四日目、テンゴクvsジゴクちゃん、その2
さて、ジゴクちゃん達の方はまだ喧嘩してるみたい。
「だいたい、御座いますって喋り方なんなんだよ!? 絶対に変だろそれ!」「これはテンゴクの礼儀正しき心を見習っているので御座います!」「はあ?テンゴクはそんな喋り方してないだだろ!?」
うん、言い争ってるね。
〔まだバトル中よね?〕
そうだよね。
やっぱり心の中で会話した方が早いんだろうね。
〔襲いかかるなら今じゃない?〕
確かに…
1対1対2の勝負なら勝ち目あるもんね。
〔情けないわね…〕
闇地獄ちゃんもそう思ってるくせに…
〔自分に対しても同じように情けないって思ってるから気にしないで〕
まあ、そうだよね。
しかしまあ、ジゴクちゃんとこうやって対面してみると、横にならんで立つにはぼくが不足してるように思っちゃうね。
〔闇天国の方が格好良いもんね〕
うっ、それは分かる…
あれって、ジゴクちゃんよりの人格だから格好良かったんだね。
〔で、どうするの?〕
うん、やるだけやってみようか。
ここで攻めない理由がないもんね。
〔自分に攻撃が当たった理由も分かんないのに?〕
うーん、まあそこは実戦で理解できたら良いかな。
〔逆に理解してないままの方が、相手に動きを予測されなくて良いかもね〕
あー、なるほどね。
その馬鹿さ加減は予測できねえよって闇天国に言わせたいかも。
〔いや、それは私は嫌だけど〕
そっか、じゃあ出来るだけ笑われない方向で頑張ってみようかな。
〔あんた、そうやってすぐに意見を変えるからダサいのよ?〕
んー、でも不満は少なくしたいんだよね。
〔自分の意見を軽んじてる奴に対等に行こうって思われても迷惑でしょ?〕
そう言われるとね。
〔私、あんたに甘やかされると腹立つみたいだからさ、そこんとこよろしく〕
それはそれで迷惑な性格だよね。
〔うっさい黙れ。あと、腹立ったついでに私も闇天国に言わせたくなったから〕
え、なにを?
〔さっきのよ。その馬鹿さ加減は予測できねえよっやつよ〕
うーん、どうせ賛成するなら最初から賛成しといて欲しいんだけど…
〔あー、もう! 私がこういう性格なの、半分はあんたのせいなんだからね? 面倒だって思うなら責任感じて反省しなさいよ! つうか頭きた!〕
えっ?
なにするつもり?
「『ジョブ魂:闘士』『インストール』!」
あっ、闇地獄ちゃんもジョブ魂使えるんだね…
じゃなくて、あれっ!?
闇地獄ちゃんがぼくの手首を掴んだ。
って、手は放さないんじゃなかったの!?
「しったこっちゃないわよ!」
ぼくの腕を掴んでジゴクちゃん達の方へ飛びかかる闇地獄ちゃん!
まさかこれ…
「武器はあんたよ!」
そして、ぼくは投げ飛ばされた!
人間に向かって人間を投げるとか!
「ありえないよ!」
ジゴクちゃん達の方へ飛んでくぼくに、
だけどジゴクちゃんは、
「その動きは予測済みで御座います!『地化』!」
ええーっ!
これを予測してたの!?
ふわっと身体が浮かび上がるような感覚とともに、ぼくの体にブレーキがかかっていくのが分かる。
いや、何が何やらよく分かんないけど!
「『天化』!」
ぼくは、ジゴクちゃんが『地化』したと思われる地面を『天化』した。
なんとなく、効果が相殺されそうな気がしてかけたんだけど…
あれ?
何故か闇地獄ちゃんに投げられた方向へとまた身体が逆戻りしてく…
「んなっ!?」っと驚いてる闇天国に、ぼくはぶつかった。
うーん、今のは何がどうなってこうなったんだろ?
ぼくと闇天国はさっきまで引き合ってなかったのに、まるでぼくが『天化』を使ったのがトリガーになったみたいな…
‐天と地が複数ある場合には、より近しい方の天地で引き合うようで御座います‐
ジゴクちゃんが教えてくれた。
やっぱり、ジゴクちゃんは頼りになるね。
‐参謀であらば当然に御座います!‐
〈おいおい、敵に教えてんじゃねえよ。まあ、ついでに言うなら天地は一つずつでワンセットみてえだな。一組出来あがっちまうとさっきの俺に『地化』したみたいに反応もないみたいだな〉
あっ、闇天国もありがとね。
〈まっ、ぶつかってるせいで意識が繋がっちまってんだしな。これぐらいは伝わっちまってもしょうがなねえだろ〉
‐それはこちの役割に御座います! 闇天国が侵して良い領分では御座いませぬ!‐
〈うっせえんだよ。潔癖ちゃんか!〉
二人とも仲良さそうなとこ悪いけど、、ぼくにかかってるのは闇天国がかけた『天化』だよね?
解除できなかったの?
