◇15◇◇現実って納得いかないもんだよね?
今回は亀進行の私にしては、結構早目に書けたかなぁ(((^^;)
今回はザレクの態度が、どうして傲岸不遜になってたのか。
どうしてグラムが大人対応だったのか。
その辺ちょっとご説明回になります。
あ、そうだ!
前回ちょっと失敗して修正入れました。
余りにもキモチワルかったので。
主人公のパパリンへの報告の言葉使い!
完全に女言葉だよ!?
ナイナイ!!
と、ソコだけ慌てて直させて貰いました。
すみませんm(_ _)m
本人まだ精神上は男の子から抜けられないので、女言葉は礼儀作法の講義中でもないと、精神的な忍耐力がガッツリ削られるのでダメです。
耐えられません。
講義中は『私は女優~!』と、自己暗示しながら何とか乗り切っている位ですので。
◇◇◇◇
やや薄暗い見覚えない部屋の中で目が覚めた。
ぼんやりと様子を伺っていると、寝台を覆うような薄く視界を奪うカーテンの向こうに、動く人影が見える。
そっと起き上がる。
あ、新しい寝間着に変わってるや。
そりゃ血の汚れって早く落とさなきゃ染みになるもんね~。
うん、身体はもう大丈夫、何処も痛くない。
ただ、お腹はガッツリ減りました。
ペコペコです!
うぅ~っ。
ツラい……。
治癒で代謝上げた分、エネルギーも消費したみたい。
僕が寝台の上で悶えていると、気配を察して声が掛けられた。
「お嬢様、気が付かれましたか?」
あ、ユーシスさんだ。
そっか、此処って治癒室の寝台なんだ。
「はい、お手数お掛けしました。」
カーテンをそっと開けたユーシスさんが、安心したみたいに溜めた息を細く吐いた。
すみません。
ご面倒お掛けしてます。
平謝りですね、心の中では!
「あぁ、ご安心下さいね。寝間着はあの後直ぐに気が付かれた乳母殿がご用意下さって、着せて頂きましたから」
申し訳なさそうに寝台脇の椅子に腰掛け、穏やかに説明してくれた。
うん、やっぱり癒し系だなぁ、このヒト。
顔を合わせるとほのぼのするよ。
治癒師ってみんなこんな感じなのかな?
ユーシスさんだけかな?
治癒師ってのは神職なんだよね。
確か聖魔法と水魔法と光魔法の、3つ全て適性が無いと治癒魔法は使えないんだ。
聖魔法関連は神殿の管轄だから、治癒師は基本的には神殿の所属になるんだよ。
聖魔法は他の魔法属性よりも、適性者がメチャクチャ希少なんだ。
聖魔法は障気の浄化に必須だからね!
強い魔物の心臓に在る魔石を含めての魔物素材は勿論、魔境の開拓や魔物の大暴走で汚染された土地なんかの、浄化全般に欠かせない。
それに、魔境の侵食をを食い止める為の結界にも、聖魔法は不可欠だからホントに貴重な属性なんだよね。
「大丈夫ですか?あんな大怪我をなさったら、お心に負担が掛かるのも解ります。よく我慢なさいましたね?」
ぼんやり考えていた僕にユーシスさんは心配して話しかけてくれた。
大怪我って…やっぱり背中のアレですかね~?
もう、治ってるよね?
大丈夫なんだよね?
「…そんなに酷かったのですか?」
恐る恐るユーシスさんに尋ねる。
知るのは怖いけど、一応知っときたいかな?
「……背中全体が赤黒く痣になっておりましたし、肋骨も2本罅が入っていたのですよ?内臓にも衝撃で影響が出ていましたし、普通の子供なら、怪我を負った時に気を失ってしまった筈です。お1人で此所まで歩いて来られたなんて、本当に信じられない位の大怪我だったのですよ?」
ぐはぁッ!
自爆だぁ~っ!!
今更ながら、冷や汗が背中を伝ってくる。
顔が強張って巧く言葉が出てこない。
「……もう、大丈夫なのですよ、ね?」
乾いた口の中を、漸く意味が通じる言葉が通り抜ける。
「ええ、勿論。ちゃんと完治いたしました。以前臥せっておられた時より、随分と体力が付いたみたいですから。無理なく治す事が出来ましたよ」
優しく諭すみたいにユーシスさんが僕に微笑んで返事をしてくれた。
良かった~!
体力増強しといて!!
じゃなければ、残りの体力の様子を看ながら段階的に治癒して貰わなきゃならなかったんだ。
頑張ってて良かった!
それはそうと、僕が寝ちゃった後は何か進展は有ったのかな?
ユーシスさんは何か聞いてるかな?
「ところで、私が怪我を負った経緯はご存知ですか?グラムは大丈夫でしょうか……」
うん、それが1番心配なんだよね。
知ってたなら教えて欲しいな~っ。
ちょっと困った顔になったユーシスさんは、仕方ないとでも言いたげに応えてくれた。
「気が付かれた乳母殿と閣下の補佐官の方に事情は伺いましたが、それ以上は……。」
あ~、そうですか。
ガックリ……。
俯いて黙ってしまった僕に、ベッドの傍に置いてあったワゴンの上の蓋を取ってくれた。
「食事が届けられています。食欲がございましたら召し上がって下さいませんか?」
うぅ~っ、忘れてた!
