四日目、魔女の館?
扉は閉ざされた。
押しても引いてもびくともしない。
「ふふん、慌てても無駄なのよ。 その扉は入るのは自由だけど、出るときはみるちゃん先生の意思でしか開かないんだから」
人を閉じ込めるための玄関ってこと!?
「うーん、この雰囲気ってさ、魔女の館っていうより…」
そう言った途端、シュバッという音と共に飛んできた二つの手がぼくの口を塞ぐ。撫子ちゃんと青磁くんが片手ずつでぼくの口を押さえてきたよ。
いきなりだよね。「もごもご」としか言えなくなっちゃったよ。
「テンゴクっ!言って良いことと悪いことがあるわよ! 主に自分の身の安全のために!」
「テンゴくんっ! ここは何があっても魔女の館だからね! 主に自分の身の安全のために!」
なんだろう…
ずいぶんと熱心に身の安全を主張してくる二人の勢いに呑まれて、ぼくはついつい首を縦に振ってしまう。
その動作に安心したみたいで二人とも手を離してくれたよ。
これ、ぼくがさっき言おうとしてたことがとっても危険ってこと?
この場所…
古びた洋館…
入ったら出られない…
蝋燭に火が勝手に灯って…
建物の中もすっかり寂れてて、人が住んでそうな雰囲気は皆無だ…
これって…
ガシャンッ!!
ズッ… ズズッ…
ん?
何か遠くでおおきな物が落ちたみたいな音がして、それから、それを引きずってるみたいな音が聞こえてくる…
ズズズッ…
ズズズッ…
うーん…
ちょっとずつこっちに近付いてくるような…
おっ、通路の先の曲がり角の向こう側から影だけが先に現れたよ。
壁に映るその影は、大きな斧を引きずってるみたいな形をしていて…
ズズズッ…
ズズズッ…
影の主が壁の向こうから現れた。
それは当然だけど、この魔女の館に住むと言われてる5年A組の担任教師、みるちゃん先生だった…
ずるずると引きずっているのはやっぱり斧…
見慣れた先生の異世界での姿は、まるで廃墟に住んでいる…
「はい、ウガリットの守護者『魔女』ことマジカル☆ミルチャンだよ♪」
さっきまで引きずっていた重そうな斧を、ぷいっとこちらに突きだして名乗りを上げるみるちゃん先生は…
どうみても…
「まるで廃墟に住んでる殺人鬼だよっ!」
あっ、言っちゃった!




