四日目、ダークジゴクと以心伝心
「さっさとバトルしようぜ!」
闇天国ってば戦闘狂なの!?
闇天国が闇地獄ちゃんをぽいっとぼくの方に放り出した。
「ぎゃふっ!」
妙な悲鳴を上げて砂地の上に転がる闇地獄ちゃん。
「うし、お前らチームな」
ん?
ぼくと闇地獄ちゃんがチームってこと!?
「ちょっと! なんでそうなるのよ!?」
闇地獄ちゃんも嫌そうだった。
うーん、それはそれでショック…
闇天国はそのまま無表情になってるジゴクちゃんの方へ行く。
「おい。色々と思うところはあるんだろうが、今は黙って手を繋ごうぜ」
ジゴクちゃんの隣に立って手を差し出す闇天国
って、なんでそんなに堂々としてられるのかな!?
「こちはおいでは御座いません。 ジゴクという名があるのです。そちはテンゴクと同じ顔だというのに無礼者で御座います」
うう、不貞腐れてるのか機嫌が悪そうなジゴクちゃん。
「ああ、そして俺はそちじゃねえ。闇天国だっつうの。ジゴクちゃんよ。騙されたと思って手を繋いでみな。『ダークテンゴク』!」
闇天国が名前を唱えて必殺モードになった!
ジゴクちゃんと以心伝心するの!?
出来るの!?
「全く不快では御座いますが、おそらくそういうことなのでしょうね。 闇天国の企みに乗りましょう。『ジゴク』」
そして二人が手を繋ぐ
こんなのってありなの!?
「なるほど、やはり…」
「おっ、ネタバレは早いぜ」
「確かに、あの二人を持ちましょう」
「おうよ」
何やら通じあっちゃった闇天国とジゴクちゃん。
うう、半分はぼくの意識から生まれたはずの闇天国だし、ジゴクちゃんと手を繋いで以心伝心できても不思議じゃないよね…
「それで、私たちもあれやるの?」
闇地獄ちゃんは嫌そうだけど…
「うーん、これからあの二人とバトルになるなら手を繋がないと対抗できないと思う…」
しょうがない感じかな…
「ふん、もういいわよ」
あれ?
何かを観念したみたいに大人しくなってる闇地獄ちゃん。
「ええっと、嫌じゃないの?」
嫌なら以心伝心なしで何とか頑張ろうと思うんだけど…
「そういう甘いところがあんたの! …いいえ、何でもないわ。さっさとやっちゃうわよ『ダークジゴク』!」
名前を唱えて必殺モードになる闇地獄ちゃん。
ううん…
闇地獄ちゃん、ちょっと展開に流されちゃってないかな?
「ぼく、嫌なら手は繋がないよ」
ここは言い切っておく。
ベチッ!
ぼくは頬を叩かれた。
へ…?
「そんなの嫌に決まってんでしょ!」
やっぱりね。
闇地獄ちゃんってぼくのこと嫌いな感じするし、ぼくもちょっと闇地獄ちゃんが苦手だ。
でも、それじゃなんで叩かられたんだろう?
「でもね。ここで手を繋がないのはもっと嫌なの! さっさとしなさいよ!」
ええっと…
ううんっと…
叩かれたと思ったら、今度は早くしろと怒られて、酷いよねまったく。
「そう。それじゃあ遠慮しないけど。内緒のことまで伝わっちゃっても文句言わないでよね。『テンゴク』」
これでぼくも必殺モードになった。
後は手を繋ぐだけだよ。
「ふん、あんたこそ文句言うんじゃないわよ。そんじゃあ、くたばれテンゴク!」
もう、くたばれとか酷いねまったく…
って!
繋いだ手から闇地獄ちゃんの意識が伝わってくるけど、これって…
伝わってきたのは、ぼくとジゴクちゃんへの不満だった。
不満とは、つまり理想だ。
〔うっさい!何も言うな!考えるな!ばかテンゴク!〕
あ、うん…
言わないけど、考えないのは無理じゃないかな?
