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HEAVEN AND HELL  作者: despair
四日目、魔女の館
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四日目、ダークジゴクちゃん登場


 どうでも良いような話でダークテンゴクとしばらく盛り上がってしまった。

 いやあ、ダークとか言ってみたところで自分自身には違いないんだよね。けっこう気が合うみたい。

「それでさ、ここって夢の中なのかな?」

 そろそろ話を進めないとね。

「夢ってことで良いんじゃねえの? 体が眠ってんだからな」

 うん、体は眠ってるはずだ。

 現実の世界にダークテンゴクが現れたら、ぼくは分身していることになる。

「ふーん。本当の夢ではないってこと?」

 困ったことにダークテンゴクの方が頭が良いんだよね。だからついつい質問しちゃう。

 ジゴクちゃんと意識が繋がったときに、ぼくがジゴクちゃんの頭の良さについていけてない部分から生まれた人格って感じみたいだし、まあしょうがないけどさ。

「お前だってこんなリアルな夢を見たことないだろ? 夢なんて記憶の断片みたいなものだからな。夢の世界なんて実際は在り得ないんだ。でも、此処はまさしく夢の世界って感じだよな」

 確かに、起きてる時と同じような感覚がちゃんとあるね。だけど夢って不思議かも。

「うーん、ジゴクちゃんもこの世界のどこかに居るのかな…」

 一緒に眠ったんだから同じ世界に来てても良いとは思うけど、以心伝心モードだったわけじゃないからジゴクちゃんは別の夢の世界に居てもおかしくはないよね。

「ここに俺が居るんだ。あっちにはダークジゴクが居てもおかしくはねえだろ」

 ああ、そもそもジゴクちゃんが苦しそうだったのって人格の問題が関係してるのかも…

 早めにジゴクちゃんの所に行った方が良さそうだけど…

「どっちに行ったらジゴクちゃんが居ると思う?」

 辺りは一面の砂漠だった。

 太陽は真上から動かないみたいだった。

 方向感覚なんてない。

「馬鹿なのか? 現実の世界でジゴクとはぐれたら、お前はどうするんだよ?」

 ダークテンゴクが哀れな生き物を見る目でぼくを見てきた。ぼくってそういう表情も出来るんだね。

 そして、考えてみれば確かにやることは決まってる。

「『ジョブ魂:天術使い』!」

 おっ、夢の世界でもちゃんとジョブ魂が出たよ!

「『インストール』!」

 なるほどね。

 ジゴクちゃんが何処かに居るなら、とっくに同じことを試してるって信じられるよ。

「ふん、くだらねえな。俺はここに残るからな」

 うん?

 うーん…

 居てくれるとけっこう心強いんだけど、そう言うならしょうがないね。

「分かった。それじゃあ、色々とありがとね!」

 それだけ言って、ぼくは自分に『天化』の術をかける。

 ふわっと体が浮き上がる。

「ぎゃはは! 俺と違ってあっちは厄介だぜ。用心しとけよ!」

 あっちっていうのはダークジゴクちゃんのことだよね。

 厄介って、どんな感じなんだろ…


 って、うわああああっ!

 宙に浮いたと思ったら、真っ逆さまに空へと落ちてるよ!

 まさか太陽まで落ちるってことは無いと思いたいけど…

 とにかく、この先にジゴクちゃんが居るなら解除するわけにもいかないよね!

 どこまでも行ってやるさ!


 とぷんっ


 おおっと、空の中に膜みたいのがあって、そこに落ちた、のかな…?

 膜の向こう側は空に地面があって…

 って、違う!

 空にあった膜を対象に、ぼくの居た夢の世界と、ジゴクちゃんの居た夢の世界があったって感じかな!

 なるほど、正反対でぼく達らしいや。


 地面の近くに黒っぽい球が見える。

 ジゴクちゃんが『地球儀』で作った球体に『地化』をかけてたみたいだね。

 ぼくは直径3メートル弱の小さな地球の上に落ちた。うん、着地もばっちり!

「ジゴクちゃん!」

 球体の下の方にジゴクちゃんが居た。

 その前方にはジゴクちゃんとそっくりな、だけど肌だけはぼくと同じで陽に焼けた色をしている子どもが居る。

 あれがダークジゴクちゃんだよね。


「テンゴク! 来てくれると信じておりました!」

 ジゴクちゃんが喜んでいる。

 だけど、その横に居るダークジゴクちゃんは不愉快そうにぼくを睨む。

「それで、テンゴクが此処に来て何が出来るの?」

 ダークジゴクちゃんがぼくに問いかける。


 ぼくは答えられなかった。


 あれ、来たらどうにかなるって思ってたかも。

「どうせ、自分が居るだけでなんとかなるとか思ってたんじゃないの?」

 うう…

 ぼくを睨みながらダークジゴクちゃんが詰め寄ってくる。

「そもそもね、今までに一度だってテンゴクが本当に必要だった場面ってある?」

 えっと…

「ぼく達、二人揃わないと術の効果も発揮されないし…」

「たまたまそんな使いにくい天職だってだけでしょ? それが分かってて他のジョブを真面目に使おうとしてないんだから、お互いの存在に甘えてただけなんじゃないの? ううん、甘えられることに甘えてるのよね」

 言い返すこともできないまま立ち尽くすぼくの顔を、ダークジゴクちゃんが両手で掴む。

「必要ない以前に足手まといなんじゃないの? テンゴクが居なかったら、私はもっと自由に、もっと効率良く、もっと楽しく動き回れるわよ」


 そうかもしれない…

 ジゴクちゃんが成長していくに連れて、ぼくが段々と足手まといになるんじゃないかって予感はあったんだよね…

 ジゴクちゃんの中の、急激な自己の変化に対応しきれなかった部分がダークジゴクちゃんなんだよね…

 すると、いつかはジゴクちゃんも、ぼくを足手まといだって思うんだろうな…

 今はまだ慕われてる部分が大きいから、そうは考えられなかったってだけかも…

 そりゃあ、ぼくだって自分のことを特別だなんて思ってないよ…

 ただ、必要とされてる間くらいは頑張ろうかなって…

「本当に、くだらない奴なのね」

 ダークテンゴクと同じようなことを言われてるだけのはずなのに、なぜか心は何倍も苦しかった…

 ダークジゴクちゃんがぼくを睨む。

 いいや、心の底からくだらないものを見る目をしてるね…

「泣いちゃうなんてダサいのよ」

 あれ、いつの間にかぼくの目から涙が流れていた。

 そっか、こんなに悲しいんだから当然だよね…


 そして、ダークジゴクちゃんがぼくにキスをした。


 へっ!?

 えええええっ!?

 ちょっと!?

 唇と唇だけど!?

 なんか顔近いなって気はしてたけど!?

 正気!?

 なにこれ!?

 何かの儀式的なやつ!?

 どうしたら良いの!?



ダークジゴクちゃんはテンゴクの気持ちが痛いほど良く分かってます。

くだらないものを見る目も自己嫌悪の現れなのでしょう。

次回、修羅場…?


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