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HEAVEN AND HELL  作者: despair
四日目、魔女の館
132/214

四日目、シュララバVSプリレリその2

シュララバ視点で戦いが続きます。




 ちょっとだけナデシコさんを見直してしまった私。

 べつに、理想の妹だとか言われてデレてるわけじゃないですよ。

 イライラする言動が多いけれど、それってナデシコさんが実際にそう思ってることを言ってるみたいなんです。

 はい、ショックです。

 確かに私は弱いです。でも、テンゴクさんを守るのに相応しくないと思われていることが何よりもショックです。

 でも、そんな気持ちに私も正面からぶつかってみようと思います。

 私がテンゴクさんとジゴクちゃんを守るのに相応しい人間だということを皆に認められたいですから。

 気づかいに助けられる時もあれば、気を使われてダメになる時もあるんです。

 今はまだ、気を使われるの嫌なんです。

 心に余裕をプラスして。まだまだ頑張ってやろうと思います。


 勝つための作戦はあるんです。

 いえ、思い付き、かな。

 でも、できたらそれを使わずにいきたいけど…


「ナデシコさん、一つだけ約束してください」

「良いよ!」


 あれ、まだ内容言ってないんですけど…

 即答して良いんでしょうか?

 負けてくださいとか言ったらどうするんでしょう?

 うーん…


「えっと、その…」


 うん、やっぱり最初に言おうとしていたお願いをすることにします。


「私と、手加減なしの全力で闘って戦ってください!」


 さっきの蹴りで、実力では全然及ばないことを実感してしまった私は短期決戦に賭けることにします。


「『翼』!」


 四枚の『羽』を出して突撃します。

 注意すべきは体術でしょう。


「望むところだよ!」


 やはり、ナデシコさんは蹴りで応戦してきました。

 私は三枚の『羽』で蹴りを受け止めました。

 そして、残った『羽』でナデシコさんの軸足を払います。

 たまらず転ぶナデシコさん。


 『翼』のある私は、格闘戦なら実力差を覆して有利に立ち回ることは可能です。

「へへっ、やるじゃん! そんじゃあ、勝った方がテンゴクを守るってことで!」

 体勢を立て直したナデシコさんはなぜか嬉しそうです。

「って! 何をさらりととんでもない条件付けてるんですか!?」

 望むところだ、なんて言えそうにありません!

 さっきの約束、やっぱり「負けてください」にしといたら良かった!


「緊迫感あって良いでしょ? それじゃあ行くよ!」


 瞬きをすれば見失いそうな速さで駆け出すナデシコさん。

 知覚可能なぎりぎりの速度。

 動き回られると厄介ですね。

 私は『翼』を四方に展開します。


「『純化障壁ピュアバリア』!」


 四方の『翼』にバリアを張ります。

 これで、どれかのバリアを通らないと私には近付けないでしょう。


「そんなの通用しないよ!『想いよ伝われヘヴィーコミュニケート』!」」

 しかし、ナデシコさんの技でバリアが吹き飛ば

されます。

 うーん、格上相手には易々と通用しないことが多いですね。

 相手によってはバリアを張らない方がMP効率が良いかもしれません。


 どうだと言わんばかりに、正面から堂々と歩みよってくるナデシコさん。

 私は迎撃に『翼』を次々と飛ばしますが、軽く払い飛ばしながら近寄ってきます。

 うーん、ゆっくり着実に近付いてこられると防ぐのは難しいですね。

 払われた『翼』は消しつつ、何度も『翼』を新しく出しては飛ばしナデシコさんを押し止めようとしますが効果は薄そうです。

 テンゴクさん達なら『天化』と『地化』で問答無用で相手を飛ばせちゃうんでしょうけど、あんなとんでもないスキルは私にはありません。


 ここは一か八か…


 私は、ナデシコさんの間合いに私が入る一瞬を狙います。

 ナデシコさんが攻撃に転じる一瞬の隙を…


「なんか知んないけど、狙いすぎ!」


 ナデシコさんが、急に後ろに跳びました。

 狙いを読まれた!?