〔あー! あー! あー! こち何も聞こえないよー!〕
うーん、今さら一人称をこちにしてもね…
胡散臭いよ…
〔つうか、あんたなんて私の見た目に騙されまくりだったじゃない! 本当にださいのよ!〕
うーん、確かにぼくは今まで、どちらかと言えば闇地獄ちゃんがジゴクちゃんよりの意識から生まれた人格で、闇天国の方がぼくよりの意識から生まれた人格だと思ってたけど…
〔分かった風なこと考えないでよ!適当だって分かっちゃうから余計に悲しくなるっつうの…〕
あっ、うん…
確かに推測だった。
でも、闇地獄ちゃんが、ジゴクちゃんよりもぼくの方に近い存在だってことは間違いないんでしょ?
〔そうよ。あんたは私で私はあんたよ。でもそれは私に自我が芽生える前までの話よ。今はもう、あんたのことなんてとにかく不快なだけなのよ〕
うん、えっと…
〔考えるな、バカ!〕
闇地獄ちゃんってさ…
〔うわっ、最悪よ!考えるなっつってんでしょ!?〕
ぼくとジゴクちゃんのことを…
〔ちょっと、それ以上言ったら、あんたはまさしく和堂兆のご子息様で間違いないですねって断言できるレベルで最悪よ!〕
それは最悪だ。
さすが、悪口がピンポイントでぼくの嫌がるところを押さえてくる。
なるほど、闇地獄ちゃんがぼくの…
「うざい!もうさっさと戦うわよ!馬鹿テンゴク!」
ああ、バトルするんだっけ…
うーん、堂々と並んで立っているジゴクちゃんと闇天国の二人。
えっと、闇地獄ちゃんは、見た目はジゴクちゃんだけど中身はぼくに近いんだよね…
〔そうよ。あんたと私じゃあの二人に勝ち目なんてないからボコられるのは間違いないわよ。最悪よ〕
うん、相手はジゴクちゃんが二人みたいなもんだよね。
ジゴクちゃんに勝ったことのないぼくが二人居ても、やっぱり勝てるとは思えない。
〔あのお節介の闇天国はまったく。まあ、戦うのは私も賛成なの。だから私の分までぼこぼこになってね〕
うーん、確かにジゴクちゃんがぼこぼこにされてるみたいで嫌だもんね。
でも、戦うのに賛成ってどうしてさ?
〔あんた、ジゴクちゃんと一回くらいマジの喧嘩した方が良いのよ。これは私と闇天国の共通見解だからね〕
ジゴクちゃんとケンカ…
なるほど、闇天国と闇地獄が居なかったら手を繋ぐと仲直りしそうなぼく達は、こういう風にお膳立てしてもらわないとケンカもできないかもしれない…
それは確かにお節介だね。
でも、それじゃあ闇天国も闇地獄ちゃんと同じで…
〔うっさい黙れ!〕
あー、はいはい。
大好きなパパとママだけど、今のままだと仲良しごっこしてるみたいで不愉快だから、もう一歩深い繋がりを得てほしいとか思ってることは、ぼくもあまり考えないようにするよ。
〔考えてるじゃないの!このバカテンゴク! もう最悪よ!〕
うーん、ジゴクちゃんの影響も受けてるはずなのにどうしてこんなに素直じゃないんだろうね。
〔私のベースはあんたと、あんたがコドモちゃんって呼んでた幼い人格なのよ。昨日、夢の中で抱っこしたまま寝ちゃったでしょ?その時にあんたと混ざっちゃった部分が私になったのね〕
ん?
ぼく+コドモちゃん=闇地獄ってことだよね。
っていうか人格って足し算で良いのかな?
〔知るわけないでしょ!〕
そりゃあそうだ。
うん、なるほど。
あの純粋そうなコドモちゃんが、ぼくと混ざるとこんなひねくれ者になっちゃうなんて残念だけど…
〔ふざけてんの!? 私が素直になっちゃったら…〕
あっ、コドモちゃんみたいになっちゃうとか?
〔ちょっと! バカテンゴク! そんなわけないでしょ!?〕
うん、闇地獄ちゃんの中身は半分はぼくなんだもんね。ぼくだったら恥ずかしくてコドモちゃんみたいに、あんな風に甘えられないもんね。
ぼくとコドモちゃんが混ざっちゃったらひねくれちゃうのもしょうがないかも。
よし、事情は了解したよ。
〔分かった気になってんじゃないわよ!ふざけんな!〕
よし、すっきりしたところで今度こそバトルだね!
〔ああ、もう全然すっきりしないけど、あんたがさっさとボコられるのには大賛成よ!〕
闇地獄はテンゴクの中に混ざってしまったコドモちゃんでしたとさ。