喜んで頂きます!!
おぉ、やった!
パンケーキ再び!!
プリンも有るし。
ピッチャーには柑橘系のジュースかな?
まぁ、身体がビックリしちゃってるから、あんまり重い物は食べない方が良いよね。
僕はありがたく食事をさせて貰った。
「そのままで構いませんので、少しお話させて頂けますか?」
少し哀しそうなユーシスさんは、思いきった様に僕に語りかけてきた。
僕の口には一杯に詰め込まれたパンケーキで埋まっていたので、ユーシスさんを見て頷く事で先を促した。
僕の返答を見て取ると、ユーシスさんは続きを話し出した。
「この度の件には私も責任を感じているのです。お嬢様には難しいでしょうが、お話した方が良いと考えました。」
ユーシスさんはそう言うと先ず僕に向かって頭を下げてきた。
どゆこと?
ユーシスさんに何の関係が出てくんだろ??
「元々の問題は神殿と魔法院の間の軋轢が原因なのです。大人の事情に貴女の様な幼い方を巻き込んでしまい本当に申し訳ありません」
ユーシスさんは僕にも理解るよう、噛み砕いて教えてくれた。
様々な資格にも発行を管轄している場所は幾つも在る。
神殿は基本的に国際資格なんだけど。
此所は聖魔法属性を持たないと、資格は一切取れない。
対魔物専門の戦闘職で聖騎士。
最低限、聖魔法属性+基本属性の魔法のいずれかが必要になる。
これは、其々の各神殿に所属すると神殿騎士という所在地の国家資格も取れる。
浄化専門の祈祷師。
聖魔法属性+光魔法属性が必要になる。
こっちは同様に神殿に所属すると、神官資格が貰える。
文字通り治癒魔法専門の治癒師。
聖魔法+光魔法+水魔法の3つの適性が必要になる。
そして、神事で天啓を授かって、様々な先見の予言をする巫子。
聖魔法+闇魔法+風魔法の3つの適性が必要になる。
この2つの神職は貴重な人材だからこそ国際資格だけ。
大国が独占して囲い込まない様に、神殿が庇護している。
そして、国に所属出来るのが、以下の準神職になる。聖魔法の魔力が弱くても薬草や薬物の知識と、調合技術をマスターして取れる資格が薬師。
ちゃんと努力すれば大体取得可能の資格だ。
勿論、腕の良し悪しは有るんだけどね。
聖句と神曲を使って結界の補強を司るのが神曲楽師。
7000を超える聖句と3000を超える神曲を正確な発音・音程・音の長さである事が重要なので、聴き分けに優れた耳と絶対音感に、演奏技術と歌唱力、そして最後に全てを暗記する記憶力と、実に厳しい条件が有るらしい。
中には、宮廷楽師を兼ねている事も有るらしいが、国の束縛を嫌う楽師は其なりに多く、そうした者達は国々を股にかけて旅をしながら吟遊詩人をしている。
対して国家魔法院では、魔法関連の国家資格を一括して取り扱っている。
まずは魔法教導師。
略称で魔導師。
これは、魔法教育者の国家資格でも有る。
様々な学舎や専門に関わらず、魔法絡みの科目を担当する講師は、必ず所持しなければならない必須資格だ。
魔法師。
公民問わず、魔法関係の職種は必要だ。
理解りやすいのは攻撃や防御の戦闘職。
勿論、軍属や宮廷魔法師もね。
それ以外は、精霊魔法で雨を降らせたり、地質を改良して農耕地を作ったりする生産職かな。
召喚師。
魔物に霊獣や聖獣、伝説上では神獣を使役出来る魔法契約者。
高難度の、魂同士を深く結ぶ制御が難しい無属性魔法の希少資格。他人に召喚獣との契約を施す事も出来るけど、対象の契約者は魔法師レベルの魔力が無いと、失敗して喰い殺される事も在るので、魔力の高い貴族が護身の為の依頼が多いらしい。
民間には只、家畜の様に飼育し転売する無資格者の商人も存在するので、召喚ではなく此方から希望の魔獣を購入して契約に臨む場合も多い。
魔法技巧師。
略称は魔技師 。
文字通り魔道具制作の専門家。
魔法適性は勿論、土木や鍛冶の生産・建築系資格も無いと取れない技術者系の国家資格。
そして件の錬金術師。
様々な素材を錬成して、上位物質を精製する。
他にもゴーレムなんかの魔法による疑似生物を作成する。
魔法制御に特に秀逸で魔力にも優れていないと取れない資格。
精製される品物金属は勿論、魔法薬もある。
そう、魔法薬だ。
これが重複領域、ファジーな部分ってヤツだ。
治癒師は希少で、基本的に大きな街の神殿にしか居ない。
小さな聖殿でも1人はいるのが薬師だ。
民間ではそれなりの規模の村にもいて、薬屋を営んでいる。
