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HEAVEN AND HELL  作者: despair
三日目、乱堂汕圖戦
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三日目、vs汕圖戦④ 山吹さんの参戦

シーンは少し戻って、汕圖戦①の続き、乱堂汕圖らんどう さんずに投げ飛ばされてぶっ飛び中のテンゴクから話が始まります。



「それじゃあ、ばいばい」って投げ飛ばされたぼく。

 マウピーが居なくても実は飛べたんじゃないかって思えるくらい、ぼくはすいすいと空を飛んで行く。

 スケルトン達も追いかけて来てるし、どうしたら良いかな…

 うーん、骨人間が整列してマラソンしてるみたいでちょっと面白い…

 って思ってる場合じゃないよね。

 地面に落ちる前に何とかしないと、落下ダメージでゴブリンみたいに「ぐぇす」って言うことになっちゃいそうだ。

 もう一回、マウピーを召喚してみようかな…

 いや、マウピーって今は高速で飛行中かもじれないし、呼び出した瞬間に事故とかやだしやめとこう。

 じゃあ、闘士になって受け身とるとかどうかな?

 うーん、ちょっとはましそうだけど、それならシールドにステータス全振りしとく方が安心かな。

 でもステータスの方にMP使い過ぎると、落ちてからスケルトンの群れにぼこぼこにされちゃいそうだよね。

 あぁ、どうしよ…

 詰んでるかな?

 んー

 でも、なんでかピンチって感じじゃないんだよね 。

 どっちかって言うと、汕圖さんずさんが居るジゴクちゃん達の方がピンチだよね。

 最悪はマウピーを召喚すればぼくは逃げられるかもしれない。

 あっ、そうだ!

 今『創天』の術を使って円盤だして、そこで立ってたらスケルトンも来れないよね!

 一先ずの無事と、作戦考える時間を得られるしちょうど良さそうだよ!

 よし、早速っ!

「『創天』!」

 うん!

 白い円盤出た!

 後は円盤に着地を…!

「ぐぇす!」

 おっとっと、自分の出した円盤にぶつかっただけなのにけっこう痛かったよ。

 地面に落ちてたら危なかったね。

 つい、ゴブリンの断末魔みたいな声が出ちゃった。

 まぁ、誰も聞いてなくて良かった。

 さて、円盤の淵から下を覗く。

 飛べないスケルトンは地面の上で立ち往生だよ。

「でも、空を飛んでる時より、こうやって覗いてる時の方が下を見るのが怖いのって何でだろう」

 落ちてるときより、落ちそうなときの方が怖いって変な感じ!

「そりゃあ、飛んでるときはどうにもならないけど、覗いてる時は手が滑ったりしたら落ちちゃうから、身体が緊張しちゃうんじゃない?」

 なるほど…

「って、うわっ!」

 いつの間にか、山吹さんが後ろに居た!

 びっくりして、危うく手を滑らせそうになったよ!

「あはは、びっくりさせちゃったね」

 まあ、こんな場所だと誰がどんな風に現れてもびっくりしちゃう気もするね。

「山吹さん!いつから此処に居たんですか!?」

「うん、今来たとこだよ?」

 そりゃあ、この足場の円盤を出したのが今だから、ずっと前から待ってたら父さん並みに怖い。

「えっと、状況の説明要ります?」

 山吹さんは乱堂汕圖を知らないだろうし、どっちが強いかもぼくには分からない。

 助けて欲しいけど、巻き込むことになったら嫌だな。

「うん、お願いするよ。私は、街から石精が飛んでくのが見えたから追いかけて来ただけなんだよね」

 ぼくは汕圖さんの方を指差して言う。

「石精の祠を出たら、あそこに居る乱堂汕圖って人が急に現れて、汕圖さんってジゴクちゃんの母親みたいなんですけど、でも、ジゴクちゃんとシュラちゃんが嫌な感じで拐われちゃったからマウプーに乗って助けに来たんです。でも、こうやって投げ飛ばされちゃって、戻ってきたら下に居るスケルトン達にシュラちゃんを襲わせるって言ってて…」

 うーん、長い説明はいらない気がして来た。

 ぼくも、状況がよく分かってるとは言えないんだよね。

「えっと、ジゴクちゃん達を助けて下さい!」

 ぼくはお願いする。

「うん、助けに行こう!」

 即答だった。

 これぞ山吹さんって感じだ。

 油断してると嬉しくって泣きそうになるような存在、強くて優しい山吹さんだ。

「それにしても、乱堂汕圖らんどう さんずかあ。このオーラ…、これは準備してきて良かったね 」

 ん、準備って何だろう?

 オーラって…

 うわっ!

 ジゴクちゃん達が居る方に光の嵐が巻き起こってるよ!

 インディゴブルーの中に黄色い粒がちかちかと瞬いてて、写真でみたことがある昔の夜空って感じの、あれがオーラなの!?

「のんびり話してる場合じゃなさそうだね!」

 って言ったかと思うと、山吹さんは左手でぼくを小脇に担いで…

 って!

 飛び降りたよぉぉぉぉっ!

 地面が急接近っ!

 うわっ、スケルトンが待ち構えてる!

 どうするの!?

 山吹さんが右手を地面に叩きつける動作をする。

 って、ふんぎゃあっ!

