◇6◇◇日本の食文化ナメんなよ?(笑)
◇◇◇◇
一時はどうしたら良いのか途方に暮れたけど。
ホント竈があって良かった。
石窯オーブン!
ちょっとだけどメニューが拡がったよ!
無かったら何とかして、造らせちゃおうと思ったもん。
学生時代に、先輩の実家所有の別荘で造った経験生かして!
ま、お手製のピザ窯もどきになるだろうけど。
でも、窯の使用は、現状ではパンもどきを焼く以外使わないらしい……。
勿体無いでしょ?
確か昔聞いた事があったよ。
友達がバイトしてたオシャレなパン屋で臨時バイト入った時にさ。
『高温で一気に焼けば肉や魚介の匂いなんて早々付かない』
確かに惣菜パンとかどうする?って話になるもんね。
更に残念過ぎる事に!
発酵パンが無いんだよ……。
イーストも酵母も無い。
柔らかいパンが食べたいよ!
せめて、ふくらし粉って無いのかな?
知識が無いんだね。
この世界の常識として。
……いや、欲求が無いのかな?
美食とか健康食とかにさ。
うう……相容れられない。
元日本人には耐えられない!
海外の菓子職人も完成度に吃驚なお菓子をコンビニで買えちゃう日本人には!
……気を鎮めよう。
まずは夕食メニュー!
前菜はこの海老味の多分芋(身がピンク)な!
摺り下ろして練って…あ、根菜もどきの温野菜を刻んで入れるか?
んで、整形…入れ物はボウルみたいな銀食器かな?
そんで蒸し上げたら冷やして、ボウルから出す。
プリンかって(笑)。
ケーキ風に切り分けて盛り付け(飾り切りもして)。
サラダは葉野菜中心にしよう!
生は衛生面で怖いから、軽く茹でて……ホウレン草もどき(紫)アスパラ(赤)もどきといんげんもどき(黄)とスゴい色味。
ドレッシング代わりには……。
トマト(濃緑)はザク切りのクラッシュにして。
白いシンプルなサッパリ味の岩塩と、磨り潰したバジルもどき(白)を加えて。
お酢が無いから柑橘類は…柚子もどき(皮が青)鑑定すると果汁はかなり酸っぱいらしい。
皮も香り付けでみじん切り!
うん、何とか完成だね。
スープはまず、黄色いキャベツもどきを茹でて磨り潰し裏ごしする。
熱が入るとコレぐずぐずに崩れるんだよね。
味はほぼ、コーンミールだよ。
(その内コーンクリームコロッケもどきとか、作れるかもね。)
強いコクのある干し肉を細かく刻んで出汁を取り、塩を加えたスープを越して。
2つを合わせてコトコト煮込んでカサを減らし、最後にミルク(特濃)を加えた。
コンポタもどき完成(笑)
魚料理は大きな鱒に似た白身魚を使おう。
緑がかった岩塩は……焼き塩に似た味だな。
それとローズマリーもどきを振り掛けて、薄いガーゼみたいな布で包んで蒸した。
後は表面を、バターもどきでカリッとソテー。
口休めは…氷菓子!
料理長が氷魔法を使えるんだね!
ファンタジー万歳!
その内アイスクリーム作らせる!(野望)
氷魔法は水と風属性の複合で使える人が少ないらしい。
攻撃に出来る程、強くは無いそうだ。
(そういう人は料理人になる事多いらしい)
ドロッとしたマンゴーもどき(味はミントライム)のソースと合わせて小さな器に。
肉料理は……この丸鳥(牛豚合挽き風味)。
熱が入ると肉がほろほろ柔らかく崩せるみたい。
なら、最初から挽き肉にして、ハンバーグにでもしろってか?
でもね。
胡椒が無いから止めた!締まらない味にしかならないもん。(泣)
まずは腹の中をキレイに洗って。
こっちはコクのある黒い岩塩とローズマリーもどきとニンニクもどきのスライスを刷り込む。
腹に玉葱もどきジャガイモもどき蕪もどきと人参もどき等々野菜を詰めて入口金串で縫い付ける。
だってたこ糸無いんだもん!
まち針みたいに金串何本か使うしか無かったんだよ!
肉汁を逃がさない為に皮の表面を軽く炙ってから、天板に載せて石窯オーブンにイン!
火がじっくり中まで入ったら、最後の仕上げに表面に蜂蜜もどきを軽く塗って皮がパリパリになるまでもう一焼き。
後は食前に切り分けかな!
デザートどうしよう?
ん?
