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HEAVEN AND HELL  作者: despair
三日目、石精の祠
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三日目、石精の祠からの帰還。乱堂汕圖が現れた。


「えっと、精霊だったリプシー・マウレイは、『天魔契約』したから天魔のマウプーになったってこと?」

 まさか正式な名前がマウプーになるのかな?

「そーいうことさ!せっかく種族が変わるんだし名前も変えて心機一転したいじゃん?」

 そんな軽いノリで自分の名前変えちゃうんだね!

「マウプー・なんとかーって名前にするから、なんとかーの部分はテンゴクくんが決めてね。これからテンゴクくんと契約して天魔になる者には全員その名前がつくからね。さあ決めてね。今すぐに!」

「ええっ!?」

 昨日、ジゴクちゃんの名前を決めたばっかりなのに、何だろうこの名付けラッシュ…。

「そもそも、天魔ってどういう意味なのかな?」

 何か意味があるのなら、それを名前に使おうかな…。

「天の魔物とかじゃない?天国の使い魔かもね?マウプーも初めて聞いたので分からないのだー!」

 知らないんだ!

「もう、テンゴクさんが適当に決めちゃえばいいんじゃないですか?」

「ちょっと待って!さっきの名苻みょうぶみたいなやつに書いてないの?」

 ぼくはリプシー・マウレイを召喚した時に出してたクリスタルを思い出した。

「ふっふーん!人間と違って、そんなのリアルに見なくても意識するだけで情報にアクセスできるのさ!それによると…。ふんぎゃあ!」

 マウプー・フンギャー

 うん、ありかも…。

 って、どうしたのかな?

「マウプーのレベルが1になってる!あっ、名前はリプシー・マウレイのままみたい。残念だけど天魔になっても名前は変わらないみたいだぜ!」

 なにそれ!

 見ないで適当に話してたんだね

 ずいぶんなお騒がせキャラだよ。

「精霊になったときは名前が変わったから勘違いしちゃってたよ! あっ、加護の内容も変わってるかもしれないから気をつけてね!それじゃあ、マウプーは今度こそお部屋に帰るから!碧様の所に行くときは召喚お願いしましゃんせ!」

 それだけ言ってリプシー・マウレイはポンって消えちゃった。

 自由だね。

「ええっと…」

 今って何してたんだっけ…?

「ダンジョンマスターって、もっと怖そうなイメージだったんですけど…」

 全然おちゃらけてたね。

 なんて言うか幼い感じ。

「『地霊契約』の術の効果はまた今度に致しましょうか?」

 あぁ、新しく覚えた術の効果を確認をしてたんだった。

「うん、今日はそろそろ帰ろうかな?何だか疲れたよ」

 今日も朝から色々あったね。

 一日にレベルが5から18になったんだし、十分な成果があったと思いたいよ。

 あ、あと自称・天魔マウプーの加護を貰ったね。

 改めて見ると綺麗なアクセサリーだし、ただで貰えたのがけっこう嬉しい。

「そうですね。明日はここでレベルを上げちゃいます?」

「リプシー・マウレイが怒られるくらいに美味しいダンジョンなんだし、ちゃんと使ってあげた方が良いんじゃないかな?」

 ぼくの言葉にジゴクちゃんがこくりと頷く。

しかり、それが供養で御座いましょう」

 確かに…

「って、リプシー・マウレイは生きてるよ!?」

 あれ、この感じ…。

 なんだっけ…。

 あっ!

 ツッコミだよ!

 そっか、ジゴクちゃんが冗談言ったんだね!

「もしかして、ぼくと契約したから天国のリプシー・マウレイってことで供養になったの?」

「あー!そういうことですか!? 私は全然分からなかったですよー」

「リプシー・マウレイ様があまりにも思い付くままに喋っておられたので、こちも少し冗談を言ってみたくなってしまい…」

 ジゴクジョークは難解だったよ!

「でも、ぼくもテンゴクの父さんって人に言われた時に同じようなことを想像したっけなぁ」

 どっちかって言うと、父さんは地獄行きだと思うけどね。

「ふふふ。でもダンジョンの中でワドウキザシの話はもうしない方が良いと思いますよ。何が起こるか予想もつきません…」

 何その禁止ワード!

 でも「賛成!」だよ!

 多分、今回みたいな美味しい展開は期待しない方が良いと思う。

「そうだ! 明日、レベル上げてから碧さんのとこに行って良いかな?」

「碧様ですか…。テンゴクさん達は何の用事があるんですか?」

 どうしよう。

 シュラちゃんって、碧さんのこと怖いんだよね?

 いつか倒したいから、試しに戦ってみるってこと、言わない方が良いのかな…。

「テンゴクの母上のことを、教えて頂く約束をしているので御座います」

 うんうん。

「ほへ…。それは大事なことですね」

 この世界に居るなら、こっちの世界の人なのかな…?