「もう目がさ、近付いてこいって言っちゃってたよ?」

 なるほど、確かにじいっと見ちゃってましたね。これは失敗でした。


「まあ、楽しく遊んでる間に、私も準備完了ってね!」


 それは、あまり嬉しくないですね。今度こそ全力出しちゃってくれるってことなら少しは良いんですが…


「さあ、プリティーレリカの真骨頂! いくよ!『秘めたる威風(プリンセスレリック)解き放つ(リベレーション)』!」


 ナデシコさんから光が溢れだし、また服装が変化しています。

 装飾が一回り派手になっていてパワーアップした感じが出てますね。

 唯一、少し動きにくそうなってるように見えるのだけが救いですが…


「『高貴なる花園(ナスタチウムガーデン)咲き誇れ(フルブルーム)』」


 服が変わったかと思えば、今度は辺りの風景があっという間に変わり、色とりどりの花が咲き誇っています。

 カラフルなお菓子の国の中にもなお鮮明に栄える景色に、私はつい心を奪われてしまいました。

 しかし、当然ながらナデシコさんの攻撃はまだ終わっていないようです。

 いつの間にやら手に持っていた実用性の無さそうな可愛らしいステッキの先端を此方に向けています。


「『気高く勇敢なる進撃プリンシパルペネトレート』」


 ナデシコさんの周りで橙色のオーラが渦を巻き、その膨大なるマナの奔流が私の方へと向かってきました。

 なるほど、これがナデシコさんの必殺技ですよね。

 攻撃力が高そうです。

 渦を巻きながら向かって来るその攻撃は、避けるのも難しそうです。


「怪我する前に参ったした方がいいよ!」


 ナデシコさんの嫌味な気遣い。

 さっき、勝った方がテンゴクさんを守るとか言われてなければそれも考えなくもなかったんですけどね…


「ナデシコさんこそ、『盾鎧武闘ジュンガイブトウ』のタフさをなめないでください!」


 そもそも、耐える能力なら最高クラスの職業なのですから!

「『純化風撃ピュアブロウ』!」

 私はバリアの波をナデシコさんの必殺技にぶつけます。

 少しでも威力を落とせれば、ここまで直接のダメージを受けていない私は、きっと耐えられるはず!


 そして、私のバリアを削りきり、ナデシコさんの必殺技が私を襲いました。

 激しいマナの流れが私をものみ込み、そして通りすぎていきます。

 強烈な攻撃でした。

 でも…


「あはは、耐えれましたよ。ちょっと限界ですけど…」


 おっと、思わず、その場に座り込んでしまいました。


「へへっ、頑張ったね。 これを耐えるなんて思ってなかったよ」


 ナデシコさんが私の前に立ち、私に手を差し出します。

 とどめでしょうか?


「はい。立てるかな?」


 ああ、一人じゃ立てないと思って手を貸そうとしてくれてるみたいですね。


 あれ?

 ナデシコさん、とっても油断してるんじゃないでしょうか?


 気が付くと、ナデシコさんは二回目の変身が解けていて、少し息が上がっているように思います。


 あれ?

 ナデシコさん、かなり消耗してるんじゃないでしょうか?


 ナデシコさんにとっては、自分の必殺技で私が倒れので、それで勝ったものだと思ってるんでしょうか?

 それはまだ、思い込みでしかないはずです…

 今なら、さっきナデシコさんが近付いてきた時は失敗に終わった、『翼』をナデシコさんの背後に出現させて気付かれる前に手足を掴んで空に放り投げ、自由に身動き出来ないところを集中攻撃する作戦も実行可能でしょう。

 でも、私は勝利を確実のものにするべく、思い付いた限りでもっともずるい方法をとることにします。


「ありがとうございます」


 私はナデシコさんの手を借りて立ち上がりました。

 対戦中だからといって、相手の助けを拒む理由はありません。

 さて、もうひとスマイル!頑張ろう私っ!