干しスライム~っ!?
スライムが存在するんですね、この世界!
あ、スライムって養殖されているんだ……。
病人にも吸収が良いのか。
……成る程、核を丁寧に抜いて干すとゼラチンもどきになるんですね~。
見た目は乾物の干しクラゲ。
水に入れて熱すると溶ける。
冷やすと固まる。
まんまゼラチンじゃないか!
じゃあ、果汁と果肉を入れたゼリーでも作ろう!
彩り華やかになるしね!
果物は基本的にどれもこれもクドい位に甘味が濃厚。
柑橘類は酸味がスゴいし。
果汁は……薄めないといけないな。
果肉も小さめのサイコロ状態が良いのかな。
気を付けて使おう!
主食は小麦粉っぽいものを……よし、粗挽きみたいだし自家製パスタ作るか。
野菜の練り込みは……止めとこうかな。
基本のシンプルな麺にしようか。
型はきしめん的な感じで良いかな?
僕がタリアテッレ好きだからね。
生地捏ねて。
寝かして。
薄く伸ばして。
麺切りして。
しっかりバラしてから、たっぷりのお湯で茹で上げて。
軽くバジルもどきソースで和えよう!
飲み物、子供は果汁の水割り。
大人は…お酒も有りだな。
その辺のチョイスは各人に任せよう!
メニュー決めて。
使う素材を決めて。
調理法を教えて。
味付けの調整指示。
よし、終わった。
満足!!
後は料理人さん達のお仕事。
お任せします!
一仕事終えたね!!
全体的にこの世界の食材って色味が激しいし。
でも、熱いれるとガラッと色が変わる食材も多いし。
ホントぉぉぉっに彩り考えるの大変だったよ!
あれ?
反応が無い?
料理番の皆さんが呆然としてる。
僕の説明悪かった?
解らなかったのかな?
どうしよう?
「お嬢様!何時こんな斬新な料理を思い付いたのですか!?」
くわっと料理長が僕に食い付いてきた。
眼が爛々と光り血走ってて怖いよ!
ぐいぐいと肩を揺さぶられてる。
鬼気迫る迫力満点!
顔近い、近いからぁ!
あ、エレナに抱き抱えられた。
救助成功!
エレナが料理長を睨んで牽制してる。
料理長と距離が離れてほっとした。
「…寝込んでいる間に、ね?どんなものが食べたいか考えてみたの」
エレナに下ろして貰ってから、改めて料理長に向き直って答える。
小首を傾げる定番のあざといポーズ炸裂だ!
どうかな?
誤魔化せたかな?
ちょっと背中に冷や汗が……。
しばらく誰も身動きすらしない。
無言……。
沈黙したまま動かない。どうする?
どうしたらいい?
無事に切り抜けるには……。
じっと俯いていた料理長が、勢いガバッと顔を上げた。
ゲッ、オッサンの泣き顔!
キモい!!
涙ダーダー、鼻水ズルズル。
「素晴らしいです!!こんな料理今まで思いつきませんでした!」
「当たり前です!お嬢様は世界一素晴らしい方なんですから!」
エレナが如何にも当然と、鼻息荒く言い切った。
何でそんなに自信満々!?
はい、僕を絶讚・全面肯定……。
通常運転ですね。
もう何も言いません。
あぁ、疲労感がハンパ無い……。
疲れきったよ。
主に精神的な意味で。
夕食の仕上げを頼むと、僕は厨房を後にした。
◇◇◇◇
部屋に戻るとまたお着替え。
午後用のドレス。
本当に疲れる。
毎日リアルに着せ替え人形だね。
「今日は何をなさいますか?」
エレナが嬉しそうに聞いてきた。
暫くは病み上がりだからって、僕の教育は中断されてる。
家庭教師はお休み中。
ちっ、僕は早く文字をちゃんと覚えたいのに!
記憶が戻る前は机に向かうのは嫌いだった。
実質、机で何か書くとする。
猫背で顎を引く。
……お腹と喉の脂肪で苦しいんだよ。
くそぅ!
勉強は嫌いでは無いらしい。
単に苦しいから、ってだけで。
だから文字の読み書きがまだ覚えられてない。
ソコから中々進まない。
身分制度は先生が1番に覚える事として、講釈を垂れてたから。
1回聞いただけで内容を正確に覚えていたんだから、元々馬鹿では無いだろう。
ただ、机に向かうのが嫌なだけで。
うん、やっぱりダイエットは早急に成果を出さないと。
「……そうね、御本を読んで?」
「はい、かしこまりました!」
即答ですね。
エレナは子供向けの絵本を読んでくれた。
僕を膝に座らせて。
うん、この態勢なら苦しくない。
……でもハズイ。
だがしかし!
