四日目、テンゴクvsジゴクちゃん、その4
さて、ぼく達は四人で輪になって手を繋いでいる。
手を放そうとすると転びかけてしまうくらい、何やら絶妙なバランスが四人の間に成り立っているようだね。
今の状況は、
ぼくと闇天国が『天化』状態
ジゴクちゃんと闇地獄ちゃんが『地化』状態
ぼくの右隣には闇地獄ちゃん
ぼくの左隣にはジゴクちゃん
向かい側に闇天国が居る
ぼくは天術使いになっていて、闇天国に『天化』をかけている。それはいつでも解除できる。
だけど解除すると、ぼくはジゴクちゃんか闇地獄ちゃんのどちらかと天地ワンセットの法則に従ってくっついてしまうだろう。
ジゴクちゃんは自分に『地化』をかけているからそれはいつでも解除できる。
だけど解除すると、ぼくか闇天国のどちらかが闇地獄ちゃんと天地ワンセットになってくっついてしまうだろう。
闇天国と闇地獄ちゃんは『闘士』になっちゃってるから能力が解除出来ないらしい。
手を繋いでるからジョブ魂を出して転職することもできないよね。
「っていうか、もうバトルは終わったの?」
「んー、俺はやる気なくなったな。あとはテンゴク争奪戦でもやっとけば良いんじゃねえの?」
バトルをしようと仕掛けてきた闇天国の一抜け宣言。
「なんと! テンゴクは景品では御座いません!」
そりゃそうだけど、さっきは何やら奪い合われそうな感じもしたんだよね。
「別に私はテンゴクとか欲しくないんだけど?」
どちらかと言えばジゴクちゃんに甘えたい闇地獄ちゃんだもんね。
さっきのも闘士になると『地化』が解けなくなるのか確認したかっただけなのかも。
「ちなみに今の状況を何とか出来るのはテンゴクだけだからな? ちゃんと考えろよ?」
ん?ぼくにどうにかできるのかな?
「どういうことさ?」
今は心が繋がってないからちゃんと聞くしかない。そして、答えてくれるのを期待するしかない。
まあ、それが普通なんだけどさ。
「ああ、お前は今、俺に『天化』をかけてるだろ?」
ぼくはうなずく。
「そんでジゴクちゃん達が自分に『地化』をかけてて、俺はテンゴクに『天化』をかけてる」
うんうん、その通りだ。
「そして、俺と闇地獄ちゃんは『闘士』になってるから天地化が解除できない」
さっきのお復習だね。
「んで俺達は手を振りほどいたりは出来るけど、それでどうなるかとかはな、まあやってみないと分からないな…」
確かに、近くにいる天地で引き合うってだけじゃ、自分以外の人間の動きに左右されちゃうよね。
「だけど、テンゴクだけは『天化』をかける相手を選べば、好きな奴とくっつけるってわけだ」
んっと…
「テンゴクが闇地獄を『天化』すれば、闇地獄が『天地化』状態となり一人でわんせっとに成ります。然為れば、『天化』のテンゴクと『地化』のこちが二人でわんせっとと成り目出度くも決着となりましょう」
ふむふむ、ぼくの隣に並んで立つのは自分だっていう思いが、やっぱりジゴクちゃんの中に強くあるんだよね。
とても強い意地のような気持ちを感じるよ。
「へえ、それじゃあテンゴクがジゴクちゃんを『天化』したら、私とテンゴクがくっつくのよね。テンゴクは当然そうするんでしょ? 私の方が断然可愛いもの、ね?」
あれ、どちらかと言えば闇地獄ちゃんはジゴクちゃんに甘えたいはずなのに、何だか態度がおかしいような…
「同じ顔で御座いましょう!」
確かに、同じ顔だ。
中身は全然違うけど、見た目は肌の色くらいしか違いがない。
人を可愛さで選ぶなんて失礼なことはしないけど、やっぱりどっちも可愛いから選べない気がする。
「ぎゃはは! 闇地獄ちゃんってば、本当はジゴクちゃんに甘えたくってしょうがないくせに、なんで素直に言えねえの?」
はっ!