「ナデシコお姉ちゃん、すごく強かったです!私の『盾鎧武闘ジュンガイブトウツバサ』がこんなにダメージを受けるなんて、すごいです!」

 私は笑顔でナデシコさんを褒め称えます。

 しかし、今の台詞の合間に自身のジョブ名を唱え、私はこっそりと能力前回の必殺モードに入りました。

 私は無属性なので、必殺モードに入ってもオーラが透明なので簡単に気付かれることはないでしょう。


「『プリレリ』の必殺技を受けたのに立ち上がってるシュラちゃんだって相当のもんだって!」

 はい、気付かれてないみたいです。

 私は褒められて純粋に嬉しかったのと、気付かれてなくて安心したのとで、より一層、心からの笑顔になれているはずです。


 私はこっそりと、ナデシコさんの背後に『翼』を出します。

「いえいえ、私の『純化障壁ピュアバリア』が消し飛ばされる度に、これはレベルが全然足りてないなって思ってたんですよ」

 これも本当です。

 嘘をつくと見破られそうですからね。

 そしてまた、私はこっそりとバリアを張ることに成功しました。

 バリア内の敵はダメージを受け続けるはずです。

 しかし、今の戦いでも思ったのですが地球人はシールドやMPへのダメージを、どうやら痛みとしては受け取っていないように思うのです。

 そして案の定、バリアを張ったことには気付かれていないようです。

 私は自分が無属性だったことが、今ほど役に立つ日が来るとは思っていませんでした。

 なんにでも使い道ってあるものなんですね。


「そうかな? 格闘戦の時に翼だっけ? あれを使われたときは参ったなって思っちゃったよ?」

 あれは、自分でもびっくりするほどよく決まりましたね。虚を突ける戦法であれば強者を相手にもチャンスを作ることは可能だっていう良い例だったと思います。

 それでも、あれもナデシコさん動きにぎりぎりついていけただけです。

 立ち上がりの遅い相手に、最初から攻めきれてない時点で、まっとうな勝ち方は難しかったと思います。


「でも私、ナデシコお姉ちゃんが二回目の変身してからは手も足も出てないですよ!」

 必殺技とは言え、一撃でこうもやられてしまうと情けなくはあります。

 さっき、何らかの追撃をされていたら私はあっさりとやられていたでしょう。

 あ、今は私も必殺モードに入ってるので『盾鎧武闘ジュンガイブトウ』の職業の特性でシールドが自動回復中です。

 そう長くは持ちませんが、このまま攻撃がなければさっきの必殺技をあと一撃くらいは防げる状態まで持っていけそうです。

 さっきよりは全力で防御に徹しないとダメでしょうけどね。


「へへっ、そのお姉ちゃんって呼び方、ちょっとむず痒いけど良いね!」

 主に油断を誘うために言い始め見たんですが、気に入ってもらえて良かったです。

「とっても強くて格好良かったので、それに妹の理想像って言われたら、やっぱりお姉ちゃんって呼んだ方が良いかなって…」

 私はにっこりと微笑みます。

 作戦がうまく決まってて嬉しいから自然に笑えてるのは内緒です。

「うん、全然良い! どんとこいよね!」


 しかし、けっこう攻撃し続けてるんですが、まだ気付かれないものなんですね。

 やっぱり、ちょっとズルいかな。

 でも、テンゴクさんとジゴクちゃんは私が守りたいですし、ここで負けるのだけは嫌なんです!