文字をちゃんと覚えないと。
城内には結構大きな書庫もあるから。
結構大きな中央図書館並みの蔵書がある。
文字を覚えられたら、自分で選んだ本を色々読めるし。
知りたい事はめちゃくちゃ沢山有るんだ!
魔法とか!
錬金術とか!
リアルに在るんだよ!
そんなの知ったら我慢出来ないよね?
元理系男子としては興味津々は当たり前!
わくわくが止まらないよ!
文字を覚えたら……書庫の本を隅から隅までガッツリ全部読み尽くしてやるんだ。
知識欲万歳!
活字中毒と言いたければ言え!
仕方ないから、何日かは絵本を読んで貰う。
そんでもって、文字をしっかり読めるようにするんだい!
◇◇◇◇
夕食には又々お着替えタイム~!
……まぁ、
夕食前にバスタイムが有ったけど………。
聞かないで………。
お貴族様のお嬢様がする入浴なんて……。
ご想像にお任せします!(泣)
そして、相変わらずのフリフリドレス。
ちょっとうんざりだけど、とりあえず食堂に行きましょう。
人間諦めも肝心なんだよね……。
あ、やっぱり。
今回も僕が最後。
皆さん勢揃いですね。
おかしいな。
時間に遅れている訳じゃ無いのに。
何でいつも僕が最後になるんだろ?
ま、いいか。
今日の夕食は楽しんで下さいね!
思わず口元がニヤける。
食文化の大革命だよ!!
「今日の夕食は私が献立を考えました。みんなに気に入って貰えると良いけど……」
「「「「ええっ!?アルフェミナが??」」」」
「ねえたま、作ったの?」
吃驚してる!
そりゃ、ね。
だがしかし!!
驚くのはこれからなんだよね。
ふっふっふっ。
「寝込んでいる間に、どんなものが食べたいか考えてみたのです」
これで全部押し通す!
さぁ、みんなでディナーだよ!
しっかり食べて驚いてくれよ!!
……大絶讚!
当たり前だよね~。
今までの味付けが単純だったもんね。
大体が塩味。
まぁ岩塩が色々な種類が在ったけど。
海塩は砂混じりで質が悪い物しか無いんだって。
平民の中でも生活が苦しい最下級の人達しか使わないんだって。
製塩方法が相当原始的なんだろうね。
その内出来そうな製塩方法教えてみようかな。
あ、親切って訳じゃないよ。
ニガリが欲しい。
豆腐作りたいんだよね~。
副産物でできるからさ。
現場見ないとどうにも出来ないけどね。
大体に於いてさ。
僕としては未だ未だ不満だらけだよ!
足りないモノが山程あるし。
胡椒とかの各種香辛料は勿論のコト。
生姜とか。
ニンニクもどきは有ったよね。
あとハーブ!
もしかしてこの国じゃああんまりハーブって使わないのかな?
でも、ハーブには色々薬効とかもあるんだから使いたいよね!
そういえば!
カレーが食べたい!
それも本格的インドカレー!
僕はカレー好きだ。
週1でじっくり本格カレー作ってストックする位好きだ!!
それから。
窯があるからピッツァに……!
あぁ、酵母があれば……イースト菌もどきでもいいから。
何か代替品でいいから無いの?
柔らかいフカフカのパンが食べたい!
納豆や豆腐も…和食全般好きだし。
無ければ材料探して作るしか無いよね!
頑張ろう!!
目指せ、豊かな食生活!!
……自重?
何それ?
何かの役に立つの?
満足出来る食生活のが大事だよ!
食事って長期間になると、我慢が効かないモンなんだよね。
会社の研修合宿の時を思い出す。
会社の保養所にカンヅメにされて。
専用食堂だけでの2週間の食事の微妙に残念な味付け。
とことん思い知ったよ!僕には無理!!
忍耐の限界!!
心の荒み具合がハンパなかった。
だから……僕の精神衛生の為なんだよ。
そうだよ!
自重なんて考えないもん!!
たとえ食文化を魔改造しようとも!
覗いてくれてありがとうございましたm(_ _)m
異世界の野菜はスゴい色彩でした!
前世の常識通用しない!
それでも何とかもどき軍団でどうにかする、力技です。
これからどうなる?
明日はどっちだ!?
主人公、衝撃の余り自重を捨てました。(泣)
12/30改稿しました。