薬草栽培に場合によっては野生の薬草の採取。
保存処理に調合。
あくまでも、平民に手が届くレベルの金額で。
対して魔法薬は、効果に差が有るし効能も千差万別だが、総じて高価だ。
それでも、加工の下処理済みの薬草を使って錬成した魔法薬は、どんなに腕の良い薬師が調合した薬でも、効果か遥かに上回る。
だから、軍の任務で常備するのは魔法薬になってしまう。
冒険者でも、金銭の余裕が有れば魔法薬を携帯している。
腕利きの錬金術師が造る高級な魔法薬は、只の薬じゃあない。
命に関わる怪我を短時間で治す治癒魔法にも匹敵する。
障気の汚染や毒物や病気での状態異常にも効果が高い種類の魔法薬も存在している。
だからこそ、戦闘や災害の現場で手軽に応急手当てが出来るとあって、魔法薬は重宝されるんだ。
只、それでも万能なワケじゃあ無い。
当然リスクもある。
使い過ぎると効果が弱くなり、中毒性がある。
効果は一定だから、完治出来ない場合もある。
そして体力が衰えていた場合、毒物に等しいから使えなくなる。
だから、神殿の治癒師と反目して、魔力の足りない薬師を下に見て侮蔑する流れになる。
国家に属する魔法院と、国際非営利団体の神殿。
そこから、既に軋轢が在るんだ。
でも、魔法院だけで賄えない分野がある。
聖魔法だけは神殿でなければ習得出来ない事自体も、魔法院にとっては看過出来ない問題なんだろうな。
そこら辺も神殿は不可欠だけど、魔法院のが偉いってパフォーマンスしたくなっちゃうんだね?
そんで現場が影響受けて、問題が起きる。
今回みたいに。
ザレクは天才らしい。
錬金術師としては、最高資格を持っていて、お父様がスカウトして鳴り物入りでウチに就職したのが15歳位の頃だったんだって。
普通なら、すんごい若過ぎるけどね?
飛び級ってヤツらしい。
んで、今回の疫病騒動で公爵家の僕を治せなかった。
だって体力無さすぎだったもん。
最初から、魔法薬NGでしょう?
出来るコト無いよね!
まぁ、他の家族は魔法薬イケたけどさ。
そんで、事情もロクに判ってない魔法院のお偉方から、不興を買ったらしい。
僕が飲んでたのはグラムが調合した薬湯。
回復してきたトコで、ユーシスさんの治癒魔法併用。
僕に関してのみ、完全に神殿側の独壇場だった。
…う~ん、難しい状況だったんだなぁ。
訊いてみると、色々思うトコも考えさせられるトコもある。
ザレクが若くて天才ってのも、魔法院のお偉方には勘に障っていたらしいし。
老害共の嫉妬とか、下手に権力はガッツリ持ってる分相当な嫌みとか嫌がらせ受けたのか……。
いや、僕のせいじゃあ無いけど。
普段から生意気なんでヘコませたい若造だったんだよなぁ。
いや、僕にヤった事は赦せないよ?
でも、一概にワルモノ認定出来なくなっちゃったよ?
うぅ~っどうしたら良いのかな?
僕が食べ終わった体勢のまま悩んでいると、泣き笑いみたいな表情のユーシスさんと眼が合った。
「…余り思い悩まないで下さいね?ただ、私は必要な罰以上にお嬢様に錬金術師が冷遇されるのは、公爵家に善くないと感じるのですよ。風評の如何に関わらず誰しもがキチンと正当な評価を受け、其々の待遇を享受出来れば、その方が良いでしょう?」
ユーシスさんは僕の夕食の片付けを始めると、立ち上がりカーテンを閉める。
今晩は様子を見るので、このまま此方で休む様にに僕に告げて明かりを消した。
僕は横になってから、色々考えた。
どうすれば、正しいとか僕は善人ってワケじゃないからに判断するのは難しいし。
でも、納得出来ない結果を聞かされるのはイヤだから。
『どうすれば僕が(・・)納得出来るのか』
如何でしたか?
まぁ、事情が有ろうとダメなもんはダメだと思いますが。
無関係の幼女へ暴力振るうなんて、ヒトデナシですよね!
さて、ジャンル恋愛なのに、作中の時間軸が2年ばかり進まないと、入って来ません( ̄○ ̄;)
ジャンル詐欺と云われそうです。
深刻な恋愛成分欠乏になってしまいました。
そして、現実逃避大好きなこの駄猫は、もう1つ新しいお話を書き始めました。
ホントただでさえ、亀進行なのに、自滅行為ですね(+_+)
活動報告で提案して、反応が有ったお話をとりあえず1話だけアップしてみました。
こっちの方が早く恋愛成分高くなるかな?
良ければ気が向いた時にでも、ちょっと覗いて下さいね。
(コッソリ駄猫な私が、自室で猫踊りを展開して喜びます。)