「うん、あれ?」

 ナデシコさんが何やら異変を感じたようです。

 最初の変身も解けて服装が元に戻ってますね。

「ねえ、シュラちゃん。私のシールドがいつの間にか無くなっちゃってて、MPもどんどん減ってるんだけど、何かしてる?」

 なるほど、意識すると分かっちゃうんですね。


 よし、開き直りましょう。

「うん、お姉ちゃんが油断してるから、こっそりバリア張って攻撃してます! てへへっ」

 私はいたずらしちゃった感じに攻撃してることを告白しました。

 出来るだけ軽い感じで、敵意を持たれないように注意を払います。

 戦う気持ちになられたら、また変身されてしまいそうですからね。


「もう、シュラちゃんってばまだ諦めてなかったんだ?」

 気付かれたけどまだまだフレンドリーな感じで良かったです。

「テンゴクさんとジゴクちゃんを守るのは私の役割だって決めてるんです。ナデシコお姉ちゃんが強くても、これだけは譲れません」

 やれやれという感じで笑うナデシコさん。

「あははっ、どうしてそんなにこだわるのか教えてくんない?」

 うーん、そんなに深い理由はないんですよね。


「私、この通り無属性なので、昔そのことをからかわれて、それでずっと冒険に出れずに引きこもりだったんですけど、テンゴクさんとジゴクちゃんはそれをからかったりしなくて、それに一緒にいるとすっごく楽しくて、あの二人との冒険が、私にとってはやっと見付かった自分の居場所なんです。昨日なんて、二人に最高の友達だなんて言ってもらえて、嬉しくて、私もお二人のこと大好きで…」

 喋ってる間に昨日のことを思い出して泣いてしまいました。

 ちょっと恥ずかしいです。

「私、あの二人が大切だから、だから、絶対に、」


 ぎゅっと、ナデシコお姉ちゃんが私を抱きしめます。

「うわあ、めっちゃ可愛い!」


 私も泣いてるせいか、抱きしめられて安心しちゃいました。

 でも、めっちゃ可愛い!って理由がちょっと期待してたのと違ったというか…

 いえ、敵意を持たれなくて良かったです。

 私、涙も止まらないのでもう戦えそうにないですから。


「シュラちゃんが盾ならさ、私は剣になるよ。だからシュラちゃんの居場所はなくならないから、安心しなよ」

 私をなでなでとするナデシコお姉ちゃん。

 なんだか本当に、お姉ちゃんが居たらこんな感じなのかもしれません。

「はい、でも、お姉ちゃんも、どうしてテンゴクさんにこだわっていたんですか?」

 私だけ教えるのはずるいですよね。

「んー、あいつには借りがあるからね。私ってほら正義の味方じゃん? だけど、そうなろうって思えたのってテンゴクのおかげなんだよねー。って、ははっ、カメラ回ってんのにこんなの恥ずかしくて言えないや…」


 へ?

 カメラが回ってるってどういう意味なんでしょう?


「まあ、シュラちゃんが頑張りやさんなのは分かったよ。ちょっと小悪魔だけど…」

 小悪魔?

「どういう意味ですか?」

 私の疑問に、しかし、返事はありませんでした。


 ばたんと倒れるお姉ちゃん。

「あっ、まだ攻撃してるの忘れてました!」


 私の居場所を奪わないと認めてくれたので、もうバリアを解除しても良かったんですけど、ついうっかり、お姉ちゃんをやっつけてしまいました…


「はい、この勝負、小悪魔シュラちゃんの勝ちー!」


 戦いを見ていた青磁くんが、私の勝利を宣言しました。

「だから小悪魔ってどういう意味なんですか!?」


 てくてくと、ミルチャン先生が私の前に来ました。

 そして神妙な顔で私に言います。

「ひょっとしたら、シュラちゃんの方が年上なんじゃないかしら?地球の人って、異世界イツ・ルヒの人より身体の成長が早いのよね」


 あっ、そうでした!

 あれだけお姉ちゃんって呼んでたのに、私の方が年上だったらどうしよう!?




バトルシーンは書くの難しいですね。

何気に、このお話では今までで一番実力差の少ないバトルになってます。


そして、シュラちゃんは小悪魔の称号&年下のお姉ちゃんをゲットです。

次回でシュラちゃん視点は終われるかな。


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