そうか、ぼくに対しても甘えたいけど甘えたくないっていう複雑な気持ちを発揮してたくらいだもんね。本当に甘えたいジゴクちゃんに対しては、ぼくの時よりも甘えたくないっていう気持ちも余計に強くなってて当然だった!
つまり、闇天国が地雷を踏んだ。
「はあ!? ふざけないでよ! 私がなんでこんな自分そっくりな女に甘えきゃいけないのよ!?」
地雷を踏んだ闇天国が闇地獄ちゃんに向こう脛を蹴られている。
「ちょっ、いてえって! 照れ隠しで急所を蹴るなのやめろよな!」
平然と地雷を踏んでいく闇天国
「照れも隠しもしてないわよ!」
怒声とともに痛そうな音が響く
一際強い蹴りを喰らって悶絶する闇天国。
弁慶の泣き所だっけ、そこを『闘士』になってる闇地獄ちゃんに蹴られるんだから痛いよね。
「馬鹿はほっときましょ」
まあ、今のはある意味しょうがない。
「そなたは乱暴者で御座います」
「ほっといてよ。あんたと私には何の関係もないんだからね!」
うーん、そっか。
ジゴクちゃんと闇地獄ちゃんは以心伝心してないからね。
闇地獄ちゃんがコドモちゃんがぼくに混じって出来た人格で、素直に甘えられないんだって知らないと意味が分からないよね。
うーんっと困るぼく。
下手に何か言うと闇天国の二の舞だもんね。
だけどこの二人にも仲良くして欲しいんだよね。
「そうだ。以心伝心してみる? 変な誤解もとけるかも…」
ぼくとはそれで少しは分かりあえたんだしね。扱い方はよく分からないままだけど…
「ジゴクちゃんとだけは絶対に嫌よ!何があってもそれだけはごめんだわ!」
頑なに拒む闇地獄ちゃん。
甘えたい願望をジゴクちゃんに悟られるのだけは嫌らしい。
「テンゴクとは繋げてもこちとは嫌だと言うので御座いますか! ならば、こちもそちとは天地が裂けても真っ平ごめんで御座います!」
うわーい、闇地獄ちゃんの内面を知らずに態度だけ見てるとこうなるよね。
そこへダメージの抜けたらしい闇天国が提案してくる。
「いてて… そこで第三の選択肢だぜ。テンゴクが自分に『天化』をかけるんだ」
じろりと闇地獄ちゃんに睨まれながら話す闇天国。
うーん、ぼくは既に闇天国に『天化』されてるから、そこにぼくが『天化』を重ね掛けするとどうなるんだろう?
「まっ、やってみないと分かんねえけどな。『天化』が二つあったら『地化』も二つともくっつくかもしんねえだろ? そうすりゃ晴れてテンゴクハーレム結成なわけよ」
うーん、ジゴクちゃんと闇地獄ちゃんがぼくにくっついて離れられなくなったらちょっと困るよね。
「いや、それってテンゴクが一人で嬉しいだけじゃん?」
ちょっと!
確かにまったく嬉しくない訳じゃないけどさ!
「ふむ、テンゴクが嬉しいのであらばその選択もありなので御座いましょうが、ただの従属であるならばやはりテンゴクは不服なのでは御座いませんか?」
そう、それそれ!
流石はジゴクちゃんだよ。
「んでもな、テンゴクよ。考えてみてくれ。三人でくっついちゃったらさ、流石にこのツンデレだって素直にジゴクちゃんに甘えられるだろ?」
ああっ!
確かに、それなら闇地獄ちゃんだって少しは素直にジゴクちゃんに甘えられるかも…
ん?
今、なんだっけ…
何かとてつもなく大きな地雷が踏まれ…
「てっめえ!! 誰がツンデレじゃー!!」
そして再び闇天国が蹴り飛ばされていった。
えー!
ここまでの話し合いはなんだったの!?
「自分を『天化』!」
あっ、とりあえずぼくは自分に『天化』をかけたけど、ハーレム目当てとかじゃないからね。
闇地獄ちゃんがジゴクちゃんに対して素直になれたら良いなって、本当にそれだけだから!
闇天国!
君の犠牲は無駄にはしないぜ!
さて次回、テンゴクが女の子とベタベタしてる時にはあの先生が現れます。




