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HEAVEN AND HELL  作者: despair
四日目、魔女の館
123/214

四日目、魔女の館に…


 依頼の達成から宿代の支払いまで、名苻みょうぶで全部できました、っと。

 便利だね。現金を使わずにお支払いって、ちょっと大人になった気がするよ。

「ラプトパ・レドルテ!よい旅を!」

 代金をもらってご機嫌のご主人に見送られ、ぼく達五人は魔女の館へと向かう。

 ウガリット街の中は初めて来たときと同じように活気があふれてて、昨日の騒ぎはなんだったのかって言いたくなる。ぼく達みたいに子ども五人で出歩いてるって人は他には見当たらない。

 けっこう周りから浮いちゃってるかも。

「そういや、あんた達の天職ってなんなの? 私は『プリレリ』で、青磁くんは『動画配信者』よ」

 えっ…!?

 撫子ちゃんの天職が『プリレリ』だって聞こえたよ! あの、小さい女の子に人気の戦うヒロイン『プリレリ』っていうアニメの『プリレリ』のことで良いのかな!?

 青磁くんは『動画配信者』…

「なにそれ、かっこいい!」

 ぼくは素直に羨ましかった。

「どんな職業なのですか?どっちも異世界こっちじゃ聞いたこともないですよ」

 異世界人のシュラちゃんの疑問。こっちの職業って『盾鎧武闘ジュンガイブトウ』とかだもんね。逆に異世界の職業が他にどんなのがあるのか地球人として気になる。

「『プリレリ』って、説明は、うん、面倒なのよね。戦うことしか能がないわりに、戦える状態になるまでに時間がかかる戦士って感じなんだけど…」

 撫子ちゃんは変身するのかな?

 ちょっと似合わない気がする。

 いや、似合っててもクラスメイトが変身したらなんだか恥ずかしい。どうしよう、保てるかな平常心…

「ボクは、動画を撮って編集したり配信したりできるけど、戦うのは苦手かな」

 地球じゃ子どもが成りたい職業のトップみたいな『動画配信者』なのに、異世界で動画を配信しても誰が見るのかな… 見る人がいないとお金も稼げないよね?

「うーん、あまりイメージができないです。今度見せて頂いてもよろしいですか?」

「良いけど。まあ、あんまり近寄ると怪我するかもしれないから、気をつけてよね」

 『プリレリ』って危ないのかな!?

 まあ、乱堂汕圖より危ないってことはないと思うけど…


 おっと、ぼく達の天職も言っとかないとね。

「えっと、ぼくは『天術使い』だよ」

 ぼくに続いてジゴクちゃんも自分の天職を…

「こちはちじゅちゅちゅかいで御座います…」

 おおっと、ジゴクちゃんは地術使いって言おうとすると噛んじゃうんだったよ。ジョブたまを出すときはちゃんと言えてるのにね。ちょっと不思議。

「失礼いたしました。こちの天職はちじゅ・つ・つかいで御座います」

 うん、句切っても言えるんだよね。

「なんなの? その何とかかんとかって… そんな職業は聞いたことないわよ?」

 うーん、何とかかんとかって職業はぼくも聞いたことがないけど…

「んっと、ぼくの『天術使い』が『天術』っていう天を作り出す感じの術が使えて、ジゴクちゃんの『地術使い』が『地術』っていう地面を作り出す感じの術が使えるんだけど…」

 ぼくの説明を聞いても撫子ちゃんは不思議そうに「よく分かんないわね」って言って話を流してしまった。うん、説明ってむつかしいね…


 そんな感じで話ながらしばらく歩いてたら、撫子ちゃんが通りの先に見える一件の家を指して言った。

「あれよ、みるちゃん先生の家」

 あれって、あれだよね…

 いやいやいや、これって…!

「あっ、初めて見るとびっくりするよね」

 青磁くんがぼくに言う。

 ジゴクちゃんとシュラちゃんは平然としているから、間違いなくぼくにだけ言ってるんだろう。

「魔女様の屋敷にびっくりするのですか?」

 シュラちゃんの疑問。

 異世界イツ・ルヒの人にはピンと来ないのかもしれないね…

 ジゴクちゃんもこういうのを見たことはないはずだし…

 これは、屋敷というより館…

 カラスが鳴いてそうな雰囲気…

 だけど、魔女の館って感じじゃない…

 寂れていて、廃れていて、だからこそ何かが潜んでそうな…

 理性のかけらも感じられない、常人には有らざる狂気が溢れる建物…

 そう、これは廃墟になった洋館だ…!


「あははっ、見た目怖いけど中にいるのはみるちゃん先生だし、プラマイゼロって感じじゃない?」

 そう言いながら、撫子ちゃんは平然と魔女の館に入っていく。

 確かに、中にいるのがみるちゃん先生だと信じれるなら怖くない。

 だけど、玄関の扉は大きな鉄製で、開くときには何十年も閉ざされてた扉が開くような、錆びて固まっていたような重たい音がしていた…

「ぼくも先に入ってるね」

 青磁くんも平然と入っていく。

「テンゴクさん、ここは確かに魔女の館です。罠とかじゃないですよ?」

 この街に住んでるシュラちゃんが言うなら、これは本当に魔女の館なんだよね…

 まあ、撫子ちゃんと青磁くんも疑ってるわけじゃないんだけど…

 うん、入ろうかな…

「テンゴクはこの館が怖いので御座いますか?」

 ジゴクちゃんの質問にぼくは「プラマイゼロかな」って答えて洋館の中に入る。

 ちなみに、怖いのと楽しみなのでプラマイゼロだ。

 怖いっていうより、雰囲気を味わいたいというか…

 思ってたのと違いすぎてて、まだ気持ちの整理ができてないような感じ…


 ガンッ!


「ぎゃああああっ!」

 いきなり大きな音がして、辺りが真っ暗になった!

 ぼく達が館の中に入った瞬間に鉄製の扉が勢いよく閉まったみたい!

 いいや、閉ざされたみたいだって言った方が良さそうだよ!

 ぽつぽつぽつと館の中の灯りがついていく。

 それは当然のようにキャンドルだった。

 蝋燭に勝手に火が灯っていくとか、幽霊が住んでるアピール以外にはありえない気がする。

 ここが地球だったら本当に怖かったよ。

 まあ、異世界だしこれくらいありえるよね、多分。

 でも一言、あの台詞をここで言っとかないとね。

 ぼくはジゴクちゃんと顔を見合わせた。

 ジゴクちゃんも今のにはびっくりしてたみたい。ぼくの視線の意味が分かったみたいで頷いてくれた。

 ぼく達は息を合わせて叫ぶように声を重ねる。

「ホラー映画か!」

 


更新を待ってる方が万が一にもいたら大変長らくお待たせしてしまいました!

しばらくの間は何を書こうとしても「暑い暑い暑い暑い…」に脳内変換されてしまって色々と駄目でした。冷やすとお腹痛くなるし困ったもんです。


そして、このままホラーな展開には、残念ながらなりません。

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