのままだから分かりやすさは抜群だ。
「ん、まあ俺は何でも良いんだぜ?」
ケイハクでも良いっていう闇天国だし、確かに何でも良いって良いそうだ。
「ふーん、『ヘル』って呼んでくれるなら良いかな」
闇地獄ちゃんのこだわりがよく分からないけど、良いって言ってくれて良かった。
「なんと! ならば、こちも『ジゴク』と呼ばれとう御座います!」
あれ、そこなんだ?
「二人ともちゃん付けが嫌だったの?」
頷くジゴクちゃん達。
そうだったんだ…
「でも、ジゴクって呼ぶと可愛さがないような…」
っていうか怖そうなイメージだよね。
「『テンゴクとジゴクちゃん』よりも、『テンゴクとジゴク』で在りたいので御座います」
そういうものなのかな。
まあ、ぼくも『テンゴクちゃんとジゴク』だったら嫌だしね。
うん、そういうものなんだろう。
それじゃあ…
「これからは、ジゴクって呼ぶね」
それだけで、ジゴクちゃんが満面の笑顔になった。
「これで、正真正銘にテンゴクとジゴクとなれたので御座います!」
破顔一笑のジゴク…
って、ちゃんが付いてないだけで印象が全然違うよ!
馴れるまで時間かかりそうだけど、ジゴクちゃんの…
ジゴクのために頑張ってみようかな。
って、やっぱりちょっと字面が怖い!




