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今回は”我の鏡”の神子ルリアが教会本部に来ることになった時のお話です。

一番初めに教会本部に来た神子、ルリアが教会に来ることになった理由とは?



朝、カーテンの隙間から差す光で目が覚めた。

目覚めは割といい方だと自分でも思う。

ほんの……ほんの少しだけでもいいから、隣に住む幼馴染にもそれが分けられたらどれだけいいだろうか。



今日も隣からシンバルの音が鳴り響く。

寝起きの悪い幼馴染の為に我が家に置いてあるものだ。妹がまたせっせと起こしに行ったのであろう。

しかし、何時もより早い。何故だろうか…



「あ、おはようございます、ルリア。」


妹…ルーリィが帰ってきた。

寝癖がついたままの幼馴染…ヴェルディスと。


「おはよう。ヴェルディス、寝癖。」


「えー、別にいいじゃねぇか。家の中なんだし。」


決してヴェルディスの家ではない筈なのだが、私達もヴェルディスも幼い頃からずっと一緒に育ってきたので最早互いの家は我が家のようなものなのだ。


しかし、それでも家が繋がっているわけではないので行き来するには外に出る必要性がある。


「うちに来ている時点で外には出ているでしょう。」


「ちぇ、細けぇの。」


私が細かいのだろうか、ヴェルディスが無神経なのだろうか。

あまりにずぼらなヴェルディスと共にいるせいで、たまに分からなくなりかける。


「大丈夫です、ヴェルディス。私が整えてあげますね。」


「お、流石ルーリィ!ルリアも見習えよなぁ!」


見習うものか。

誰かがヴェルディスを締めないと自堕落を突っ走るだけである。

ルーリィは締める側でなく、自堕落を突っ走るヴェルディスの後をせっせと片付けながらついて行き、ヴェルディスを諌める私の傍らでヴェルディスのフォローをする側である。

つまりは甘やかし役だ。

甘やかし役は二人も要らない、間違いなくヴェルディスには要らない。



しかし、こんなヴェルディスだが私の大切な人の一人である。

異性としては魅力は殆ど感じないが、人間性として、一人の幼馴染として私は私なりの彼への愛情がある。

普段は絶対に言わないが、言わなくともヴェルディスもそれはきっと理解している。



そしてルーリィも、私の大切な人の一人である。

私とルーリィ









言うのが怖かった。二人はそんなこと気にしないのかもしれない……けど、やはりどうしても怖かった。だから私は、決してそれを口にしなかったのだ。

違う答えが返ってくるのが怖くて……



「ルリア、私達デートで街に行くのですが、ルリアも行きますか?」


なるほど、だからせっせと早い時間にヴェルディスを起こしに行ったのか。


「……私が行ったらデートじゃなくなるでしょう。私はいいわ、二人で行ってらっしゃい。」


自分の中の嫌な部分を再認識した私は、いつもならデートという発言に突っかかってみるのにそんな気力はなくて、デートを促しているかのようにすら感じる発言をしてしまった。



「おい、ルリア…お前大丈夫かよ。珍しいな……」


と少し驚いた反応をされた、が……


「あ、わかった!とうとうルーリィと俺のこと認める気に…」


なったんだな、という言葉に被せて私は反論する。


「そんなわけないでしょ…何度でも言うわ。貴方は確かにいい人だけれどルーリィを任せるには足らないわ。自堕落だし…ルーリィにまで移ってしまうわ。」


そんなことはないと、ヴェルディスから抗議の声が上がったがそれを流して私は続ける。


「今、デートにならないでしょうと言ったのは単純に間違えを訂正しただけ。

私が行かないのは他にやりたいことがあるからってだけよ。それに私は……」


最近私の力がずっと暴走している……力とは鏡の神子の力だ。

自分が”我の鏡の神子”であるという神託を受けてからしばらくして得た力は、癒しの力と結界を張る力……そして周りの注目を集める力だ。

周りの注目を集める力が最近では制御出来ずにいる私は、この間この村からすら出られないくらい多くの人に取り囲まれた。

街なんてもっとであろう。


「あ……ご、ごめん。そうだよな…」


そのことを知っているヴェルディスは、はっとしたように謝る。

いつもはすごく鈍感なのに、今日は察しがいい……



「別にヴェルディスが謝ることではないでしょう?それより、私は行けないけれどルーリィはしっかり守ってね?」


「当たり前だろ」という言葉に半分安心しながら私は二人を見送った。

ヴェルディスがルーリィのことをしっかり守ってくれることなんて本当は分かっている。ヴェルディスならルーリィのことを任せていいのかもしれない…彼は充分に腕が立つ剣士だ。

だが、ヴェルディスは優しすぎる。

悪く言ってしまえば「甘い」とも言えるそれは、ルーリィを確実に守るには少し不安要素にもなる。

ヴェルディスの美点とも言える優しさを否定するつもりはないし、失ってほしいわけでもない。

ただ、守るには決断する覚悟と冷静さが必要な時がきっと来る…優しいだけでは守れないのだ。

そしてルーリィを守れないということは、ヴェルディス自身も色々な意味で傷つくことになる。

私にとって大切な二人が傷つくことは避けたい。だからこそ、未だにヴェルディスにルーリィを任せきれない。

本当は誰よりも二人の幸せを願っている自信があるのに…



少し憂鬱な気分で隣の家に行きヴェルディスの部屋を開けた。

瞬間、その部屋の酷く汚い様にさらに憂鬱になりつつ部屋を片付け始めた……一体どうやったら昨日綺麗にした筈の部屋がこうなるのか教えて欲しいとぼやきながら。



(ヴェルディスの)部屋を片付け、(ヴェルディスの)洗濯物を干した後、本でも読もうと自分の家に戻ることにした。

玄関のドアを開けた瞬間目に入ったのは、見慣れない甲冑だった。

見慣れないが、知ってはいる……それは戦場の天使(アンゼルス・ソーディアン)

の甲冑である。




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