データ9 追跡者
「耳がキーンとする」
悠斗は耳を押さえていた。
「何とか天井からは落ちたみたいね・・・」
「はい。銃、返すよ」
「あ、ちょうど弾切れだったのね」
恵は弾が切れた拳銃を懐にしまう。
「それで、あいつについては説明できるのか?」
「考えられることとしては突然ウィルスが何らかの原因で変異してあんなふうになったことしか考えられないわね・・・」
「これからあんな奴がうじゃうじゃ居るのかよ・・・」
「うじゃうじゃ居ないことを祈りましょ」
車は徳田大津料金所を過ぎるとジャンクションに差し掛かると、金沢方面へ車を進める。
車の中の時計は午後2時半をさしていた。
「あー、腹減った」
「こんなときにのん気ね」
「仕方ないだろ、家ではカップ麺食い損なったんだから」
「あー、はいはい。サービスエリアにでもよってあげる」
有料道路上に案内板で西山パーキングエリアまで3キロとあった。
「ほら、パーキングエリアよ」
「でも、あいつらが居るんだろ・・・」
「そうね・・・私のベレッタも弾が無いし・・・」
「あ、ベレッタって言うのか」
「ベレッタM9ね。結構愛着あるのよ」
話しているうちに車は西山パーキングエリアに到着する。
パーキングエリアには放置された車はたくさん停車していたが、ゾンビの姿は確認することはできなかった。
「おい、あれってパトカーじゃねぇか?」
悠斗が指差す先にはミニパトがパトランプを回転させながら止まっていた。
ミニパトには警察官の服を着たゾンビが一体ミニパトに攻撃していた。
「銃持ってそうね・・・」
恵が車から降りようとするがドアが開かない。
「歪んであかない・・・」
「フン!」
バガン
悠斗は扉を蹴飛ばして開ける。
その音に警察官のゾンビは気がつく。
悠斗は近くに立てかけてある雪かき用のスコップを握る。
「ごめんな。お前に恨みは無いんだ」
悠斗はゆっくり警察官のゾンビに近づくとスコップを振り上げて振り下ろす。
ぐしゃっ
警察官のゾンビはその場に倒れる。
すぐに悠斗は警察官の持ち物を調べると、警棒とS&W M37を見つけることができた。
「これどうやって弾を見るんだ?」
「貸して」
恵は手馴れた様子でシリンダーを出す。
「うーん、残り4発ね・・・」
「一発撃ったのかよ」
「はい」
恵が悠斗にM37を渡す。
「使い方なんてしらねぇよ」
「大丈夫、刑事ドラマみたいな構えして引き金を引けば良いから。間違っても片手でカッコつけないでよ」
「そんなレクチャーで大丈夫なのか?」
「まぁ、あんたは素人だし、緊急時だけ使って他はそのスコップで良いんじゃない」
「そうさせてもらうよ」
悠斗はジャンパーの内ポケットにM37をしまう。
悠斗と恵は直売所には入ると死体が3体転がっていた。
「誰か倒したのかしら・・・」
恵が悠斗を見ると直売所内のおにぎりをあけて食べていた。
「よく死体が転がっているところで食事なんてできるわね・・・」
恵はその場で溜息をつくが悠斗はお構いなしに2個目をほおばり始める。
「お前は食べないのか?」
悠斗はおにぎりを一個恵に投げると恵はそれをキャッチする。
「頂くわ」
恵がおにぎりを食べ終わる前に悠斗は3個目を食べ終えていた。
「ご馳走様」
悠斗がゴミをその場に捨てる。
「車はどうするんだ?あのボロボロな車を使うのか?」
「そんなわけ無いでしょ、パトカーでも使わせてもらうわ」
二人は直売所を出ると悠斗が運転席に乗り込む。
「あんたの運転信用できないのよね・・・」
そういいながらも恵は助手席に乗り込む。
ミニパトがゆっくりと発進すると本線へと合流していく。
その姿をトイレから眺める戦闘服に身を包む男性が一人居た。
「佐藤を発見した」
「おい、なに言ってんだ?」
男子トイレからもう一人戦闘服に身を包んだ男性が出てくる。
「だから、佐藤恵がいたんだよ!」
「マジで!?」
「追うぞ!」
戦闘服に身を包んだ男性二人は近くの黒のミニバンに乗り込むと悠斗の運転するミニパトを追いかけて本線に合流する。