2日目、山吹食堂その2
山吹さんは良い人だなと、和みゆるむぼくに、
「んで、そっちのお嬢ちゃんはなんて名前なんだい?」と、山吹さんが問いかける。
ゆるんでたぼくは引きつり固まる。どうしよう!名前がないとか言えないよ!
「名前はありません。でも、てんご様が一緒に考えてくださるのです。こちは楽しみなのです」
言っちゃった!
しょうがないので、ぼくは成り行きを見守ることにした。彼女は自分のことをこちって言うんだなぁ。あっちこっちと同じ意味なのかなぁ。とか考えながら見守ることにした。
「そうかい。良い名前になると良いね」と山吹さんは言って、笑いながら女の子の頭を撫でた。
思ってたより普通の反応だった。まるで、生まれたばかりの赤ちゃんに言うみたいにさらりと、良い名前になると良いね、と言う山吹さん。
これが大人の対応なのか。
「テンゴクも大変だろうけど、しっかりやんな。こんな可愛い子をいじめたら承知しないよ」と山吹さんがぼくに言う。山吹さんは言うことが男前だ。
「頑張ります」と返事をする。実際、いじめたりはしない。
でも、女の子は父さんに誘拐されて来たんだよね。しかも、ぼくも誘拐犯の一味らしい。いじめたりはしないけど、犯罪行為はしてるんだ。
何か事情はありそうだけど、誘拐は誘拐だよね。警察にバレたら捕まったりするのかな。あれ、こんな風に普通に出掛けて良かったんだろうか。いやいや、もし女の子を探してる人が居て、ちゃんと見付かったなら良いことだよね。
よし、本当の犯罪者がするような心配はしないようにしよう。
お店の奥から「おい」と呼ぶ声がして、山吹さんは厨房へ向かう。
そう言えば、注文取られてないし、今日はアレかな。