〈どこが仲良しだっつうの。こんな堅苦しいやつからどうやって俺が生まれたのか想像もつかねえよ〉
‐然り、このような軽薄な者、こちは不快なだけで御座います!‐
〈ちなみに、俺も今は闘士になってんだけどさ、闘士になったら天化が解除できなくなっちまってさ。夢の世界特有の現象かもしんねえけど、まあバグっぽいんだよな〉
ふーん。
‐しかし、テンゴク達もこち達と同じ作戦で来るとは驚きました。もっとも選択される可能性の低い戦法だと思っておりましたが…‐
ん?
〈ああ、確かにな。俺が闘士で接近戦、ジゴクが地術使いでそっちの術の妨害をするなんて作戦をお前らが思い付くなんてな。正直なところ見くびってたぜ?〉
ああ、あれは…
作戦なんてなくてその場のノリでああなっただけだなんて、恥ずかしくて言えないね。
〈ぎゃはは! 言わなくても伝わっちまってるぜ!〉
‐なんと!考え抜いたこち達と同じ戦法を、考えずとも実行できるとは!驚嘆の限りに御座います!‐
〈ぎゃははは! こいつらの馬鹿さ加減が俺達には予測できないだけだろ!〉
あっ!
‐闇天国!その下卑た笑い方と無礼な物言い。こちはもう我慢が出来ませぬ!‐
〈んだと?俺もお前の大好きなテンゴクちゃんの一部から出来てんだぜ? 俺に文句があるならまずはテンゴクに言えよ〉
えー、それは嫌だよ。
ぼくはぼくだし、闇天国は闇天国でしょ。
自分の行動には、自分で責任もってよね。
〈あ、ああ… それで良いのか?〉
ん?
何故か闇天国から戸惑いが伝わってくるね。
‐テンゴクが受け入れるなら、こちにも文句は御座いませぬ‐
何故かジゴクちゃんから「それ見たことか」って感じに誇らしそうな感情が伝わってくる。
えっと、どういうこと?
〈あ、ああ… そうだな。いや、まずは闇地獄ちゃんもこの話に混ぜたいんだが…〉
闇天国が立ち上がって闇地獄ちゃんの方へ「おい、お前もこっち来いよ」と手招きをする。
そこへ闇地獄ちゃんが「何よ?」と言いながら近付いてくる。
側まで来た闇地獄ちゃんに「ああ、ちょっと聞いてくれよ」ってぼくの方を親指でくいっと指す闇天国を、
「隙有りっ!!」
闇地獄ちゃんが蹴り飛ばした。
えええええっ!
いや、今は絶賛バトル中だから隙を突くのも蹴り飛ばすのも当然だったけど…
えええええええええええっ!
吹っ飛ばされた闇天国に引き寄せられるように、ぼくの体も一緒に飛び始めたよ!
「あれ? どうしてあんたまで飛んでくのよ!?」
ぼくが闇天国に『天化』されてて、闇天国は闇地獄ちゃんに『地化』されてるから引き寄せあうんだよー!
なんて言ってる間もなく、ぼくは空中で闇天国とぶつかった。
「よっす相棒、あっちの相棒は何とかならないのか?」
蹴り飛ばされて吹っ飛び中でもおどけた感じの闇天国
「やっほう相棒、あっちの相棒はあれで悪気はないんだよ。今ってバトル中だからね」
ぎゃははと笑う闇天国。
「そうだったな。いやあ忘れてたぜ。とりあえず『天盤』だしてくれねえか?」
ああ、そういえば、ぼくは何処でも足場になる『天盤』を出せるんだった。
最近、吹っ飛びなれてきて緊張感がなかったけど、このまま落ちたら痛そうだ。
「『創天』!」
ぼくは『創天』の術で『天盤』を出す。
その上に着地するぼく達。
「しかし、なんつうか…」
闇天国は蹴られたせいか必殺モードがとけていた。
だから心の中まではもう伝わってこない。
ぼくも必殺モードを解いとこう。
「どうしたのさ?」
伝わってこないから聞くしかないね。
「ん、いやあ、良くできてるなって思っただけだよ」
何がだろ?
「俺達ってめっちゃ気が合いそうだろ? だから、もしも俺が闇地獄ちゃんの形になってて地術使いだったらさ、俺達だけで上手く行っちゃうんだよな」
ああ、確かにそうかも。
闇地獄ちゃんも、ぼくが来る前にはジゴクちゃんとは仲良くしてたのかもそれないよね。
ジゴクちゃんにお姫様抱っこして欲しいみたいだし。
「それがこんな風に、お互いの受け入れられなかった部分と向き合えと言わんばかりに綺麗に分かれるなんてな、不思議じゃないか?」
「ひょっとして、下に降りるのが面倒になった?」
まったりと話す闇天国にぼくは核心をついてみる。
ぎゃははと笑う闇天国。
「ああ、そうだな。確かにあいつら面倒臭い。でも嫌いってわけじゃないからな? 分かってんだろうけど、一応言っとくぜ」
ああ、そっちか!
「えっと、ここは高いから、下に降りるのが面倒かなって思ったんだけど…」
言われてみると、下に降りたらまた言い争いが始まるかもだし、降りたくない気持ちも分かるけどね。
「ぎゃはは! そっちかよ!」
うんうん、意見は合わないけど気は合うもんなんだね。
当初の予定ではもっと激しいバトルしながら拳で語りあうみたいな展開を予定してたんですけどね。
伝わる気持ちが一緒なら良いかな…
いっそ開き直って次回も言い争おうと思います。