 急速に落下速度が遅くなったよ!

 その反動かな、身体が空に吹っ飛ばされそうな感じがしたのは…

 あっ、スケルトン達がみんな倒れてる…

「よし、行くよ!」

 そのまま走り出した山吹さん。

 うーん、無茶苦茶だ。

 スケルトンの群れっていう、ぼくの悩みが一つあっという間に消えた。

「あっ、テンゴク、私も一人じゃ乱堂汕圖って奴には敵いそうもないから、フォローをよろしくね!」

 えっ!?

 っていうか、ええっ!?

「あっ、MPの回復薬も渡しとくね」

 ポケットに突っ込まれた。

 いやいや!

「フォローって何したら良いんですか!?」

 この加速度の中で喋れるぼくを誰か褒めて欲しい。

 いや、昨日もこんなことあったけど、その時よりちょっとレベルも上がってるせいか少し平気になってる、気がする…

「ジゴクちゃんと協力して天化地化てんかちかーって感じで乱堂汕圖に隙を作ってくれたら十分だよ!」

 それなら、なんとか出来る気がする。

 って、何あれ!

「山吹さん!空から岩が落ちてきてます!」

 あっ、汕圖さんの姿も見えた!

 そして、シュラちゃんが、乱堂汕圖に立ち向かってる!

 ジゴクちゃんを庇って立ってるよ!

 凄い!

 でも危ない!

「ちょっと飛ばすよ!」

 ああ!

 こっちも危険だったっ!

 でも、あっちも危険だし我慢するよ!

 シュラちゃんへと迫る岩、っていうか隕石!

 絶対にメテオストライクとかって名前の術だよ!

 でも、それを自分の『翼』で受け止めようとしてるシュラちゃん!

 ああ!

 ダメだよ!

 無理だ!

 隕石を止めれそうにない!

 何であんなに頑張れるの!?

 どうにもならないことなのに!

 これで諦めても誰も怒ったりしないと思うよ!?

 あんなのに敵うわけないのに!

 そっか…

 そうだよね…!

 ぼく達が助けに来るって信じてるってことだよね!

 シュラちゃんから、ぼく達の姿が見えていたっておかしくはない。

 山吹さんの姿を見付けてたっておかしくはない。

 だったら!

 これは!

 もうちょっと早く走っても大丈夫ですよヤマブキさん!

 ぼくだって、我慢くらいできる!

 でも、ちょっと早すぎて口が上手く動かなかった。

 情けないね!

 そして…!

 間に合った!

 山吹さんが隕石を蹴った、んだと思う。

「ヤマブキ様…!」

 シュラちゃん嬉しそう、無事で良かった!

 でも、ぼろぼろだよ…

 安心したのか涙も出てる。

 ぼくは、汕圖さんのことがまた一つ嫌いになりそうだ。

「シュラちゃん! ジゴクちゃんを守ってくれてありがとう! 頑張ったね!」

 月刊ヤマブキを買ってるくらいに山吹さんのことが大好きなシュラちゃんに、その山吹さんから労いの言葉がかけられた。

 うん、すっごい喜んでる!

「後は、私に任せときな!」

  そして、乱堂汕圖へと向き直る山吹さん。

 ぼくはまだ担がれていて、その姿を敵に見られるのはちょっと恥ずかしかった。

 でも睨む。

「また、戻ってくるとはね。しかも、梅染の娘を連れて来るとは…」

 最初に見たときよりも凄い威圧感と溢れるオーラ…

 これはさすがに、ぼくでも怖いよ!

 立ち向かってたシュラちゃん凄い!

「ああ、あんたが乱堂汕圖か。確かにジゴクちゃんに似てるね…」

 ちぇっ、やりにくいな…

 そう、山吹さんが小さく呟いたのが聞こえた。

「どうやってこっちの世界に来たんだい?」

 地球と異世界イツ・ルヒの出入り口は二つだけなんだっけ…

 確かに、汕圖さんはどっちから来たんだろう?

「元々さ、私一人ならどうにでもなるんだよね。警戒するだけ無駄だよ」

 ワープとかしてたし、そういう能力ってことかな。

「ふーん、まあいいや… もう、ちょっと限界だし…」

 山吹さんが、抱えていたぼくを放す。

 ぼくが重かったのかな?

 山吹さんにも女性らしいところがあって良かった。

 そして久しぶりの地面だよ。

 砂地だけど…

 ん?

 突然、山吹さんの姿が瞬くように消えていた。

 そして、砂が巻き上がったかと思うと、乱堂汕圖が吹っ飛んでいった。

 あれ!?

 あっ!

 山吹さんが乱堂汕圖をぶん殴ったんだ!

「乱堂汕圖!私のシュラちゃんをいじめてんじゃねえよ!」

 あっ、そっちの我慢が限界だったんだ!

 殴るの我慢とか、喧嘩好きのヤンキーみたいだよ!

 でも頑張って、山吹さん!

 あっ、でもさりげなく『私の』って言ってるとこはシュラちゃんへのリップサービスかもしれない。

 怒ってるように見えてまだ冷静だっていうアピールを、ぼく達にしてるんだと思う。

 そう思いたい!

 さて、一人じゃ敵わないって言ってたし、ぼく達も全力でフォローしないとね!


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