 だから地球には来れないのかもしれないね。

「左様に御座います。碧様との勝負に勝てば教えて頂けるのです」

 あっ、言っちゃった…!

「へ!?」

 あはは…。

「レベル3000ないと勝てないって言われたけど、試しに戦ってみようと思ってさ」

「それって自殺行為じゃないですか!?」

「あはは。どんな感じなのか参考までにね」

 流石に殺されたりはしないと思う。

 何だかんだでいい人だしさ。

「はぁ…。もう何も言いませんが、私も立ち会わせて下さいね。見届けさせて頂きます」

 これは、変なことにシュラちゃんを巻き込んじゃったかな…。

 まぁ、ちょっと戦ってみるだけだし、大丈夫だと思うけどね。

「さて、回復したら外にワープしちゃいますよ」

 ぼく達は頷く。

 回復ポイントのクリスタルでダンジョンからの脱出もできるらしい。

 便利だね。

「それでは…。『リターン』!」

 

 そして、ぼく達は石精の祠から、元のテントへと戻っていた。

 だけど、そこには誰も居なかった。

「エルピー、待ってるって言ってたのにね」

「トイレかもしれませんよ」

「外に出てみましょう」

 うん。

 ぼく達はテントの外に出る。


「やあ、はじめまして」

 へ?

 いきなり声をかけられた。

 とても柔らかな声だった。

 空気の中にとけてしまいそうな、透きとおるような声…。

 白衣着てるから不審者なのは間違いないよ。

 30才くらいのおばさんだけど、ちょっとジゴクちゃんに似てる…。

 って、親子みたいにそっくりだよ!

「誰ですか!?」

 ジゴクちゃんの関係者なら、本当に親子でも敵かもしれないよね!

乱堂らんどう 汕圖さんずだよ。覚えておくと良い 」

 うん。

 研究者みたいな白衣に名札も付いてる。

 『新世界レナトステラ叡智ソフィア』の室長『乱堂らんどう 汕圖さんず』って書いてるよ。

「さて、私の供物むすめが拐われたと聞いてね。取り返しに来たんだよ」

 声色は優しい感じなのに、ぞわぞわとした悪意を感じるのはなぜだろうね。

「ジゴクちゃんをどうするつもりなの!?」

 ぼくの納得できる、真っ当な理由が聞けたら良いな。

 期待はしてないけど。

「ああ。地獄と名付けられてしまったのだったね。すると、君がきざしの息子かな」

 ぼくは、うなずく。

「なるほど。では、今度は君を拐ってきざしへの仕返しとしようかな」

 それは、全然嬉しくないなぁ…。

 でも、そんなことよりも…

「ちゃんと質問に答えてよ!」

 汕圖さん、ジゴクちゃんそっくりなのに、脅して話をらそうとするとか乱暴で嫌な感じだよね。

「はははっ。君って、肝が座っていってるように見えるけど、身の程が理解できないだけなのかな?」

 汕圖さんがぼくの後ろの方を指差した。

 あれ!?

 ジゴクちゃんもシュラちゃんも震えてる!?

 怯えてる!?

「テンゴクさん…その人は危険過ぎます…」

 危ない人だと思うけど、そんなに怖いのかな?

「際限無き力と悪意を感じます…」

 ジゴクちゃんまで怖がってるって、今までに無かったよね。

 あっ、ヤマブキさんと飛び回ったときは怖かったっけ。

 気絶までしちゃったくらいだもんね。

 それでも、怯えてはなかったんだよね。 

「そなたが、こちの…母上なのですか…?」

「そうだよ」

 汕圖さんが、いつの間にかジゴクちゃんの横に立っていた。

「さあ、良い子だからお家に帰ろう」

 汕圖さんが、ジゴクちゃんの頭をよしよしと撫でる。

 親子なのに、その光景が何故か薄気味悪かった。

「嫌で御座います!」

 ジゴクちゃん、怖がってるけどはっきりと言い返した。

 良かった。

「そうかい? じゃあ、悪い子だから連れ帰ってお仕置きするとしよう」

 もう!

 何その理屈!

「ちょっと汕圖さん! ジゴクちゃんの話をちゃんと聞こうよ!」

 横暴なのは許せないよ!

「君はうるさいね。少し、場所を変えるとしようかな」

 うるさいって言った!?

 って…

「えっ?」

 ぼくの間抜けな声が、とてもはっきりと聞こえた。

 その声が去った後には、静寂しか残っていなかった。

 ここにはもう、ぼくしか居ない…

 ジゴクちゃんもシュラちゃんも、汕圖さんまで消えちゃった!

 瞬間移動かな?

 汕圖さんのスキルだと思うけど…。

 ああもう!

 目の前で、二人とも拐われちゃったよ!

 

ジゴクちゃんの母親登場で、事態は急転直下です。

おちゃらけ天魔のリプシー・マウレイからの温度差が激しすぎましたね…。

次回は追跡シーンから始まります。

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